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2018
04.26

立ち上がれ、鋼の巨人。『パシフィック・リム アップライジング』感想。

Category: 未分類
Pacific_Rim_Uprising
Pacific Rim: Uprising / 2018年 アメリカ / 監督:スティーヴン・S・デナイト

あらすじ
2歩で失神。



地球を襲う怪獣との戦いから10年。人類を救った英雄スタッカーとは別の道を歩んでいた息子ジェイクは、イェーガーの違法製造をしていた少女アマーラとの出会いをきっかけに義姉の森マコと再会、一度は辞めたイェーガーのパイロットに復帰することになる。そんななか新たに開発された遠隔操縦のイェーガーが突如制御不能となり……。SFアクション『パシフィック・リム』の続編。

二人の人間が乗り込んで操縦する巨大ロボット「イェーガー」と、巨大モンスター「怪獣(KAIJU)」との戦いを描いた『パシフィック・リム』の続編です。前作から10年が経ち復興の進む地球を舞台に、イドリス・エルバが演じたスタッカーの息子、ジェイク・ペントコストを中心に、新たな世代が再び訪れた脅威に立ち向かいます。前作の監督である『シェイプ・オブ・ウォーター』ギレルモ・デル・トロは製作にまわり、Marvelドラマ『デアデビル』のスティーブン・S・デナイトにバトンタッチ。前作は2013年ベストの1位に選んだほど好きなんですが、デル・トロの怪獣愛やロボット愛があってこそ成り立ったという印象も強いため観る前はかなり不安でした。

しかし、これは確かに『パシフィック・リム』でした。激突する巨大なイェーガー、思いがけない敵に打ちのめされる人類、それでも立ち上がる若き兵士たち。前作の重厚感はスピード感に、悲壮感は高揚感に、夜の戦いは昼のバトルに変わり、前作を引き継ぎながらも新しくしようという思いが強く感じられましたよ。10年の歳月による変化もしっかり考慮されているし、前作で倒したはずの怪獣との絡ませ方も頷けるもの。世間の評価は割れているようですが(まあそれもわかるんですが)、でも個人的には非常に面白かったですよ!確かに「Oh……」となる点はあるものの、トータルでは「Yes!」となるほうが多いと思うし。少なくともキモとなるイェーガー戦は最高です。

ジェイク役は『スター・ウォーズ フォースの覚醒』『デトロイト』のジョン・ボイエガ。世界を救った英雄の息子ということで父に対する反発もありつつ、それでも世界を救うためイェーガーに乗り込みます。ポイエガの軽快さとシリアス感のバランスはやはりイイですね。ジェイクの相棒ネイト役は『ワイルド・スピード:ICE BREAK』『スクランブル』のスコット・イーストウッド、ジェイクとの因縁やセクシー教官っぷりが良い感じ。シャオ産業社長リーウェン役は『キングコング 髑髏島の巨神』『グレートウォール』と大作出演が続くジン・ティエン、相変わらず美しい。前作から続投組としてはニュート役のチャーリー・デイ、ハーマン役のバーン・ゴーマン、そして森マコ役の菊地凛子らが出演、また『ちはやふる -結び-』の新田真剣佑が若手パイロットのひとりとして登場します。

細かいところで「そこはこうしてほしかった」というのは正直色々とあるんですが、でも「そこはそうきたか!」というのも多々あるんですよ。前作大好きの身としては旧世代の扱いに感情的になる部分もあるものの、次世代の描き方もそこまで悪くはないと思うし、衝撃の展開も作劇としては十分ありです。2回目観ると好き度が上がります。

↓以下、ネタバレ含む。








■個と個

前作で怪獣との戦いはケリがつき裂け目も閉じているので、物語としてはキレイに完結しています。そのため再び危機に見舞われるまでの序盤は、現在までの経緯や新キャラの紹介や出会いなどが続くので少々緊迫感に欠けるところはあります。またイェーガー・パイロットは丸ごと入れ替えな上にルーキーしか映さないので、一から描かなければいけないというのも若干ネックになっているところはあるでしょう。訓練生たちの背景やチームとしての関係性というのはもう少し深堀りしてほしかった気もします。真剣佑もあまり目立たなくて『ちはやふる -結び-』撮影に備えてかるたの練習してるシーンがあったようですが、見逃したようで悔しい!ただそういった集団のドラマは若干薄いものの、個人と個人の関係性の描写は決して悪くないと思うんですよ。

ペントコストに息子がいたというのは、ジョジョで言えばツェペリさんに家族がいたと似たような無理矢理感はあるんですが、父が偉大なだけに同じ道を歩むことを拒もうとし、それでいて持ち前のナイスガイっぷりを隠せないジェイクのキャラには親近感が湧きます。スコシオサエテのマコさんがすっかりお姉さんというのも感慨深く、ジェイクのやんちゃをマコが何とかしてきたんだろうなとか、それでもマコはジェイクのことが可愛いいんだろうなと思わせる、人種を超えた姉弟の関係が何ともイイ。それだけにマコの退場はショッキング。これはマコが渋っていた遠隔操作イェーガーを配備させるためのニュートの策略であり、展開的には致し方ないところではあるんですが……ジプシーの指がヘリコを掠めながら届かないシーンはせつないです。

ジェイクとネイトは互いに心の奥では認めているのに、過去にジェイクが軍を抜けた経緯のせいか素直に話せないとか、やたら甘党のジェイクにネイトが呆れたりとか、二人してジュールスが去る姿を目で追っちゃったりとかして、憎めないコンビになっています。またジェイクが防衛軍に戻るきっかけともなるアマーラは、かつてのマコのように家族を怪獣に殺されたという立ち位置、パイロットとメカニックの両方の資質、気の強さとまだ残る幼さの同居、と動かしやすい人物です。その年齢や自立心、操るスクラッパーのサイズやボール型への変形などもあってどうも『トランスフォーマー 最後の騎士王』と被るのが難点ではあるんですが、とは言え終盤にジェイクとの師弟コンビでドリフトするとか、スクラッパーもあのサイズに意味があったりとかするので、結果的には悪くなかったなあと思うんですよ。

訓練生たちのパートは戦争ものでおなじみ新兵の衝突シーンとか訓練シーンなどがちゃんとあって、各人の性格や特徴なども(全員ではないけど)見せています。ただアマーラとヴィクの関係はもっと上手くできたんじゃないですかね。アマーラが去るときのヴィクの台詞「今度はもっと大きいイェーガーを作りな」はいまいち気が効いてないし(全般的に台詞はいまひとつ)、ドリフトしないのはともかくアマーラがイェーガーから脱出して再会したときに抱き合うのはジナイでなくヴィクであってほしかったなあと思うのです。ここはちょっと変えるだけでかなり違ったろうに、もったいない。


■造反と蜂起

ハーマンとニュートは前作での名コンビぶりを思うと非常にやるせないです。ニュートを悪役にするというのはデル・トロの当初の続編構想からあったようですが、シャオ産業に乗り込んだハーマンがニュートと二人エレベーターアクションを見せ、ハグまでしちゃうのを見た直後だけに余計ショック。ただプリサーカーが再び地球を狙う糸口として怪獣に魅せられ怪獣とドリフトしたニュートを操るというのはなるほどと思うし、せっかく団結して怪獣を倒した人類が今度は人類同士で争うとかいう話だとイヤだなあと思ってたので、続編の展開としてはありでしょう。ハーマンがニュート裏切りを憂うシーンは欲しかったところですが……とは言え、ハーマンが防衛軍の司令官的な役割を担うことになり、「理論的とは?」というジェイクに対し「今日、飛べるということだ」という熱い返しをするのには燃えます。あの周囲に相手にされなかったハーマン・ゴッドリーブが何という頼もしさ!

リーウェン・シャオはシドニー襲撃をビジネスチャンスと見なしたり、ニュートに対しては英語を喋らないことで自分が上の立場だと示したりと冷徹なので、ひょっとしたら黒幕なのではというミスリードの役割もありつつ、最後はなぜか自らスクラッパーで救援に行くというまさかの「戦う社長」で超美味しい役でした。あと特筆すべきはチュアン司令官役として『ドラゴン×マッハ!』『イップ・マン 継承』のマックス・チャンが出ていることです。なぜマックス・チャンにアクションさせないんだ、なんという無駄使い!とも思うんですが、でも鋭い眼差しとオーラを感じる佇まいがカッコいいので許します。


■イェーガーと怪獣

イェーガーのデザインは前作のようなバラエティには欠けていてちょっと響きにくいというのはありますが、みんなシュッとした感じになっているのは10年経って洗練されたからと見るべきだろうし、国ごとの特色がないのも均一化されたからということなのでしょう。各国が国を上げて製作した前作とは異なり、シャオ産業のような民間企業が量産していることからも、より工業製品的な扱いになってるんでしょうね。ずいぶん簡単にドリフトできるようになったのも技術の進歩なんでしょうか。ちょっとロマンが不足しているのは否めないですが、代わりに戦闘シーンは増量しています。前作ではストライカー・エウレカの最初のバトル以外はほぼ夜間の戦いでしたが、その反動のように今作では昼間の戦いが多いです。これは前作との差別化として上手くいってると言えるでしょう。

巨大感を煽るショットやスローモーション、引きと寄りの使い分けも随所に入れ込まれて迫力を増し、ビル街をもうこれでもかとブチ壊す派手な立ち回りや水中も使った氷上の戦いなどバトルフィールドも多彩。かちあげ食らってビルの壁面を削りながら浮かされるとか、ムチでブン回されるところなど工夫を凝らした見せ場は実にアガります。あとイェーガーvsイェーガーが見られたり、怪獣脳に乗っ取られて機械生物のようになるイェーガーに至ってはどう見ても『エヴァンゲリオン』で楽しいです。重力スリングやウィップ、細身の剣やトゲ付き鉄球など武器の種類が増えてるのもイイ。ただし、武器を繰り出すときのケレン味が圧倒的に少ないのは不満。ここぞというときのチェーンソードやプラズマキャノンを武器名叫んで繰り出す、というのが激熱だったんですけどね。シャープにしすぎて泥臭い熱さに欠けてる気がして、これは良くも悪くも前作との違いではあるでしょう。まあでも機銃が背面に回るとか、上半身を反転させて起き上がるとかのギミックもあるし、イェーガーの指先が少し触れて車のアラームが鳴り出すのは前作の振り子(衝突球)を思い出すし、何と言っても目玉は「飛ぶ」ですからね、あの『ロボコップ3』を彷彿とさせるとんでも展開はナイスすぎてちょっと笑いました。

怪獣のデザインは前作を踏襲した感じはあるものの、各個体に突出した特徴が少ないのが少々物足りないです。まさかの合体という荒技は見せるものの、どこがどうくっついてああなるのかがよくわからないのも少しモヤモヤします。とにかくデカい!というのはいいんですがカテゴリーはいくつなんだろう?前作でカテゴリーを示すことでその絶望感を煽っていたのはよくできてたなあと思います。むしろ怪獣より謎のイェーガー、オブシディアン・フューリーの方が燃えましたね。海から登場するシーンなどは出現の仕方や背ビレっぽさなどか『ゴジラ』のようで、怪獣じゃないのが不自然に思えたくらい(正体はそれに近かったわけですが)。デカさではなく強さでジプシー・アベンジャーを圧倒する、というのも良かったです。


■継いだものと生んだもの

他に不満点や疑問点を挙げるなら、

・マコの送信したデータは結局オブシディアン・フューリーの潜伏場所ということ?怪獣の顔みたいにした意味はあったんだろうか……。
・ジェイクがマコの遺影に写真を捧げるとき隣の父の方にも視線をやってほしかった。ほんの一瞬でもそれがあればかなり違うと思うんですけどね。
・ドリフト練習で使う脳みそのサラって誰?
・ラストステージが東京なのは最高だけど中国語の看板があるのが不自然。
・ジェイクとアマーラがドリフトしたとき、拳を手で受けるポーズをしながらコケる、というのは拍子抜け。そこはバシッと決めて序盤から関わってきた二人の息が合っているところを見せてほしかった。
・操縦席の外郭が割れた状態で大気圏突入って無茶すぎ。スーツの気密性や耐火性はそこまで高いんだろうか?
・二人が雪合戦してタイトル、というのはさすがにちょっと……どうせなら「俺たちから行く」でタイトルを出してほしかった。
・前作のテーマ曲をそのまま使わないのは超不満。


逆に良かった点も挙げます。

・冒頭のユニバーサルとレジェンダリーのロゴがスケルトンでメカメカしいのが熱い。
・前作のような少ない機体で難関に挑むというのはないかと思いきや、量産イェーガーに壊されまくってラストは4機になるという追い詰められ方(ちょっと無理矢理だけど)。
・ジェイクが序盤に「いろんなやつから盗んだ」と言われるなかでチャウの名前が!
・ネイトがジェイクに聞かれる前にアイスの場所を教えるところに、こいつら本当は仲良しだな?と思う。
・ジェイクの演説は父親ほど上手くはないものの、イェーガー・パイロットを鼓舞するために特化しており「世界を救うぞ」でアゲてくれる。そしてそれを見守るネイト。
・その演説のなかでローリーの名が!
・アマーラが脱出したところにガンダムの像が!
・最終舞台が富士山!しかも怪獣や裂け目の影響なんでしょうか、むっちゃ活火山!
・防衛軍は家族である、という観点の拡げ方。


前作との比較になってしまうのは続編の宿命ですが、細かい点までこだわりが強かったデル・トロの前作を考えると、何を変えて何を新しくするか、制約は大きかったろうなと思います。それでも色々な要素を詰め込もうとしてるし、そのために若干薄くなった部分はあるものの、十分意思は継いでると思うんですよ。マコの退場、ニュートの裏切り、防衛軍壊滅、プリサーカーの狙いと大きな山場はしっかりあるし、キャラクターの配置も前作を意識したものがあります。ただそこで継いだ意思とは「『パシフィック・リム』であることのこだわり」とも言えるものであり、それは前作で提示された「自分の好きなものを自分の映像で作るこだわり」とはちょっと違うんですよね。

じゃあダメなのかと言えばそんなことはなく、スピーディーでライトな作りはそれはそれで楽しいし、チームが国や人種を越えたファミリーとして強大な敵に立ち向かうという描き方は、神話性をもつ前作とはまた違って現実に寄り添う感じがあって良いと思うのです。Uprising(反乱、暴動)するのはプリサーカーの方だったわけですが、それに対してUprising(立ち上がる)する若手たちを中心に据えたことで「未来へ繋ぐための戦い」というイメージがさらに増したし、なにより巨大ロボットが巨大怪獣と戦うというのは好きな人にはそれだけで良いものなわけですよ。そしてラストで匂わせるさらなる続編への期待。「観たいか?」と聞かれれば「観たい!」と即答する準備はできてるんでね、待ってます。

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