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2018
04.19

線路は続くよ陰謀乗せて。『トレイン・ミッション』感想。

The_Commuter
The Commuter / 2018年 アメリカ、イギリス / 監督:ジャウム・コレット=セラ

あらすじ
通勤電車も楽じゃない。



突然会社から解雇を言い渡された保険セールスマンのマイケル(60)は失意のままいつもの通勤電車で帰路についたが、そこで見知らぬ女性から、電車が終点に着くまでに乗客のなかからある人物を見つけ出せば報酬を払うと言われる。半信半疑のマイケルだったが、やがてこの依頼を受けざるを得なくなり、どんどん危機的状況に追い込まれていく……。リーアム・ニーソン主演の閉鎖空間サスペンス。

『アンノウン』『フライト・ゲーム』『ラン・オールナイト』と多くの作品で組んできたジャウム・コレット=セラ監督とリーアム・ニーソンが、またまた魅せてくれるサスペンスです。保険セールスのマイケル・マコーリーは10年勤めた会社を突如解雇され、妻にも言い出せないまま乗った帰りの電車で、見知らぬ女性から奇妙な依頼を受けることに。しかしそこにはある陰謀が絡んでいた、というお話。『フライト・ゲーム』では飛行機でしたが、今度は走る電車を舞台にリアルタイムで事態が進行していきます。理不尽な要求、限定された空間、特定できないターゲットと、強制的にやらざるを得なくなる無理ゲーな電車任務の数々を、リーアム・ニーソンが知力と腕力で当たり散らかしていきます。これだけ聞くと新鮮味に欠けるかと思いきや、これが十二分に面白い。謎の人物「プリン」とは何者か、なぜマイケルが選ばれたのか、どんな謎が隠されているのかというミステリーに、リーアムらしいアクションも交えながらぐいぐい引っ張っていきます。

『沈黙 サイレンス』では痩せ細った姿、『怪物はささやく』では渋い声の演技も見せたマイケル役のリーアム・ニーソン、久しぶりに戦うオヤジの健在ぶりを披露。今作では意外と無双じゃない、というのがなかなかスリリングです。マイケルの友人マーフィー役は『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』パトリック・ウィルソン、謎の女性ジョアンナ役は『ミッション:8ミニッツ』ヴェラ・ファーミガ。この二人、一緒に映るシーンはないけど『死霊館』『死霊館 エンフィールド事件』のウォーレン夫妻じゃないですか!良い存在感を見せてくれます。ほか『ジュラシック・パーク』サム・ニールなども出演。

電車という閉鎖空間を駆使する作品と言えば『アンストッパブル』とか、近年でも『新感染 ファイナル・エクスプレス』『オリエント急行殺人事件』など数多くありますが、驚きのワンカット風長回しとか、電車のなかだけでなく外側も使ったアクションのスリルとか、目新しくはない電車空間でも工夫次第でフレッシュな見せ方ができるというのを示してくれて実に面白い。後から考えれば根本の設定に無茶なところもありますが、それを気にせず見せるのがやはり秀逸です。

↓以下、ネタバレ含む。








全く関係ないことに巻き込まれてしまい、見えないところで家族は危険に晒され、味方がいないどころか誰を信用すればいいのかもわからない、この精神的な追い込まれ方がサスペンスフル。そして走る電車なので逃げ場もない、終点までにターゲットを探さなきゃいけないので降りることもできないという物理的な制約、さらにタイムリミットがどんどん近付いてくるという時間的な制約という複合的な舞台設定によりスリルが増幅します。セラ監督は『ロスト・バケーション』ではほぼワンシチュエーションでのサスペンスをやりきって見せましたが、本作はこの複数の制約の畳み掛けにより没入度を高めてくるのが上手い。

そしてそれを見せるための演出の豊かさです。冒頭のシークエンスでは、主人公マイケルの同じような朝の光景を少しずつ変えて繰り返すことで月日の積み重ねを表し、金が必要だということや同じ電車を使う顔見知りがいるということもさりげなく示していて実に面白い。マイケルが普通に歩くなか周囲が高速で動いているのも日々の変わらぬ風景を思わせます。電車に乗ってからは、不意に目の前に座る女性ジョアンナがもたらすどこかその場にそぐわない感じと、いつもの日常からどんどんズレていく会話、そして発見した金を懐に入れてしまったとわかる送風のショットで、マイケルが非日常に踏み込んでしまったことを認識させます。特急などの長距離電車ではなくあくまで日常で通勤に使う電車のなかで起こるというのが、その非日常性をさらに際立たせます。原題が「通勤者」だというのも納得。

アクションもサスペンスの一環としてあるのが良いですね。隠れようと車両の床を開けたら男の死体があったり、その床下から地面へ落下して線路の外に出ての再乗車にヒヤヒヤしたり、乗り込もうとしてカバンが引っ掛かったときの焦りとカバンが開いて札が飛んでいく無情さなどは徒労感が半端ないです。ついに見つけたと思ったギター男とのバトルではカメラの動きに驚くワンカット風長回しを使い、狭い車両ならではの位置取りやアングルの工夫で魅せてくれます。あと電車ならではのスリルとして『スピード』のような「脱線」シーンを入れ込んでパニック・ムービーのテイストまで含み、脱線した車両に立て込もっての温度探知画像による狙撃といったコンバットものまで網羅。もちろん、仕事を失って沈み理不尽さに苦悩しそれでも元警官の格闘スキルを活かして戦うリーアム・ニーソンのハマりかたは言うことなし。ファイティング・ポーズがカッコいいんですが、あまり見たことないような気がするので新鮮です。

あと電車内では結構な人数が登場しますが、それぞれ特徴をちゃんとクローズアップするので「これはあの人」みたいな認識がしやすいです。と同時に皆が揃いも揃って怪しく見えてくるように撮ってるんですね。FBI捜査官だったり、性格悪い株屋だったり、怪しげな看護師だったり、顔なじみとトランプをするなかに見知らぬ顔が混じっていたり、そのために顔なじみさえも疑わしくなったり。東京では考えられないけどアメリカの電車では顔見知りの乗客とは会話したりするんですかね。しかしそもそも顔見知りだからと言ってその人のことを知ってるわけではない、と気付くところにちょっとヒヤリとしたりもします。サム・ニールが黒幕じゃないかというミスリードもそれなりに作用。難を言えば、電車内を執拗に行ったり来たりするのでどこの車両に誰がいるというのが把握しづらいというのはありますが、その点はさほど重要ではないのでまあいいでしょう(最後は皆同じ車両に集まるし)。

黒幕はなぜこんなめんどくさいことをするのかというのはありますが、事件の真相を目撃した「プリン」がFBI捜査官に会いに行こうとしているのを知ってちょうどその通勤電車に乗るマイケルに白羽の矢を立てたということなんですかね。ちょっと無理があるんですが、その捜査力を見込んで、というのが元警官という設定をより活かしているとも言えます。そして巻き込まれた人々が真相を知って皆が「自分がプリンだ」と庇おうとする展開が熱い(若い車掌だけは否定するのが笑いますが)。しかもラストには元警官という設定をさらに活かして、解雇の問題までも解決しながらの笑顔のチェックメイトですよ。いやあ満足。

こうして見るとホント構造的には『フライト・ゲーム』とほとんど同じと言ってもいいくらいなんですが、そこに二番煎じを感じることなくリーアム・ニーソン映画としてしっかり面白いんだから恐れ入ります。もはやシリーズものと言ってもいいほど。飛行機、電車ときたので次は船とか宇宙船とかでもいけますね。

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