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2018
04.12

歴史の闇に踊る権力。『THE KING ザ・キング』感想。

the_king
The King / 2017年 韓国 / 監督:ハン・ジェリム

あらすじ
王になれ。



ケンカ好きの青年パク・テスは猛勉強の末に憧れの検事となり、地方都市での多忙な毎日を送っていたが、ある事件をきっかけにソウル中央地検のエリート部長ガンシクの元で働くことになる。他人を蹴落として出世し富と名声を手にしたガンシクの絶大なる権力に当てられたテスは、次第に悪の魅力に染まっていくが……。韓国クライム・エンタテインメント。

1980年から2010年の韓国を舞台に描かれる、権力と金と欲にまみれた男たちの物語です。権力に憧れながら自分を騙しきれない若き検事テスと、絶大な権力で思うがままのエリート検事部長ハン・ガンシク。二人の邂逅や裏切り、融和や対立が、歴代の大統領選という韓国の現代史を絡ませながら語られます。テスが検事に憧れたのは元々は悪を制する権力を持っていたからなのに、悪のために権力を使う検事たちに取り込まれて、いつの間にか成り上がってしまうんですね。どんどん展開していくスピード感に引っ張られ、あっという間に引き返せなくなる権力というものの引力をまざまざと見せつけ、まさに世界の中心にいるという高揚感さえも感じさせます。いや面白い。

新人検事テス役を演じるチョ・インソン、やんちゃな若い頃から調子ノリノリの検事姿、その先の落ち着きっぷりまで様々な顔を見せてくれます。そしてハン・ガンシク検事部長は『神の一手』『アシュラ』のチョン・ウソン。そもそも予告で見せるチョン・ウソンのキレキレダンスに惹かれて観たんですが、本編ではさらにキレキレでした。あとキレまくってました。ヘタうった部下に飛び蹴りかますというスゴい上司です。見事な腰巾着野郎のヤン・ドンチョル役ペ・ソンウ、テスの親友であり懐刀という設定が燃えるチェ・ドゥイル役のリュ・ジュンヨルも良いです。

出てくるのが大体クズばかりなんだけど、「1%の成功者」に引かれながらもどこかクズになりきれないテスと共に韓国の暗部へと進んでいくことになります。渾然一体となった正義と悪、希望と絶望、裏切りと友情。謀略や駆け引きも凄まじい、ゴージャスでえげつなくて闇に満ちた極上娯楽作。

↓以下、ネタバレ含む。








高校時代をリズミカルに描く序盤で、それまでケンカに明け暮れていたテスは腕力ではない本当の力を目の当たりにし、それが検事を目指す動機となります。最初は弱者を貶める悪党をこらしめる力という認識だったのが、ドンチョルに誘われてより強大な権力を求める道に入るわけです。信念は青臭い理想と一蹴され、強姦された女生徒の無念を晴らすことなく上の言いなりになってしまうんですね。クズ野郎の教師にはドゥイルが制裁を下すものの、より強い力を手に入れるためには保身と出世に邁進しなければならないというジレンマがテスを悩ませます。中央に移ってからはそんな義侠心も消え失せてしまうのがちょっと引っ掛かるところではありますが、そこからのコンゲームがより大きな話へとどんどん展開していくので引き込まれます。

特にハン部長検事との初対面はインパクト大。高級バーに悠々とやってくるその威圧感と余裕、そして場を支配する一喝。この絶対敵わないと思わせるところに、テスは自分がどうあるべきか悟るんですね。つまり目的のためにプライドを捨てるわけです。そしてより権力を強化させるための駆け引きの世界へと進んでいきます。ハン部長が「歴史の流れを見ろ、権力に寄り添え」というのは、より権力を持つ者、権力を持ちそうな者を見極めることであり、その者を立てて自分がより力を持てるように「あらゆる情報は熟成させて必要なときに使う」わけです。女優のスキャンダルで世間の目をそらしたり、大統領選で都合のいい候補者を勝たせるために使われる。本作は実話を元にしてるわけではないですが、金大中や盧武鉉など実在した大統領の名をそのまま出すことで妙なリアリティを与え、韓国の闇を描き出していくんですね。権力を握ったら元権力者に報復するとか、マフィアも真っ青ですよ(実際マフィアも絡んできますが)。そういう点では非常に尖った攻めの作品でもあります。

そんななかでもテスが人間味を損なわないでいられるのは、一つは妻との関係があります。浮気がバレて(浮気シーンは明確にあったかな?という気もしますが)別居状態になるも、ハン部長に陥れられた末に本心から復縁を望むところで、再び過去の情熱を思い出すことに繋がります。そしてもう一つは、同郷でもあるドゥイルとの「お前は表で、俺は裏」という表裏一体のあり方。互いに利用しあう関係ではあるものの、ドゥイルはこの世界で孤独となったテスの数少ない友人であり、テスに「王を目指せ」と指針を示した人物でもあります。暴走した結果疎まれて上からは切り捨てられるものの、泣きながらもう終わりだと言うテスを信じ、テスを守るため自ら死地へと向かっていく男気には泣けます。冒頭の大クラッシュシーンが実は後半の折り返し地点でもあるというのが、テスにとって重要な転換点でもあるということですね。赤い光のなか犬に食われる最期は壮絶。

そこまできてようやくテスはハン部長への反旗を翻す決意をするわけです。検事という汚職まみれの立場から引き、全てをさらけ出して政治家としての道を進もうとするテス。ハン部長との対立がメインなのかなーと思ってたので正直ここまでちょっと長い気もするんですが、権力者に立ち向かうという話ではなく権力とは何かという話であると考えると、必要なプロセスだったなあとも思えるんですよ。かくしてテスが引いた引き金は銃弾となって腐敗した者たちを撃ち抜いていき、権力の象徴のようなシャンパンタワーを崩していきます。それはまた別のやり方で「王になる」=頂点を目指すという新たなコンゲームの始まりかもしれませんが、かつて弱き者を守ろうとした己の情熱と、かつてレイプ野郎を再起不能にしたドゥイルのような無鉄砲さ、そして二人が持っていたプライドを再び取り戻したとも言えるのです。

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