FC2ブログ
2018
02.27

守るべきを知った黒犬。『修羅 黒衣の反逆』感想。

syura_kokui_no_hangyaku
繍春刀 修羅戦場 Brotherhood of Blades II: The Infernal Battlefield / 2017年 中国 / 監督:ルー・ヤン

あらすじ
北斎だけど葛飾じゃないです。



明朝末期の中国、秘密警察の錦衣衛である沈煉は、政治批判をしたという絵師の北斎を暗殺する任務を命じられる。しかし北斎の元に行った沈煉は誤って錦衣衛の仲間を殺してしまい、北斎と逃亡することに。さらには皇帝の側近で権力を握る魏中賢とその反対勢力との戦いに巻き込まれていく……。『ブレイド・マスター』のシリーズ第2弾となる、チャン・チェン主演の武侠アクション。

中国は明朝を舞台にした武侠もの、かつ権力争いを絡めたサスペンス。前作は観てないんですが、本作はその前日譚らしいので錦衣衛=秘密警察というところだけ押さえておけば特に問題なく観れます(邦題が全然違うのはどうかとは思いますが……)。皇帝の犬とも呼ばれる錦衣衛、その隊長である沈煉は自分の好きな絵師、北斎の抹殺指令が出たことを知ります。しかし北斎は病気の皇帝の代わりに国を支配しようとする側近の魏中賢に反抗する勢力と繋がっており、沈煉は苦渋の選択をすることに。錦衣衛は人々から恐れられる存在であり、沈煉自身も手柄を立てようとしたり不敬の言葉を吐いた部下をやむを得ず追い詰めたりと、そこまで清廉潔白という感じでもないため、最初は話がどこに向かっているのかわからないんですね。しかし徐々にストーリーが輪郭を帯びてくると、謀略と正義との間で揺れる沈煉の意思、そして沈煉と行動を共にするある女性への信頼と仄かな情愛が浮かび上がってきます。

剣戟メインのアクションは斜め走りも駆使したスピーディーさで、鎖鉄球付き剣とかトゲ付き鉄棒とか槍になる棍棒など色んな武器が出てくるのが面白いです。沈煉役は『レッド・クリフ』『グランド・マスター』のチャン・チェン。『Mr.LONG ミスター・ロン』に続き寡黙な役ですが、アクションはかなり多いし、やはりカッコいいので絵になります。沈煉と関わる謎の女役ヤン・ミーが可憐で良いんですが、女剣士の丁白纓を演じるシン・ジーレイもクールで魅力的。あとレイ・ジャーイン演じる裴綸の人懐っこい笑顔と無言の圧がイイ。

政治批判の取締りが思わぬ殺人事件へと変わり、やがて権力者への反乱と裏で蠢く陰謀へと展開していきます。そんななかで戦うアクションの醍醐味にアガるし、川井憲次の音楽によるドラマティックな盛り上げも効いてます。錦衣衛の威圧感ある衣装や凝った美術も良いですね。思いがけないバディ感に熱くなり、プラトニックな男女の関係にせつなくなる。面白いです。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭の霧から飛び出す沈煉が敵兵を倒していく様がカッコいいんですが、ここで沈煉が救う陸文昭が後々まで関わってきます。「生き方を変えるしかない」という言葉通り、陸文昭は上層部の顔色を伺いながらも出世し、あまつさえ権力者の魏中賢に取り入ろうとします。実はこれがミスリードで、実際は魏中賢を失脚させようという目的があり、冒頭に救われたもう一人もまたその目論見に関わって殺されるんですね。さらにそのバックにいる人物、最初は誰?と思いますが、すぐにそれが信王であると素性が明らかになり、謀略ものとしての人物配置がなかなか練られていることに唸ります。しかも陸文昭や丁師匠、北斎までが慕うこの信王が、義をもって国を統治しようという人物かと思いきや協力者を次々切り捨て、さらには沈煉たちを悪者にして魏中賢に取り入ろうとし、挙句あっさり魏中賢をも排除するとんだ食わせ者。これが権力争いに巻き込まれた人々のやるせなさへと展開し、終盤の大軍に囲まれながら奮闘する者たちの悲哀のドラマへと繋がるのも上手いです。

錦衣衛である沈煉はレジスタンスのことは知らず、立ち位置としては最初は少し微妙です。同じ百戸という役職で彼をライバル視する凌雲鎧には「手柄を横取りする気か」と凄んだりしますが、それも部下に言われたからという感じもあり、皇帝の暗殺をうそぶく自身の部下を追い詰めて目の前で自死されるのも、寺で供養してもらうことからも本意ではなかったことが伺えます。自分自身にもどかしさを感じているように思えるんですね。そんな沈煉がファンである北斎の暗殺指令を聞き、北斎が女性であると知って驚き、彼女を襲おうとする凌雲鎧を殺してしまう、ここで一気に物語が動きます。正義の人とは言いがたく見えた沈煉が、立場を追われることで立場に縛られた不自由さから抜け出し、徐々に北斎たちと心を通わせていくのです。(結局最後は錦衣衛に戻りますが、後日譚となる前作が錦衣衛だからしょうがないか……)

沈煉以外の人物も良いですよ。特に丁師匠は居合の鋭さや太刀折りの見事さなどの剣技に加え、美貌と目力がスゴい。また沈煉を犯人と睨む南奉行所の裴綸がとてもイイ。屈託のない笑顔と坊主を脅す迫力、死んだ沈煉の部下を友人だったと知ることで深まる沈煉との信頼。何より裴綸だけは揺るがず正義の人なので頼もしいんですよ。終盤の橋を背にして沈煉と裴綸の二人が敵に向かっていくシーンには超シビれます。この二人のバディ感はもっと描いてほしかったなあ。あとチョイ役の役人かと思ったら鎖鉄球振り回す強敵だったり、丁師匠の仲間のパワーファイターが鬼の金棒みたいなのでガンガン攻めたりするのもイイ。

そして北斎、信王ラブだった彼女が徐々に沈煉に惹かれていき、沈煉も北斎の想い人を知って手を出さないものの彼女を守ろうとし、それが「寝たわけでもないのに」互いを助けようとする沈煉と北斎のもどかしい関係となっててキュン度高いです。北斎が最後に本名を名乗るのは、信王が沈煉に「本当の名を知らぬのか」と言うことへのカウンターなんですね。そんな彼女を逃がすため必死で橋を落とそうとする沈煉に泣けます。

迫力の馬チェイスや、苦楽を共にしたのであろう陸文昭との対決などアクションの見せ場も随所に仕込まれ、特にクライマックスの勝ち目のない壮絶な死闘などは見応え十分で、せつなさと熱さが入り交じります。裴綸と丁師匠が最後にどうなったのかは描かれませんが恐らく沈煉だけが生き残り、逃げ延びた北斎とはもう会うことはないのでしょうね。ほろ苦い結末の余韻にじんわりします。そしてエンドロール後の映像で続編があるらしいことが判明。二刀流の誰それというのは前作の登場人物なんですかね。前作を予習して続編に臨みたいところです。

スポンサーサイト



トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1353-528f03bb
トラックバック
back-to-top