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2018
02.06

負け犬たちの負けない咆哮。『操作された都市』感想。

Fabricated_City
Fabricated City / 2017年 韓国 / 監督:パク・クァンヒョン

あらすじ
隊長ーー!(また死亡)


オンラインゲームではリーダー役として活躍するクォンは現実世界では冴えないフリーター。しかしある日、覚えのない殺人事件の犯人に仕立て上げられ投獄されてしまう。冤罪を訴えるも聞き届けられないクォンだったが、そんな彼の元にゲーム内でチームを組んでいた4人のゲーマーが集結、事件の黒幕を突き止めるため行動を開始する……。という韓国サスペンス・アクション。

婦女暴行殺人の濡れ衣を着せられた青年クォンが、自分を「隊長」と慕うオンラインゲームの仲間たちの協力を得て、僅かな手掛かりを元に真相を追求するサスペンスです。あっという間に国中が知る殺人犯にされてしまうという理不尽な序盤から刑務所内でのエグい迫害まで、前半は結構えげつないリアルさ。しかし中盤からは追いつ追われつの攻防が始まり、似たようなはみ出し者であるゲーム仲間たちと共に戦うという熱い展開に。なぜ自分が犯人にされたのか、どうやって完璧な証拠を揃えたのかという謎を追い、そこに怒濤のカーチェイスが繰り広げられたり、常軌を逸した黒幕キャラなどが絡んでいくのが見応えあり。娯楽作としての面白さが色々と詰まっています。

クォン役はドラマなどで活躍し、これが映画初主演となるチ・チャンウク。テコンドーの元選抜選手であるとか、なぜかドラテクがスゴいとか、結構盛りすぎな感がある主人公ですが、全然無双ではないのがちょうどいい塩梅。ヨウル役は『サニー 永遠の仲間たち』のシム・ウンギョンで、その凄まじい情報処理&危機対応能力はほとんど『ミッション・インポッシブル』のイーサン・ハントですが、独特なキャラ設定が面白いです。ちなみに『新感染 ファイナル・エクスプレス』の感染者の女でもあるんですね。

多少の雑さはあるものの、あえて大げさにすることで劇的になってたりもするのでそこまでは気にならないです。ときに悲壮、ときにコミカル、ときに痛快と様々な感情を呼び起こされる物語も良いし、ちょっとした出番がいい味出してる登場人物まで楽しいです。もうね、ヒゲ面兄貴がいいんですよ!萌えるんですよ!さあ、ゲームオーバーから始まる悪辣なゲームに立ち向かえ!

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭の市街戦シーンがいきなり迫力。これがFPS系のオンラインゲームというのがほどなくわかるんですが、サイバー感がなく本当の戦闘のように描くことで、チームが互いを信頼していたり、隊長ことクォンが自分の命を犠牲にしてまで仲間を助けようとする人物であったり、それをメンバーもよくわかっていたりと、後の展開に繋がる要素が色々と入ってるんですね。作戦を立てての実戦をやっているから指揮系統がしっかりあるし、それぞれの役割にそってすぐに動くこともできるわけです。仲間たちがゲームでの繋がりだけで命懸けでクォンを助けようとするというのも、ここをリアルな戦闘としたことでさもありなんとなるのが上手い。あと建物のスキャンや爆弾やカメラの操作など、ゲーム場面と後半の実際の作戦とをオーバーラップさせることで、ゲーム内でのスリルを追体験させてもくれます。アクションは手ブレが多くて見にくいところも多いですが、カーチェイスはシャッターをギリで通り抜けたり狭い通路で立ち往生させたり大量のパトカーに追われたりと、色々工夫が成されていて見どころ満載。光る粒を光源にして暗闇のなか戦う、というのも変わってて面白かったです。

序盤の刑務所シーンは理不尽さを強調するためかちょっと長いし、カマまで掘られちゃうえげつなさが韓国映画らしいところですが、そこで徹底的に痛め付けられた上での母の言葉により生き抜く強さを得て、その母の死により復讐への助走が始まります(母親が「無実です」と掲げて雨のなか立っている姿は痛々しい)。テコンドー強いならもっと早く反撃すればいいのに、とも思いますが、凶悪犯グループに睨まれた状況ではさすがに無理なわけで、それだけに耐えに耐えた後での紙の弓矢による攻撃には高揚感があります。そして母親が亡きあとクォンにその時々で現れる味方が絶妙。自分が殺人者だからこそ「お前は殺人者じゃない」と言う連続殺人鬼はイイですね。傷に塗る葉っぱくれたり(食うけど)、自分への傷のつけ方を教えてくれたり。また車を直してくれたというだけで逃亡を助けてくれる黒人夫婦にはじんわりします。最後に車をキレイにしてお返しするのがニクい。

何より隊長を信じて疑わない仲間たちが良いんですよ。特殊効果ADに無職の電気技工士、自称大学教授と、世間のはみ出し者だったりうだつの上がらない者だったりと一癖あるヤツらが、隊長が犯人なわけがないと全く疑う素振りさえ見せないのが泣けます。メシ食って泣いちゃうのもわかりますね。何よりヒゲ面兄貴ことヨウルの、引きこもり女子でスゴ腕ハッカー、喋る時は常に電話なコミュ障で、でもホットパンツ姿が眩しく、あれだけの仕事人っぷりを見せながらゲームは下手という、クォンに負けない盛り方がたまりませんよ。クォンと車の運転を変わるときの入れ違いシーンなんてドキドキもんです。なぜクォンが隊長だとわかったのかは疑問ですが、わかってもおかしくないな、と思わせるキャラ造形が見事です。

そんな「チーム復活戦」が相手にするのは、これまたうだつの上がらない風貌でありながらとんでもない悪党だった弁護士。社長や検事や刑事といった顧客を持ち、社会的立場も金もありながら、犯罪揉み消し代役立て屋として人の人生をブチ壊しても何とも思わない、どころか退屈だとさえ言うこの男の、徹底してドス黒いキャラが秀逸。怒って給湯室を破壊したり、痛め付けられても狂人のように笑っているサイコな感じが憎たらしくてイイですねえ。床一面のタッチパネルで町中を監視してたり(しかも足で操作)、事務所地下にビッグデータ保存の巨大なマシンルームがあったりとどこのCIAだという感じですが、その荒唐無稽さもまた強大な敵としての手強さを感じさせます(タイトルの由来でもありますね)。現場を片付けたりキレイに作りあげたりするのが『ジョン・ウィック』の掃除屋っぽいのも面白い。でも精液とかどうやって採取したんだろうか……。あと囚人のリーダーであるアイツがそれ以上に憎たらしくてムカつきますね。ヤツには最後はトラックに激突したときに運転席から放り出されて潰れて死亡くらいしてほしかった、と思わせるくらいクズ野郎も上手く描けてます。

なぜ敵はヨウルたちの潜伏場所がわかったのか、なぜクォンはヨウルたちが撃たれそうになったところに間に合ったのかなど、気になる点やご都合主義もありますが、それでも積み上げたエモーションを一気に爆発させていくクライマックスは怒濤の勢いがあって良いんですよ。逃亡をライブ中継される絶望感からの、忘れた頃にやってくる残り二人の仲間の頼もしさ、そして真実の映像を流しての大逆転。よくあるフィニッシュながらギリギリのところで間に合わせるスリルもあって達成感が大きいです。あとクォンのチームは結局誰も殺したりはしてない、というのもポイントでしょう。そこが弁護士たちとは違うという線引きになっているし、ノイズが混じることなく負け犬たちが力を合わせて立ち向かう熱さに集中できます。

「その木は腐っていない」というのがクォンの信じる正しさだとすれば、「仲間をあつめてもう一度、その木は腐っていないと言った」というのはチームの正しき勝利を噛みしめる言葉であるでしょう。弁護士助手の女が最後に電話しててさらなる黒幕の存在を匂わせますが、続編があったら観たいですね。

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