2018
02.05

ヒーローってなんだろう?『ガーディアンズ』感想。

guardians
Zashchitniki / 2017年 ロシア / 監督:サリク・アンドレアシアン

あらすじ
クマ!



冷戦下のソビエトで、遺伝子操作によって生み出された特殊能力を持つ兵士たちで超人集団を作る「パトリオット計画」が進行していた。しかし組織の科学者クラトフの裏切りにより研究所は爆破され、超人たちも姿を消す。それから50年後、自身も超人となりロシア崩壊を目論むクラトフを防ぐため、かつての超人4人が召集された!ロシア発ヒーローアクション。

かつて特殊能力を植え付けられた4人の超人たちが、祖国の危機を救うため、そしてアイデンティティを取り戻すため、自分たちを生み出した敵に立ち向かう!というロシアのヒーローもの。そのルックから昨今のハリウッド製ヒーロー映画の影響は予想できますが、いやこれはきましたねスゴいのが。色んなヒーローもののいいとこ取りをしようとして、ものの見事に失敗した珍作です。いやマジか、という驚きが山ほどあってどこからツッこんでいいのやら。映像は頑張ってますが見せ方がショボいのでアガるところまでいかず、何より内容が薄すぎて風で飛びそうな脚本は致命的。でもクマはイイ。あのクマだけで満足。

能力者の悲哀とか、悲しき過去の精算とか、力を合わせることの熱さとか、やりたいことはよくわかる。だから各人の能力が活かされていないのも、キメ絵のつもりがキマってないのも、敵ボスが肉襦袢なのもまあ許します。でもかなりの濃度でアサイラム臭が漂うので観る人を選ぶでしょうね。「ヒーローとはなにか?」というのを違った意味で問う意欲作……いや問題作……やはり珍作か。「日本よ、これが露映画だ」って言っちゃうのはさすがにロシア映画がかわいそう。

↓以下、ネタバレ含む。








タイトルからして『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と被るので紛らわしいんですが(そもそも「パトリオット」じゃないのか?)、超人たちの能力もどこかで見たようなものばかりで色々と被ってます。被ってるのはいいんですが、能力に特化した活躍がいまいち見られないのがイタい。ハンは見た目が『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』のバッキーで、能力は『ジャスティ・リーグ』フラッシュや『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』クイックシルバーのようなスピード。丸い形の刀を使ってるのが何となく速さに対応してる感はありますが、まあ何となくです。クセニアは『ファンタスティック・フォー』インビジブル・ウーマンのような透明になる能力ですが、そんなに能力使いこなしてないので単なる紅一点になってます。リーダー格(に見えるが意外とそうでもなかった)レアは念動力、なのかな?体に岩をくっつけて同じく『ファンタスティック・フォー』ザ・シングのようになりますが、ガード力は上がっても重くて動きが鈍るのでは……。アルススは怪物に変身するという点ではハルクですが、クマになるっていうのがイイですね。しかも半クマから全熊になる!半クマがガトリングを撃つ姿もイカしてます。

設定とか過去とか丁寧に台詞で説明してくれますが、映像で見せるということをしないのでかえって把握しにくいし、逆に映像で見せようとしてるところは描写不足であっけなく進むのでわかりにくいのですよ。冒頭、最新のAI戦車が出てきてこれが後で暴走するのかな?と思ったらいつの間にか牙をむいてる、というのから呆気にとられます。そのあとで将軍が親切に背景を一通り説明するのが長い長い。ガーディアンズを探せ!となるのはいいんですが、次々に眉唾物な情報を集めるスタッフたち。と思ったらその胡散臭い情報が全部本物だったとか、かなり高性能なフィルター機能があるのでしょう。このスタッフたち、なぜかいつも全員突っ立ったまま状況を見守ってて、作戦成功でハリウッド映画的に喜ぶもののどこかぎこちないのが微笑ましいです。

ガーディアンズの登場シーンもなかなかアレです。レアは能力使うつもりはない的なことを言いますが、そのわりに少佐にめいっぱい力を誇示(あと祈りのシーンが長い長い)。ハンはここがおれのターン!とばかりにいきなり全力でバトルしてますが、相手のあいつらは誰?クセニアはサーカスで透明になる技を披露してますが、そんなことしてて騒ぎにならないのか?と言うか、透明になっても思ったよりどこにいるかわかるので不安が募ります。アルススは登場時からクマですね、オッケーです。あと全員に唐突に始まる一人語りがありますね。長生きで孤独だったと言うクセニア。娘の葬儀を出したというレア。いつの間にか兄を殺したというハン。クセニアにラブだと言うアルスス。キャラの深掘りのためでしょう、その背景が延々と語られますが、まあ正直どうでもいいです。アルススのは特にどうでもいいです。あとクセニアの得意料理はボルシチだそうです。どうでもいいわ!

予想を裏切る超展開も山盛りですよ。クセニアが装置をショートさせるために自ら高圧電流に飛び込み自己犠牲の精神に泣ける、かと思ったら大丈夫、生きてます。実は生きてたという博士がいきなり登場し、どこからともなく現れたクラトフによりいきなり退場、かと思ったら大丈夫、生きてます。アルススは「次に変身したら戻れないかも」とハルクみたいなことを言いますが、大丈夫、いつの間にか戻ってます。ハンのマスクには何か秘密があるのかとヒヤヒヤしますが大丈夫、特に意味はなさそうです。たぶんカッコいいからでしょう。みんなやられてスーパーなスーツで復帰したら、レアがいきなり電磁ムチの使い手になってたり、そのムチで捕まえてるのにハンはムチを切り裂いて攻撃したり、極めつけは決め技の「合体」が皆が触れ合ってスーパーな衝撃波を出すという、もはや能力とは何の関係もないというのが潔い。

いやもう、この意味のなさのオンパレードはある意味スゴいですよ。将軍は特にメリットもないままなぜか裏切ってガーディアンズを差し出した上にあっけなく殺られるし、少佐の憂いを秘めた表情は色っぽいというよりは困ってるようにしか見えないし、ムキムキ肉襦袢クラトフの「乗り物を操る能力」ってのもやけにぼんやりしてるし、って言うか結局落下して終わりかい。別にガーディアンズをわざわざ集めなくても軍がミサイルで一斉攻撃とかすればよかったのでは……。「お前たちは私が作った!」に対し「作ったのは彼ら自身」というカッコよさげな締めの言葉が空しく響きます。アイデンティティを取り戻した、ということでいいのかな?いいんだよね?(もう自信ない)

ああもうこんなに長く書くつもりじゃなかったのに……脚本の粗さ、キメ絵になってないアクション、使いどころを間違った迫力映像、変に間を取りすぎたり大雑把だったりする演出と、久々に見る香ばしさに脱力半端ない本作。ようやく終わったかと思ったら「ガーディアンズはもう一人いる」って最後の引きがそれ!?エンドロール後のおまけまでありますが「誰の仕業?」で言われた名前、誰!?と最初から最後まで統一感あるボンクラぶりで観る者を虚無へと誘ってくれます。でもね、彼らのお陰でロシアの平和は守られたのですよ。救われる市民とか全然描かれないけどきっとそうなんですよ。彼らの活躍を見ることはもうないでしょうが、これからも人知れずロシアで悪党と戦っていただきたい!頑張れ、負けるな、ガーディアンズ!もしくはパトリオット!

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