2018
01.29

高潔なる命知らず。『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』感想。

Wolf_Warrior2
戦狼2 Wolf Warrior II / 2017年 中国 / 監督:ウー・ジン

あらすじ
戦場の狼、アフリカへゆくの巻。



退役した元特殊部隊のレン・フォンはアフリカの地で新たな生活を始めるが、現地で内戦が勃発。激しい戦火を逃れたものの、逃げられなかった中国の要人を救うため、レン・フォンは元軍人のスキルを活かし単身内戦下へと身を投じる……。アクション俳優ウー・ジンが監督と主演を務めた戦争アクション。

アフリカの内戦地帯を舞台に、元特殊部隊員の死闘が描かれます。2014年の『ウルフ・オブ・ウォー ネイビー・シールズ傭兵部隊 vs PLA特殊部隊』の続編ですが、前作を観ていなくてもさほど問題なし。特殊部隊「戦狼」を退いたレン・フォンが、アフリカのとある国でシビアな政情と非道なテロのなか、中国人という部外者でありながら命懸けで人々を救おうとします。亡き妻の復讐、少年との親子関係、新たな出会い、老兵の再起に若造の成長、内戦に疫病、と濃い要素満載、それでいて散らかってる印象はなく、グイグイ引き込まれる怒濤の展開。アクションは水中戦、市街戦、ゲリラ戦、戦車戦とバリエーションが本当凄いし、とにかくカッコいい。中国で歴代映画興行収入の最高記録を塗り替えた、というのも納得です。

主人公レン・フォン役は『ドラゴン×マッハ!』『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』の、戦う荒木飛呂彦ことウー・ジン。銃撃、格闘、カーチェイス、戦車バトルまで見せる渾身のアクションが特盛!ウー・ジンは今回監督もこなしており、なかなか緩急の効いた演出と、あと絶品の笑顔を見せてくれます。さらにテロリストのボス、ビッグダディ役は『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』のクロスボーンズことフランク・グリロ!レンと行動を共にする女医レイチェル役のセリーナ・ジェイド、老兵ホー役のウー・ガン、若造イーファン役のチャン・ハンもそれぞれ味のある活躍で魅せてくれます。

死と隣り合わせの戦地で、捨てきれぬ正義感で自らランボーと化するレン・フォンの熱さと強さにはシビれます。一つ一つのシチュエーションでたっぷり見せるので緊張感もかなりのもの。内戦で疲弊するアフリカの人々も描きつつ、娯楽作としての見せ場も必要以上に盛り込んでいて、超面白い。もちろんウー・ジンを満喫できます。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭の船が海賊に襲われるシーンでは『キャプテン・フィリップス』なら乗り込まれてしまうところを、その前にいきなり海に飛び込むレン・フォンことウー・ジン。息継ぎせずに賊をワイヤーでぐるぐる巻きにしていき、ボートに上がってキュッと結んで決着、とここだけでもう超人的。町中での突然の銃撃戦はもはや戦争というレベルですが、スーパーでガン=カタを披露したり金網で飛んできたミサイルを止めたりと、戦場でありながらしっかりアクションを見せてくれます。病院での女傑アテナと怪力ベアーとの格闘や、その後の狭い下町でのカーチェイスなどはスリリング。ドローンによる銃撃を避けながらのスナイピングというのは狭いフィールドを巧みに活かします。あと終盤の一大決戦、大量の戦車が現れてこれを攻略するのは豪気だし、戦車vs戦車のバトルは『フューリー』に匹敵するかと思いましたよ。と言うかほぼ実写版『ガルパン』ですよ。女の子は乗ってないけど。

レン・フォンの正義感の強さは序盤に悪徳業者をブン殴ることからもわかりますが、徹底して善玉です。戦時下という状況ではどちらが善とか悪とかは判別が難しいところですが、本作ではテロリストが無差別に市民を殺しまくるので当然そちらが悪者です。とは言え中国人のレン・フォンは部外者ではあるので、最初は仲のいい少年や道すがら救った人を伴い港へ向かうだけで、戦うのは一般人を救うときのみ。でも「私は中国人だー」と言って自分だけ難を逃れようとするスーパーの親父が対比となってやはりヒロイックではあります。そんなレンが志願したミッションで再び「戦狼」として死地に赴くことに。軍が国連の許可がないと戦闘できないのはともかく「誰かが単独で救いに行くしかない」という台詞はちょいとわざとらしいし、援助も何もできないという丸投げっぷりはどうなのとも思いますが、そこで志願してしまうレン・フォンの高潔さにシビれるわけですよ。

酒を飲みまくる序盤で妻を亡くしたのがわかることからも、失うものがないというのもあるのでしょう。それだけに家族同然に親しい黒人少年の母親を探すという目的が、話の流れと上手く合致しています。妻を殺した者の銃弾を持ち歩き、その犯人がビッグダディであるとわかるのもドラマチックすぎではあるものの、忘れた頃に銃弾が装備に止まって判明するくだりは繋げ方としてはよくできてます。警備員で元軍人ホーとの年の差バディには『アウトロー』のような味があるし、得意気にナイフを振り回して「俺が守ってやる」とうそぶいていたお坊っちゃんのイーファンが、本当に人々を守るために仲間に加わるのもイイ。イーファンを嫌っていた少女パーシャが最後に食べ物をあげるところはじんわりします。孤軍奮闘してるところに味方が増える展開が熱いんですよねえ。

でもレンさん、ちょっと命知らずにもほどがあるというか、「一度戦狼になったら死ぬまで戦狼!」と戦う男の悲哀もあるものの「戦狼ならどう戦う」と問われて正面突破しようとするのがヤバイです(煙幕は使ったけど)。伝染病であるラマンラ病にかかってしまいワクチンもない、というシーンではさすがにもうダメかと思いますね。実はパーシャが抗体を持っていた、というのがここで上手く繋がってくるわけですが、「医療保険に入ってる」で済まそうとしてたのはユーモアなのか素なのか微妙なところです。レイチェルとの距離感は適度にイイ感じで終盤のキスシーンもそこはね、するよね!という流れ。「君は人を殺すのではなく人を救え」という王道な台詞もキマってます。やっぱウー・ジンはカッコいいな。アフリカだからって唐突にライオンが出てくるのは笑えますが、さすがにライオンとは戦わなかったです。

ただ、逃げるために使っていた「中国人だ、撃つな」という言葉を、最後はテロへの勝利を誇るように言いながら通っていく、のはいいんですが、国旗まで巻き付けて進むのはね、中国を称えよ、みたいな感じがして少々鼻白むところではあります。思い返せば戦うのも中国人三人だけだし、一人くらいアフリカ代表みたいな目立つ活躍をする人がいた方が良かったろうとは思いますけどね。「彼らはかがり火があればどこでも踊れる」という台詞も一見アフリカの人々への理解を示しているように見えて、彼らを切り分けて守られる立場に押し込めてしまっているように思えてしまいます。しかもテロリストのアフリカ人の首領はビッグダディに殺されて最後は西洋の傭兵が率いる部隊が相手なので、一体何と戦ってるんだ?というのがあやふやに。抗体をもつパーシャを奪おうとする敵を倒す、というのがあるので辛うじて成り立ってますけどね。

それでも悲壮感漂うたった三人での戦いはやはり熱く、そこに追い詰められていくサスペンスも盛り込み、中国イージス艦からのド迫力ミサイルで逆転劇に繋げ、復讐まで果たすという流れは言うことなし(グリロの死に様もイイ)。戦争ドラマの深みはそこまででもないですが人間ドラマとしてはよく練られているし、娯楽の方に振っているのでバランス的には悪くないし、てんこ盛りのアクションが素晴らしいので大満足です。まさかのNG集まで付いててサービス満点。と思ったら突然広大な雪原にいるレン・フォン……って続編あるんかい!いや、楽しみです。

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