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2018
01.25

無垢な心に目覚めし英雄。『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』感想。

saiyuuki_heroisback
西遊記之大聖帰来 Monkey King: Hero Is Back / 2015年 中国 / 監督:ティエン・シャオポン

あらすじ
たいせ~い!



妖怪の脅威に怯える長安の町、そこで暮らす孤児の少年リュウアーは、妖怪に襲われていた女の子を助ける途中で五行山の洞窟に迷い込む。そこで偶然目覚めさせたのは、500年間閉じ込められていた伝説のヒーロー、斉天大聖こと孫悟空だった!「西遊記」を題材とした3DCGアニメ映画。

中国の国産アニメとして歴代1位の興行収入を記録したという、一風変わったCGアニメの西遊記です。本来の話と違うのは、孫悟空を復活させたのが三蔵法師ではなく一人の少年だったら、というifの物語であることですね。長き封印から目覚めたものの本来の力を発揮できない孫悟空が、自分を目覚めさせたリュウアー少年と行動を共にしながら子供たちを連れ去る妖怪たちに立ち向かっていきます。

CGムービーらしくアクションは怒濤の勢い。カメラワークがやたらグリグリ動きすぎとかちょっと芝居が仰々しいとかありますが、香港映画的な盛り方と思えば許容範囲です。中華な楽曲や舞台も雰囲気あるし、子供たちも可愛いし、呼び名が「孫悟空」じゃなく「斉天大聖」で通すのがなんかイイんですよ。やさぐれ悟空こと大聖の立ち姿がカッコよくてシビれます。CGアニメとしてはピクサーのクオリティやドリームワークスの味わい、イルミネーションのコミカルさといったものに負けないものを目指してるというのが感じられて、よく研究してるなあと感心します。

元の話と比べると三蔵も沙悟浄も出ないという違和感はありますが、それも物語を紡ぐ上での取捨選択なのだと納得できます。笑いと涙と冒険とアクションに彩られ、お子様にも楽しめるアレンジ西遊記としてなかなか上手い。近年の『西遊記 はじまりのはじまり』『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』などともまた違う味わい。アトラクション・ムービーとしても観れますね。力を奪われた傑物が本当の英雄になるまでを描くのがまさにタイトル通り「ヒーロー・イズ・バック」で熱いです。ちなみに日本語吹き替え版の監修は『コクリコ坂から』の宮崎吾朗だそうです。

↓以下、ネタバレ含む。








斉天大聖、孫悟空。その無双っぷりから始まる天界の一大アクションからしてダイナミック。で、このアクションがわりと全編に渡って繰り広げられます。リュウアーがおちびちゃんを連れて妖怪から逃げるくだりや、岩の巨人との立ち回り、宿に泊まったときに襲ってきた妖怪たちとの戦い、クライマックスの敵ボス混沌とのバトルに至るまで大盤振る舞い。空間を立体的に使う場面が多く、背景も奥行きがあって、映像が気持ちいいです。高所から落ちるというのが少なくとも三回はあったのがマンネリに感じなくもないですが、青龍に乗ってる視点での急降下のスピード感、巨大な化物が暴れる怪獣映画的な迫力など、色々と面白くしようという意欲が感じられますよ。

大聖は力を制御されているので特殊能力は使えず体技だけで倒さなければいけないんですが、これにより必要以上にチートになることを防いでピンチも演出できるし、ラストに覚醒するカタルシスにも繋がりますね。頭に付ける緊箍児(きんこじ)は三蔵が呪文を唱える前提のためか今回は登場せず、代わりに釈迦如来に付けられたらしい腕輪で力を抑えられているというのにも工夫が見られます。仲間になる猪八戒こと天蓬元帥は、大聖とリュウアーだけでは弱くなる場の繋ぎやツッコミ、ムードメーカーなどの役割ですね。その正体が冒頭で天界から大聖に落とされたあいつである、というのがわかるので、大聖vs八戒は省いてテンポを崩さないようになってます。メインは大聖とリュウアーなのであくまでサブの扱い。ここに沙悟浄まで出てきたら冗長になるだろうから、キャラを絞ったのは英断でしょう。

ただ細部の描写はもう少しあってもよかったですね。なぜ八戒が大聖たちに付いていくのか、なぜ師匠があの洞窟に来れたのか(ワニに食われかけながら)、どうやって青龍に乗ったのか、という辺りがハッキリしないのでご都合主義を感じなくもないです。あと敵役の妖怪がゴブリンぽいと言うか西洋の怪物という感じのデザインなのも惜しい。大聖が嘆息するときの動きがちょっと大袈裟なのも気になります。大聖がリュウアーに「強くなって勇気があればいつか青龍に乗れる」と言うのはね、乗せてあげて欲しかったかな。とは言え全編にわたって楽しさが持続するので、多少のノイズもそこまで気にはならないです。逆に意外とよかったのが、吹替で観たんだけど劇中の挿入歌も日本語の歌だったところで、これは気が利いてるなーと思いました(字幕だとどうなのかはわかりませんが)。あと元々西遊記にも出てくるという哪吒や哮天犬(名前のみだけど)が出るのは『封神演義』好きとしてはちょっとアガります。哪吒は女の子なのか!

リュウアーは赤子のときに両親を殺され、偶然お師匠に拾われて仏道に入りますが(小坊主ということで一応三蔵を連想させる)、赤子の頃から聞かされた斉天大聖の話が大好きなわけです。そこに本物が現れたものだから大はしゃぎ。しかし大聖は力を奪われて何の目的もなくやさぐれており、使うことができない如意棒の話には怒り出したりします。でも宿でリュウアーが大聖への憧れを語る辺りから徐々に変わってくるんですね。そんななかで終盤に自分を助けようとしたリュウアーが岩の下敷きになったのを見て覚醒。腕輪の痛みに耐えながらも力を出そうとするのが熱く、砕けた岩を鎧としマフラーをなびかせて立つのがカッコよく、冒頭のようなニヤけ顔は一切なしで如意棒などの特殊技能も全力で使い、少年が信じ続けた「無敵の斉天大聖」として戦うのです。その姿はまさに帰ってきた英雄。最高すぎて泣けます。

リュウアーの生還は作風を考えれば妥当なところでしょうね、さすがに後味悪いし。それよりも最後にリュウアーの声で振り返った大聖の嬉しそうな顔がとても良いので許せちゃいますよ。中国が自国の物語を今風にアップデートしつつ新たなチャレンジをしたということでなかなかのエポックメイキングであると思うし、素直に面白かったです。『封神演義』や『水滸伝』あたりもやってほしいぞ。

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