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2018
01.24

彼女はミスター殺し屋。『レディ・ガイ』感想。

The_Assignment
The Assignment / 2016年 アメリカ / 監督:ウォルター・ヒル

あらすじ
アレがない!



殺し屋であるフランク・キッチンは、ギャングに捕らえられたあと体中に包帯を巻かれた状態で目が覚める。包帯を取り去り鏡を見たフランクは、自分が全身に性転換手術を受けて女に変貌していたことに驚愕。自分を捕らえた者と手術をした謎の医師に対して復讐を始める……。ミシェル・ロドリゲス主演、ウォルター・ヒル監督によるクライム・アクション。

目が覚めたら女になっていた!どうしよ~!という、設定だけ聞くと学園ラブコメものか何かだと思うところですが、それをハードボイルドな話でやってしまうという離れ技を見せるのが本作。もしかして……入れ替わってる~!?でもないですよ?自分の意思に反してマジで女にされてしまった凄腕の殺し屋フランク・キッチンが、愕然となりながらも怒りの復讐を開始します。一方で刑務所の一角で取り調べを受ける謎の医師、ドクター・ガレンのシーンが交互に映され、彼女がフランクと関係があるらしいことを匂わせます。徐々に語られていく真実、敵を倒しつつ黒幕に近付くフランク、というサスペンスが良いです。

男から女に変わってしまうフランク役はこの人以外は考えられないでしょう、『バイオハザード』や『ワイルド・スピード ICE BREAK』などでおなじみ、おれたちの兄貴ことミシェル・ロドリゲス。男のときはてっきり別人が演じるのかと思ったら、男役もミシェル姐さんが演じて本当に兄貴になるのが驚き。むしろ元々女なのに女になった後の姿に戸惑います。とにかくミシェル姐さんが最高で、突然の女体化にパニクって清々しいほどに裸体を披露するし、睨み上げて殺して破壊するド迫力に震えます。一方でガレン女医役を演じる『エイリアン』シリーズや『怪物はささやく』のシガニー・ウィーバーも良かった。饒舌で高慢な医師としてさすがの存在感。ジョニー役のケイトリン・ジェラードも美しかったです。

スピーディではないためアクション映画として観ると少々物足りなさもありますが、じっくり見応えある展開に『バレット』以来の監督作となるウォルター・ヒルのシブさが光ります。R15+ならではの描写に驚くし、ラストも鮮やか。何よりミシェル・ロドリゲスが銃を構えた姿の惚れ惚れするカッコよさ。元々好きですが、今作のエロそうでエロくない少しエロいミシェル姐さんもたまらんですよ(中身は男だけど)。

↓以下、ネタバレ含む。








フランク・キッチンがミシェル本人だとは最初は気付かなかったほど男になりきってましたが、気付いたあとはやはり女性だなとは思います。細マッチョに見えなくもないですが。それでも顔中をヒゲで覆われてたり体の線を見せないようにしたり、元々低めの声もさらに低くして話したり歩き方もちょっとイキった感じだったりと、かなり気を使ってて上手いです。しかもミシェルが演じてると気付いてからのフルヌードシーンでわざわざ体を男性のものに差し替えることまでしており、ミシェル姐さんに立派なちん◯が!と倒錯的な気分になりましたよ。逆に後半にブロンドのウィッグを付けて女性に成りきってる姿の方がかえって男が女装してる感がある、というのが不思議です。そして女体化した姐さんの惜しげもなく晒される裸体。ひょっとしたらとは思ったけど案の定自分の体を確かめるために乳を掴み、指を這わせる。さらにはジョニーとの女同士(?)のカラみまで。エロい……(中身は男だけど)。

そんなミシェルが半裸のまま酒を買いに出たりするのにはハラハラしますが、それでいて睨み上げる表情の迫力、敵を殴り殺すというバイオレンス、宿を破壊するはっちゃけぶりなどで暴れてくれます。同時に、女になってしまった男のショックとか、一夜を共にしたヒロインに再会したときの気まずそうな応対とか、「本当は男なのに」というやるせなさも感じられてとても良いです。ヒロインの名がジョニーという男名前なのも男女逆転劇に趣をもたらしますね。ガレン医師が手術の目的の一つとして「性が人のアイデンティティを作るのか、という実験だった」と言うのは興味深いところで、結論として「やはりフランクは男だった」と言うんですが、つまり人を形作るのは性別ではないというのを暗に示しており、そこに「性の不一致」という裏テーマさえ感じられます(そこまで昇華されてるかと言えば微妙ですが)。

ドクター・ガレンがなかなかフランクと交わらないので、なぜ彼女のパートが必要なのか、一体どう繋がるのかというのが気になる構成になっているのも特徴的。どうやら助手は殺されガレンも撃たれたらしいのに、なぜ彼女は生きているのか?そこでガレンはフランク・キッチンという殺し屋に性転換手術をしたこと、それが弟を殺された復讐として生きたまま苦しみを与えたかったからだと述べます。それでいて前述の実験の話や、自分の仕事の意義や素晴らしさを知らしめたかった、ということまで言っており、やたら喋りまくりつつ人を見下した物言いなどからもサイコやマッド・サイエンティストな雰囲気が感じられます。そんな「こいつヤバい」感によって、フランクの話が空想ではないかと疑わせるんですね。劇中グラフィックノベルのようなイラストが挟まれますがこれはフランクのパートだけで、あとはシェイクスピアやポーといった作家の肖像画が出てくるというのもあり、フランクの話が物語かもしれないというミスリードになっています。

しかしそんな疑いを一気に晴らすラストのキレ味。なぜ彼女が胸を撃たれて生きているのかと言えば、腕のいい殺し屋なら急所を外して撃つことも可能でしょう。そしてなぜフランクはメスを取ったのか、それがガレンが手袋をしていた理由であり、ガレンの言った「生きたまま苦しませる」という復讐をフランクも行っていたというわけです。ガレンが必要以上に饒舌なのも、自分を賢く見せようとしたのも、過去の功績をアピールするのも、そして作り話を疑われながらもフランクの存在を最後まで訴えるのも、その復讐により失われた医者としてのアイデンティティを取り繕うためなんですね。しかし残った親指を虚ろに見つめるガレンの表情には、いくら繕ってもどうしようもないという諦観を感じさせます。

中盤が少しタルく、ミステリーとして見せるなら途中はもう少しスマートにできただろうし、アクションとして見せるならもっとテンポよくした方がよかったとも思いますが、それでもミシェルの魅力とノワールな雰囲気、ショッキングなラストまで楽しめましたよ。あと犬が救われるのが良かったです。

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