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2018
01.23

スパイの孤独と背負いし宿命。『キングスマン:ゴールデン・サークル』感想。

Kingsman_The_Golden_Circle
Kingsman: The Golden Circle / 2017年 イギリス / 監督:マシュー・ヴォーン

あらすじ
今日のメニューはハンバーガー♪



イギリスの独立スパイ機関キングスマン、そのエージェントとなったエグジーだったが、キングスマンは謎の組織ゴールデン・サークルの攻撃を受けて壊滅的なダメージを負ってしまう。エグジーは教官でメカ担当のマーリンと共に、同盟関係であるアメリカのスパイ機関ステイツマンに協力を求めるために渡米するが……。『キック・アス』マシュー・ヴォーン監督によるスパイアクションの続編。

独自のカメラワークでクールに魅せるアクションと、エグさも交えたシニカルな展開で新たなスパイムービーとなった『キングスマン』の続編登場。イギリスの労働者階級から独立諜報機関キングスマンのエージェントとなった若者エグジーが、新たなる世界の脅威である麻薬組織ゴールデン・サークルを相手に奮闘します。さらに膨らませたアクションとガジェットには興奮し、対象を中心に回転するカメラワークでさらにエキサイト。期待する方向を少しずつズラしてくる意外性に驚き、悪趣味すぎる描写やサイコな敵役なども遠慮なし。全てが前作を凌駕してると言っていいんじゃないでしょうか。酷評も多かったようなので覚悟して観たけど、いや怒る人がいるのもわかりますが、すんごく面白かったですよ。

エグジー役のタロン・エガートンやマーリン役のマーク・ストロング、ロキシー役ソフィ・クックソンら前作の主要キャストも続投。なんとあの人も出てきます(予告バレしてますが)。さらに今回新たに登場するステイツマンのメンバーとして、テキーラ役に『マジック・マイクXXL』チャニング・テイタム、ウィスキー役に『グレートウォール』ペドロ・パスカル、シャンパン役に『アイアンマン』ジェフ・ブリッジス、ジンジャー役に『X-MEN:フューチャー&パスト』ハル・ベリーらが登場。謎の組織ゴールデン・サークルのボスには『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』ジュリアン・ムーアと豪華布陣です。

世界を救う話ではありますが、ヒロイックな話かというと意外とパーソナルだったりするし、痛快かといえば深い喪失も描かれたりするしで、思った以上にひねくれてるようにも見えます。でも個人的にはわりと一貫してるかなとも思うんですよ。粗いところもありますが、あらゆる見せ場をこれでもかとブチ込み、ゲスな描写も遠慮なく披露、そして何よりスパイとしての悲哀があると思うんですよね。

↓以下、ネタバレ含む。








■予想外のブッ飛び方

色々と予想外の展開が多いんですが、まず007で言えば一作限りのボンドガールかと思われた王女と、まさかそのまま付き合っていたというのが驚き。ハリーが生きていたのはサプライズにしてほしかったところですが、ハリーを生き返らせるためにスゴいガジェットを出してきたのには驚きます。これがウィスキーも救うことになるというのが上手いところ。ゴールデン・サークルのポピーの目的が麻薬の合法化、そして表舞台に出ることというのも斬新。ジュリアン・ムーアが追い詰められてもちょっと困ったな、くらいの顔しかせずあとは笑顔というのが怖いです。白目までむきますからね。

ステイツマンの面々ももろに西部劇テイストな出で立ちとそれぞれの能力の高さが実に良いんですが、なかでもハル・ベリーの変わらぬ若さと美しさには驚き。ウィルスのステージ2で躁状態で踊るテイタムも愉快です。ただテイタムはせっかく『ローガン・ラッキー』に比べてシュッとしたのに、エグジーたちを捕らえるところくらいしか見せ場がないのが残念(テイタムのスケジュールの関係で出番を減らすことになったようですが)。そしてエルトン・ジョンがあそこまでフィーチャーされてるのにブッ飛びます。見事すぎる飛び蹴り、ポピーをクソババア呼ばわり、「friend」でロボット犬を止める機転と、もはやエージェントなみの活躍。あの状況で水曜日の歌をノリノリで歌うのが最高です。

あとすんごい悪趣味な描写を臆面もなく映し出すのも驚く点です。人肉ハンバーグ、出すだけでなく食うところまでじっくり見せる(しかもすぐそばに半身が突き出てる)とか、下水にダイブするときに執拗に下水管の中を映したり、発信器を付けるシーンではそこまで映すかってところまで映すし、エグいですねー。大統領が何億人も見殺しにしようとするという、世界中の人々を人質とするポピーと表裏一体というのもシニカルです。

アクションの見せ場も予想以上にブチ込まれていて、序盤のタクシー対決は狭い車内でもぐるんぐるんカメラが回り一体どうやって撮ってるんだという映像にシビれるし、フロントガラスのない車で水中に潜るときは思わず一緒に息を止めてしまったし。ウィスキーのガンアクションや投げ縄のカッコよさ、雪山のゴンドラシーンの迫力なども面白い。クライマックスの大暴れでは、次々と手段を変えて倒していくエグジーとハリーのコンビネーションや、ロケット砲からマシンガン、盾にまでなるブリーフケースにはエキサイト。ハイパー義手vsエグジー、ロボット犬vsハリーと第2ラウンドまでたっぷり。まさかロボット受付嬢まで戦うとは、という感じです。


■それぞれの正義

驚きという点で最たるものが、人気キャラを惜しげもなく殺すという点です。エグジーの友人ブランドンがライター爆弾で助かったかと思いきやミサイル、というところで「えっJBもいるよね?」と驚き、直後にまさかの盟友ロキシーまで退場。「友人として?スパイとして?」「どちらも」で二人の信頼度が伺えて微笑ましいのに、それがまさかの死亡フラグだったとは……。しかもシリーズが続くならずっとレギュラーだろうと思われたマーリンまでがまさかの展開。これもマーリン含めたトリオで大活躍かと思った直後のことなので呆然とします。

この多すぎる喪失に悲しみよりむしろ怒る人も多いだろうと思うんですが、でもこれは昨今のキャラ萌えで引っ張る風潮に乗っていないということでもあり、あくまでストーリーを重視した結果ではあろうと思うのです。そもそもマシュー・ヴォーンはキャラ萌えを作る人じゃないと言うか、喪失を乗り越えての成長を描くことが多いんですよね。『キック・アス』も『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』もそうだし、そもそも前作も完全にそうです。敵と見なせば容赦ないところも一貫してますね。

そうして色々と削ぎ落とされていき、最終的に残るのがエグジーとハリーの関係性なのです。ハリーは「本当に信用できるのか」という不安、あるいは「また失われるのでは」というさらに大きな喪失さえも予感させます。マナー・メイクス・マンでの復活劇が見れるかと思ったらボコられてウィスキーのターンになるし、チョウチョ~って言ってるときが別人のようだっただけに余計心配。しかし記憶を呼び戻すハリーの姿は泣けるし、ウィスキーを撃った判断も正しかった、というのが終盤でわかります。何より前作で成し得なかったエグジーとハリーの共闘には感激。

キングスマンは独立諜報機関であり、女王様のために働くわけではないため、正義の基準は自分達のなかにあります。そのための選抜試験でもあるわけですが、逆に言えばその基準により敵対することもあるし、基準がぼやけたり孤立したりすることもあるんですね。だからウィスキーの行動は彼自身が選んだ道であるし、それは彼にとっての正義ではあります。しかしその正義はエグジーの正義とは相反するもの。そんな対立、そして仲間の喪失により、スパイというのは孤独である、というのを改めて突き付けてくるのです。そんななか、家族も持たず己の正義を全うしてきたハリーがいるからエグジーは揺るがずに済むし、そんな人生を振り返って結婚衣装のエグジーにハリーがかける言葉の優しさ。だからこそこの二人には泣けます。


■喪失を越えて

現場デビューしたばかりのマーリンが、地雷の爆発を止めるため自ら犠牲となるのも泣けます。カントリーロードを歌いきって(最後オクターブ上げて)散っていくマーリン。タロン・エガートンの泣きそうな表情がいちいち泣ける……。その喪失がエグジーの試練だとしても、マーリン退場はさすがにもったいないとは思いますけどね。今後はジンジャーがその役割を担っていくってことなんでしょうかね。

しかしそれらの喪失が軽く扱われているわけではないのは、「これはロキシーの、これはブランドンの、これはJBの、そしてこれはマーリンのぶんだ」と叫びながらチャーリーを殴るエグジーでわかるのです。失った者を忘れたわけではないし、新しい子犬で傷が癒えたわけでもない。エグジーは全てを背負って生きていくのです。泣けますよ。

ラストには王子になってしまったエグジー。今後キングスマンはどうなってしまうのか?はち切れそうなスーツ姿のテイタムがメインになるのか?でもハリーが言う「終わりではない。終わりの始まりでもない。だが始まりの終わりかもしれない」というチャーチルの名言の引用に、次作があるならさらなる驚きをもたらしてくれるだろうと思うのです。

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