2018
01.22

その目に神話を焼き付けろ!『バーフバリ 王の凱旋』感想。

Baahubali_2
Baahubali 2: The Conclusion / 2017年 インド / 監督:S・S・ラージャマウリ

あらすじ
バーフバリ!バーフバリ!(エンドレス)



蛮族との戦いに勝利しマヒシュマティ王国の王に指名されたアマレンドラ・バーフバリ。クンタラ王国の王女デーヴァセーナと恋に落ち妃に迎えたバーフバリだったが、王位継承争いに敗れた従兄弟のバラーラデーヴァの謀略に陥る。そして25年後、自分がバーフバリの息子マヘンドラ・バーフバリであることを知った若者シブドゥは暴君バラーラデーヴァに戦いを挑む……。『バーフバリ 伝説誕生』に続き親子二代にわたる伝説の英雄を描くインドの一大アクション叙事詩。

前作『バーフバリ 伝説誕生』で暴君バラーラデーヴァの元に捕らえられた王女デーヴァセーナを救いだしたシヴドゥ。彼が奴隷剣士カッタッパから聞かされたのは、かつての王アマレンドラ・バーフバリの伝説、そしてシヴドゥがその息子、マヘンドラ・バーフバリであるという事実だった!というところまでが描かれた前作。ここまでは本作の冒頭で「前作のあらすじ」としてダイジェストを流してくれるので前作を観てなくても大丈夫。仰々しいケレン味に最初こそ苦笑してたものの、あまりのスゴさに笑いも引っ込み、ただ「バーフバリ!バーフバリ!」と声を上げるしかなくなるという珍しい思いをした前作に、当然続編への期待も高まってたわけですが……。

なんと、あの前作さえも序章に過ぎなかった!なんだこの壮大なる特濃スペクタクル神話アクション巨編は!って前作でも同じようなことを言いましたが、実際そうなんだからしょうがない。親子二代にわたって語られる深遠な人間絵巻!あらゆるキメ絵とスロー使いを駆使した熱すぎるショットの数々!様々な工夫を凝らし興奮の抑えきれないアクション!愛とは、正義とは、をてらいなく描ききる重厚なストーリー!もう全てが見所!

バーフバリ役のプラバースは威厳と親しみやすさが同居する王として抜群の貫禄。素晴らしい仕上がりの筋肉に強さの説得力があります。サティヤラージ演じるカッタッパとのバディ感溢れるコンビプレイはカッコよすぎる!一方のバラーラデーヴァ役ラーナー・ダッグバーディもそれに負けない力強さと、何より暴君としてのラスボス感がスゴいです。デーヴァセーナ役のアヌシュカ・シェッティは若い頃の凛とした美貌と、貶められながらもその美貌を損なわない25年後の姿も魅力的。シヴァガミ役のラムヤ・クリシュナの迫力、目を見開いた表情のインパクトも印象深いです。

アクションは集団戦個人戦問わずド迫力、カット一つ一つが手を抜くことなく凝っていてカッコよさの極致。不幸の連鎖を呼ぶ謀略、すれ違う母子の悲しみ、権力を求めるあまりの歪み、溜めに溜めて爆発するクライマックスとドラマも深い。そんなスゴさに観てる間ずーっと「なんだこれは!」って心で叫んでました。『カンフー・ヨガ』が古き良きインド映画の楽しさを出してきてるときに、本場インドは遥か先の次元に到達していたと言えます。インド映画では『ムトゥ 踊るマハラジャ』『ラジュー出世する』『ロボット』『きっと、うまくいく』などに衝撃を受けてきましたが、それらを凌駕するほどの衝撃。しっかりした世界観とブレのない物語があれば、ここまでカッコよさと面白さを追求しても荒唐無稽さを感じさせない、むしろ究極の娯楽作に成りうるのだと感動。これ昨年末に観てたら年間ベスト変わってましたよ。とにかく文句なしに面白い!王を称えよ!

↓以下、ネタバレ含む。








■至高のアクション

アクションの見せ方はひたすらカッコよくひたすら絵になるような撮り方で、それがまた民を率いる王の貫禄とカリスマに直結します。序盤、悪魔払いの儀式で暴れ象をあっという間に手なずけるバーフバリ。象の姿をした神ガネーシャの像で象を押し倒すというエレファントな、もといエレガントな手段が神々しい。象の上でキメポーズ!巨大な弓まで引かせる(片手は腰)!その後急に諸国漫遊記みたいになりますが、カッタッパと共に賊を相手取るときの互いをぶん回しての攻撃が熱く、その息ピッタリ具合が二人の信頼度も表しています。デーヴァセーナのことを思い出してニヤけながらも敵の武器を木に打ち付けさせて無効化するバーフと「死ぬとこだった」と文句を言いながら敵をこずくカッタッパの余裕が愉快。

クンタラ王国を襲った敵軍に対しては、それまで愚鈍のふりをしてただけにいきなり荷車をブン投げるという口火のデカさが「はじまった!」という感じだし、角に火をつけた牛の大群アタックはダムを壊して大水で敵を流すというのにも繋がっていますね。デーヴァセーナと共に三本同時の矢を射つシーンは、デーヴァセーナが二本同時に射てないと言っていたのが伏線となっており、それを実践でスマートに伝授するバーフと次々と敵を蹴散らす二人の姿がカッコよくて美しく、かつデーヴァセーナが恋に落ちる心情まで描いていて秀逸。このシーンの何がイイって、二人とも最後まで弓矢しか使わないというのが素晴らしいんですよ。キメポーズも出まくりで本作で最も好きなシーンです。

ラストでマヘンドラ・バーフバリが考案する盾でかたまって投石みたいに飛び込む、といった豪快で盛り上がる大仕掛けから、スライディング膝つきするカッタッパのような細かい動きに至るまで、ちょっとしたアクションの一つ一つが工夫されているし、バックの映像までが凝っているのがスゴいです。


■劇的なドラマ

実際はドラマパートの占める量も結構多いですが、なんだか全編アクションな感じさえしてきます。アクションが関係性や心情に直結してるのと、ドラマの見せ方が劇的なためでしょう。ただシリアスなだけでなく、コミカルな面もあるのも楽しい。クンタラでの愚者バーフには「そこまで身分隠す必要ある?」とも思いますが、ギリギリまで隠していたからこその実力解放カタルシスがスゴいし、ついでにカッタッパの調子に乗ったわざとらしい演技が可笑しい(歌まで歌う)。そして燃える服の下から鎧が現れるという、黄門様の印籠も真っ青な最高の演出とタイミングで明かされる正体に激燃え。

王を称える歌の重厚さや愛を語るシーンのとことんロマンティックな見せ方など、音楽の効果も最大限に活かされています。インド映画的なダンスシーンは船の上の幻想的なシーンのみですが、必要にして十分なゴージャスさ。白鳥型の船はデザインが斬新でSF的な趣さえあり、それだけに空を飛ぶ姿も違和感なく受け入れてしまいます(いや飛ぶんかい!とは思いますが……いやイメージなのはわかりますが)。


■妻と母と父

デーヴァセーナは単に攻撃力が高いというだけでなく、バーフがわき腹に触った手で剣を握る手だと見抜くのがもう達人の域ですね。周囲が凍りつくシヴァガミとの嫁姑争いでは正しさを譲らない強さが眩しく、25年間の幽閉にも目の光を失わないのが凄まじい。また、デーヴァセーナの従兄弟であるクマラの描き方もすんごく良いんですよね。普通ならダメダメのまま終わるコメディリリーフになるところですが、これをバーフの檄によって見事に成長させてしまうというのが超熱い。それだけに謀略のダシにされてしまう悲しみもまた大きいです。

国母シヴァガミはバーフが「母はいつも正しい」と言うように、実の子ではなく従兄弟を王にすることからも公平で公正な人物だったはずですが、正しくあろうとするがために己の発した命令に囚われてしまうんですね。「この宣誓を法と心得よ」が枷となり、逆にデーヴァセーナから指摘されてしまったり、挙げ句の果てに愛するバーフを死に追いやってしまいます。前作ではあまり見られなかった、驚きに目を見開くシヴァガミの表情が何度も見られ、それでも引くに引けず泥沼へとハマってしまうのです。これだけの絶対権力を持つシヴァガミがなぜ前作冒頭で追われていたのか、というのも実に納得できる展開になっています。

そしてなぜカッタッパがバーフを殺すに至ったのかもまた明らかになります。シヴァガミのために我が王を裏切らざるをえなかったカッタッパの苦悩と後悔。バーフとのバディ感と親子感が大きかっただけに、その全てを懺悔しマヘンドラに付き従うカッタッパもまた本作の主人公の一人と言えるでしょう。


■バーフバリとバラーラデーヴァ

バーフバリの快進撃と同時に、着実に進行するバラーラデーヴァの陰謀。シヴァガミの微かな罪悪感に訴えかけるように「判断を迷うな」と言いながら、バーフの恋心を知ってデーヴァセーナの横取りを画策、シヴァガミが妻か王かの選択を迫るところまで見越していたのでしょう。バーフの追放の際にはタイミングを伺ってシヴァガミが引けなくなるところまで父を抑えるということまでやってのけます。そしてクマラをそそのかしての策略により、ついにバーフ暗殺の大義まで得る。実に大胆でしたたか。

しかしバーフへのあまりに強い嫉妬が生まれる経緯もまた納得できるように描かれているのが良いです。戴冠式のときにはついに得た王の立場に玉座を愛しそうになでているときに、バーフは民の声援に包まれているという対比。野に下っても民に慕われるバーフ(突然笛を吹き始めるノリのよさ)を崖上から見下ろす屈辱。そんな描写がバラーラデーヴァが反動として暴君へとなっていったようにも思えて深いです。

でもいくらバラーが野心や嫉妬に歪んでしまったと言ってもバーフの持つ王としての資質は否定しようがないわけです。それは女性に対する姿勢にも対比として表れ、バラーが「デーヴァセーナは私のものだ」と言うのに対しバーフは「私はそなたのものだ」と全く逆のことを言うんですね。またセクハラ野郎の指を切り落としたデーヴァセーナの前で「そなたは間違っている、切り落とすのは首だ」とスッパリ首を切り落としたりもする。一方でバラーはデーヴァセーナを縛っていた鎖をつかみあげながら、玉座でも権力でもなく「本当の幸せはこれだった」と言う台詞から想像を越えた闇があることがわかります。

このように台詞もよく練られているのがまた良いですね。「良い知らせと悪い知らせがある」に対し「良いか悪いかは私が判断する」にはシビれるし、「命を作るのが神、救うのが医者、守るのが王族だ」はカッコよすぎます。最後の言葉が「母を頼む」であるのもバーフの国母への愛情と器の大きさを表し、その後のシヴァガミの行動をも決定付けています。


■新たなる神話

3分の2くらいは父アマレンドラの話なので、息子マヘンドラの話が若干駆け足な気もするし、前作ヒロインのアヴァンティカがほとんどお付きの人みたいになってたりしますが、前作と合わせてみればそれほど気にならないです。何より父親の噴死を知って王の帰還を宣言するマヘンドラが熱い(ここの字幕が「王の帰還」なのでサブタイトル間違えそうになりますね)。そしてついに対決するバーフとバラー。バラーにしてみれば自分を苦しめた男が再び現れたという恐怖もあったでしょうが、自らの手で葬ることができるという喜びの方が大きいんですね。牛を素手で止める男なので、バーフがちょっとピンチになるのがまたハラハラですよ。

しかしデーヴァセーナを縛っていた鎖を「幸せ」と言ったバラーに対して、バーフはその鎖を拳に巻いてブチのめすわけです。ここまでアクションの極みを見せてきたためどのように倒すのかと思いきや、母デーヴァセーナの恨みを込めた渾身のチェーン・ナックル。そこには父アマレンドラの悔いという親子二代の思いも込められていたでしょう。これ以上ない決着です。無表情でバラーに火をつけるデーヴァセーナも凄まじい。バラーの父や側近は生き残りますがむしろ生き地獄でしょうね。最後に川を流れて滝を落ちる黄金像の首が、滝の下から這い上がってきたバーフバリと対称となっているというところまで、実に細部まで気が行き届いています。

オープニングの人形風味な3D映像が伝説を映像化したような見せ方であるのからしてそうですが、これはもう神話なんですよね。君だってヒーローになれる、という類いではなく、皆が求め恋い焦がれる英雄のお話であり、生まれながらの王が見せる王たる由縁が語られるわけです。だからどれだけド派手だろうが、どれだけ超人的な活躍を見せようが「バーフバリだから」で納得してしまう。もちろん演じるプラバースの存在感と、スケールの大きさを感じる画作りに壮大な人間ドラマ、加えていくらでも語れるディティールなどがあるからこそ。監督は『マハーバーラタ』にインスピレーションを得たとのことですが、まさに現代の新たな神話として語り継がれるべき大作。エンドロールがあっという間に終わる(本当にあっという間)のが惜しいくらい。素晴らしかったです。

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