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2018
01.10

開かれない真理の扉。『鋼の錬金術師』感想。

fullmetal_alchemist
2017年 日本 / 監督:曽利文彦

あらすじ
手パン!



エドワードとアルフォンスの兄弟は、かつて錬金術最大の禁忌である人体錬成に失敗した代償として、エドワードは身体の一部を失い、アルフォンスは身体全てを失い鎧に魂を定着させた姿に。数年後、国家錬金術師となったエドワードは、失った身体を取り戻すため絶大な力を持つという「賢者の石」を探すが……。荒川弘の同名コミックを『ピンポン』の曽利文彦監督で実写映画化。

物質の構成や形状を等価交換することで新たなものに作り変える錬金術。そんな錬金術を操るエドとアルの兄弟が、かつて錬金術のために失った身体を取り戻すために旅をしながらも、国を揺るがす存在と戦うというアクション・ファンタジー、通称ハガレン。原作はテレビアニメ化、アニメ映画化もされ、原作が完結した後も人気を誇るコミックです。賢者の石を求めるエドとアルが、悪徳宗教家を退治した際についに見つけたと思った石に隠された秘密。そこに国家錬金術師のマスタング大佐らや、人智を越えた存在のホムンクルスが絡み、兄弟の幼なじみのウィンリィも巻き込んで、出会いと別れ、陰謀渦巻くドラマが展開されます。

エドワード役に『暗殺教室』山田涼介、ウィンリィ役に『土竜の唄 香港狂騒曲』本田翼、マスタング役をディーン・フジオカ、ヒューズ役を佐藤隆太、ほか小日向文世、大泉洋、松雪泰子、國村隼など有名俳優が多く起用されたキャスティング。独自の世界観を実現するために映像的にも色々頑張ってもいると思うし、その辺りは個人的にはさほど文句もありませんよ。特にアルに関してはフルCGとは思えぬ自然さと存在感が素晴らしいです。

原作は全巻読破済みですが、個人的には原作と映画に多少の差異があるのは別に構わんのです。その上で原作に近い部分、映画的に脚色した部分、それぞれに良さがあればいいかなと。ただ、本作についてはそれ以前に気になる点が多いなあという印象。そのために原作との差異も余計気になっちゃうという感じです。何だろう、悪くはないけどなんかこう、上手くないなあと。惜しい。

↓以下、ネタバレ含む。








2017年は多くのコミック実写化作品が公開されましたが、これはその中でも特にチャレンジングな一本でしょう。かなりの分量があり壮大な世界観を持つ作品をどう2時間の映画に落とし込むかという構成の問題、登場人物がほぼ外国人であるのを全て日本の役者で演じるというキャストの問題、ファンタジー世界をどうコスプレに見せずに描くかという衣装や美術の問題、錬金術を自然で見応えあるビジュアルにできるかという映像の問題と、クリアすべきハードルが多過ぎて観る前から不安が募ります。ついでに熱烈な原作ファンの厳しい目というのもあるでしょう。

そういう点では、もちろん原作最後までを描くというのは無理にしろ、話の構成は外せないであろう原作の重要エピソードで上手く繋いでいます。日本人キャストが英語圏の名前で呼ばれるのも最初から覚悟はしてたのでそこは許容できました。イタリアの街でのロケによる雰囲気も良い感じだし、錬金術で飛び出す壁とか柱とかのVFXもそれほど違和感はないです。なかでもアルの映像は本当に鎧に入って動かしてるんじゃないかというくらい違和感なく周囲に溶け込み、アップでも引きでもCGくささが皆無で、佇まいからアクションまで全てがイイ。このアルを見れただけでも結構満足。

しかし雑魚ホムンクルスはそれに比べるとCG感があります。と言うか、ゾンビもの的な物量による気味悪さはあるものの歩いてるだけなので、襲われる恐怖感がまるでないんですよ。これは全体的にそうなんですが、画作りが明るすぎるせいでしょう。もっと闇を作り込めば迫力はだいぶ変わったと思うんですよね。さらにこの明るめな映像により、キャラの格好がただでさえ「衣装」を着てる感があるのに、さらにコスプレ的な印象が強まってしまう。衣装の色味も原作のカラーリングにこだわらずもっと抑えた方が、その世界に住んでいるという感じが出たんじゃないのかなあ。

あと演出的な面では、シーンの終わりがちょっと間延びするのが非常に気になります。例えばエドとアルのケンカシーンはそれ自体はとても良かったしちょっとウルッとさえしましたが、二人の引いた画だけで終わればいいのに最後に泣きじゃくるウィンリィを大映しにするのが何か野暮ったい。いや本田翼は可愛いけども。他にもそこでアップを入れなくても、とか終盤のワンカットいらないな、というのが多くて、要するにテンポを悪くするカットが目立つのです。冒頭の兄弟のシーンからそれは感じますが、それが全編続く感じ。ついでにドラマ部分はヘタにウェットにしようとせず、もっと整理して上手く繋げることもできたんじゃないかと。要は編集が不味いということで、そのために色々と損をしている感じが残念。

あと原作ファン視点でも言ってしまうと、キャスティングがいまいちハマってない気がするなあ。特に男性陣。エド役の山田涼介からして違和感がありますがこれはまだマシな方で、マスタング役のディーン・フジオカは写真ではいい感じだったけど喋ると何だか落ち着かない気持ちになるし、國村隼の使われ方もそれで終わり?という感じだし、小日向文世はなんか浮いてるし、大泉洋も演技自体はいいんだけどタッカーかと言われれば、うーん……。最も引っ掛かったのは佐藤隆太で、ヒューズはもっとクールであってあんなニヤついた奴では断じてないと思うんですが。あと内山信二は内山信二にしか見えないです。逆に女性陣は、本田翼はツンデレっぷりが可愛いとかホークアイ中佐の蓮佛美沙子のクールさやロス中尉の夏菜もイイ……って個人的な好みじゃねーかと言われればまあそうですね。松雪泰子もラストなどは良かったですよ。ウロボロスのイレズミ……!ってとこで必ずアップになる胸の谷間には「何回映すんだよ」って思いつつもね、拝みましたね。

登場キャラは整理しつつ(スカーもアームストロングもいない)外せないエピソードや台詞は入れ込んでるし、世界観の再現もコミックに近付けようと腐心の後が見られるし、元々のキャラが日本人だった『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』の実写化よりも不利な要素は多いなか、頑張ったとは言えると思うんですよね。編集のキレの悪さを何とかして、もうひとつ何か実写版ならではの要素があれば、という感じです。エンドロール後の逃げるエンヴィに続編製作の思惑も伺えますが……。真理の扉を開くのはなかなか厳しそうです。

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