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2018
01.05

栄光の可能性と当たり前の愛情。『gifted ギフテッド』感想。

Gifted
Gifted / 2017年 アメリカ / 監督:マーク・ウェブ

あらすじ
57×135は?(電卓を探す)



母を亡くした7歳のメアリーと暮らす独身の叔父フランク。しかしメアリーに天才的な才能があることがわかり、フランクの母イブリンは孫に英才教育を施そうとする。メアリーの特別扱いを拒むフランクは母に抵抗、フランクとメアリーの静かな日々が揺らいでいくが……。『(500)日のサマー』『アメイジング・スパイダーマン2』のマーク・ウェブ監督によるヒューマン・ドラマ。

フロリダの小さな町で叔父と姪であるフランクとメアリーは親子のように二人で暮らしています。小生意気ながらキュートなメアリー、船の修理で生計を立てるフランク。二人の関係は上手くいっていますが、メアリーが学校に行くことになり、そこである事実が周囲の知れるところとなります。フランクとメアリーや、お隣さんのロバータとの関係を映す丁寧な描写にほっこりしながらも、本作のキモは「もし子供が特別な才能を持っていたらどうするか?」という、わりと究極な子育ての選択です。普通の生活を送らせるべきと言うフランク、他を犠牲にしても才能を伸ばすべきと言うフランクの母イヴリン。しかしそんな構図のなかで、最も大切なのは当のメアリーの思いであるということをしっかり描くことで、やがて涙を搾り取られる展開へと発展していきます。

フランク役は『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』でおなじみ、と言うかキャプテン・アメリカのクリス・エヴァンス。抑えめの演技でマッチョさとインテリ感を同居させるクリエヴァの存在感が素晴らしいです。そしてメアリー役のマッケナ・グレイスちゃんがおませさんだけど超カワイくて、たまらなく愛しい。二人が絡むシーンがどれもとても良いんですよ。ロバータ役のオクタヴィア・スペンサーの愉快で豪快な感じも良いバランス。そう言えばスペンサーの出演した『ドリーム』でもメアリー同様数学の天才児が描かれてました。ボニー先生役のジェニー・スレイトは『ズートピア』の副市長や『ペット』のギジェット、『レゴバットマン ザ・ムービー』のハーレイ・クインなどの声を当ててる人なんですね。

天才少女を巡って対立する親子のやるせなさがありつつ、メアリーの母の真意に驚き、そして叔父と姪の絆にじんわり。難しい問題に直面する話ではありますが、多くのエピソードの連なりで描く二人の姿に離れがたい家族の暖かさが感じられます。脚本はよく練られており、テンポの早さはさほど感じないのに中だるみせず情感溢れる演出も素晴らしい。とても良かったです。

↓以下、ネタバレ含む。








メアリーを演じるマッケナちゃんがとにかく可愛いです。学校行きたくないという主張をフランクに言い負かされてふくれたり、学校でこんなの皆知ってるわーみたいに眉間にシワ寄せたりする表情。一方でフランクに自作の歌をノリノリで歌ったりロバータと戯れたりするときの子供らしい表情。そんなくるくる変わる表情の豊かさと大人ぶった物言いとのギャップも可愛い。何より周囲を見下しているわけではなく、良いことは良いと認めるフェアさも持っています。工作を壊された子のためにいじめっ子(年上)を流血するほど痛め付けたりもしますが、その壊された子の工作の出来を皆の前で誉めるのには抱き締めたくなりますよ。そしてフランクの言うことをしっかり覚えていて自身の行動に反映するところにも頭のよさが伺えます。

最初は父親かと思うフランクが実は叔父であるというのはほどなく明かされますが、あまりベタベタせずとも姪っ子に目一杯愛情をかけていることが伝わります。子供としてやるべきことはしっかりやらせながらも自分が悪いと思ったらちゃんと謝るし、接し方としてはわりと対等なのがいいですね。「スペシャルな朝食」みたいなユーモアセンスもあります(こじつけとも言う)。それでも子育ての大変さから心ないことを言ってしまうのもわかるというもの。独身男性としてはなおさらでしょう。「5分でいいから自分の時間がほしい」と言ってしまった後の罪悪感などは、幼い子を持つ親としてはわかりすぎますよ……レゴ踏んで「いてーっ」てなるのも子供のいる家あるあるですね。ワイルドな筋肉をたたえながらも物静かで理知的な佇まい、かつては大学で哲学を教えていただけに正しさと言うか真理みたいなものの考え方や伝え方、といったように深みのある人物像にクリエヴァはハマっています。姪っ子の先生との課外授業が見つかるのはね、そりゃ怒るよね、気まずいし。

そんな二人を描くシーンは印象深いものばかりです。自分は望まれない子だったのかと嘆くメアリーに「生まれてきたことを喜ばないわけがない」と産婦人科に連れていって出産に喜ぶ人々を見せるという、言葉では伝えきれないことを教えるシーンには説得力があって泣けます。夕陽をバックにメアリーがフランクの肩の上で戯れるシーンなどはあまりに美しくて優しくて泣けてきます。あと片目の猫ブレッドは途中で姿を消したりと進行上も重要な役割を担いますが、この片目であるというのがある意味普通ではない点でメアリーと通じるものがあり、そんな猫が自由に歩き回る姿が自分らしくあれとメアリーに示しているかのようでもあります。

しかし「ずっと一緒だ」と言うのが伏線であろうという予想通り、メアリーに特別な教育をさせようという母のイヴリンによって養育権を巡る裁判沙汰にまで発展し、二人は離ればなれに。そのためイヴリンはフランクとメアリーを引き離す悪者のようにも思えますが、類いまれな能力は伸ばしてあげるべきという彼女の言い分にも一理あって、決して「普通が一番」みたいな一面的な描き方をしてはいないんですね。ただしそこにはイヴリンが自身の諦めた夢を追わせるというエゴがあるため、メアリーのことを考えた末によそに預けるフランクとの差異として表れてきます。他方でロバータさんはメアリーの幸せのことだけを考えて行動します。彼女の言動は厳しい言い方をすれば他人だからできることなわけですが、逆に家族だから言えないことを言えるし、友人としてメアリーに接するからこそメアリーのことを第一に考えられるのでしょう。

自身と娘が到達できなかった高みへ孫を行かせたいというイヴリンの望みは、実は娘が既に叶えていたことでクリアできてしまいます。しかしそれは同時に自分が母の代替とされたことへの復讐でもありました。特別に扱うべきか、普通に暮らすべきか。それは結局のところ妥協点を見つけるしかなく、その点本作では大人に混じっての勉強と子供らしい遊びというベストな選択がなされます。でもそれ以上にフランクが言う「明るく優しく育ってくれて、自分の育て方は間違っていなかった」という台詞、これこそが親が肝に命じるべき子育ての指針と言えるでしょう。そして親もまた子供と一緒に幸せであるべきという帰結。原題の『gifted』は「特別な才能を与えられた者」という意味で使われますが、フランクにとってはメアリーこそが「gifted」、特別な贈り物なわけですね。

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