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2017
12.16

いつか熱くなるものを。『探偵はBARにいる3』感想。

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2017年 日本 / 監督:吉田照幸

あらすじ
ウニイクラ丼じゃあしょうがない。



札幌の歓楽街ススキノを拠点とする探偵のもとに、相棒の高田が珍しく依頼を持ち込んでくる。失踪した女子大生の麗子を探すというその依頼の調査を進める探偵たちだったが、とあるモデル事務所のオーナーであるマリに出会ったことで予想外の事件に巻き込まれていく……。東直己の『ススキノ探偵シリーズ』を大泉洋と松田龍平の共演で実写化したシリーズ第3弾。監督は『疾風ロンド』の吉田照幸。

前作『探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点』から4年、あの探偵と高田が帰ってきた!というわけで、おなじみ冬のススキノの風景と懐かしささえ感じるいなたさのなか、ススキノの裏まで知り尽くした探偵(本名は謎)と、大学助手という意外な一面(本業だけど)を持つ高田のコンビがまたまた難事件に挑みます。今回の依頼は高田が連れてきた後輩の行方知れずの彼女・麗子を探すという何てことはないもの。しかしここから裏社会の大物たちをも巻き込んでいく予想外の展開に。テンポのよい演出で引き込み、主演二人の掛け合いで笑わせ、なおかつハードボイルドで魅せる。ミステリーとしても中盤からツイストを効かせて最後まで引き付けられるし、地元密着型ドラマとしても愉快。前作までを観てなくても楽しめます。

何より探偵役である大泉洋が良くて、コミカルさを保ちながらシリアスもできる、という大泉洋の存在感が存分に活かされているのがこのシリーズ最大の魅力。そして一歩引いた立ち位置なのにときに探偵より大活躍する、高田役の松田龍平がもつ独特な雰囲気。この二人のバディ感がとにかく最高で、今回は特にそれが強調されています。しかも戦えば敵なしの高田がシリーズ最強の敵によりピンチを迎えるというスリルまで。ほか、ゴージャスに現れる謎の女マリ役の北川景子、天然小悪魔ビッチな麗子役の前田敦子、冷酷非道な大物実業家である北城役のリリー・フランキーなどが登場。田口トモロヲ、マギー、松重豊、篠井英介らも続投、もちろん安藤玉恵の無駄にエロい喫茶店店員は相変わらず最高。ちなみに今まで気付かなかったんですが、脚本はシリーズ全て古沢良太なんですね。

前作の政治絡みな話から一転、街のダークサイドをメインにした物語は最初こそこじんまりしているものの(でもそれも良い)、意外な拡がりを見せていきます。あと食い物がいちいち美味そうなんですよ。焼き肉とか開拓おかきとか、ああ札幌行ってウニイクラ丼食いたい……喫茶モンデに行ってナポリタン食べたい……。ちょっと長いけど実に安定感があってシリーズでも最も満足度が高く、なんとも良質な大人の娯楽作です。あ、エンドロールは最後まで観た方がよいですよ。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭のスケベ教頭を巡る見事な推理ミニコントからして面白いんですが、笑いどころはわりと探偵が酷い目にあうという場合が多いです。尻を刺されまくってその尻を尻名人(婉曲表現)たちが治療したり、「ちょっと聞いただけなのにー」で極寒裸クルーズを食らったり、娘の結婚というめでたい話からドン底に落とす組長とか、サウナで熱波とか、大泉洋のキャラが活かされまくります。と言うか高田だけ無傷の理由が「キャラじゃねーか?」って言っちゃってますからね。SM説教部屋「罵詈雑言」(すげー名前だな)から帰ったあとのすっかりブタ化した探偵には一番笑ったかも。もうね、「はめられたのか、はめたのか」とか下ネタも酷いですね(ホメてる)。胸をもまれる田口トモロヲとかね、酷いです(ホメてる)。喫茶モンデはエロすぎです(もちろんホメてる)。

ブタ化のシーンもそうですが、説明台詞であまり語らず映像や省略で見せる演出が結構良いです。麗子が「犯人は背が高かった」と言うけど映像ではトラックの中が見えるほど背が高くないというのを見せているし(ついでに麗子の天然の小悪魔っぷりも)、クライマックスで金を受け取るマギーは自席から消えてるというカットがちゃんとあるし、少女の誕生日が出産予定日と同じなことも映像で示しています。フェアですね。ただそれらのあとで結局台詞で説明を足すところもあるのが余計な気もしますが、さりげない親切というレベルなのでまあいいですかね。またモデル事務所に入ったときに外から聞こえる風の音が聞こえて不穏さを煽ったりといった演出なども面白い。日ハム監督に札幌市長まで出てくる札幌推しはご愛敬。

ミステリーとしては「靴の大きさのわりに歩幅が小さい」の段階で犯人の予想がつくのでそこまでビックリ仰天というわけではないですが、そこから後に捻りがあります。マリの金の目的や探偵が巻き込まれて以降の作戦なども先が読めないし、「自分の子ですらない」という悲しみが際立つ話の展開にも引き込まれます。中盤で謎の中心だった犯人がわかってしまうためそこからちょっと長さを感じますが、まあしょうがない。ただ、探偵がマンションを張っててマリに再会した時にマリが急に親しげだったり、観覧車の後に仲良く飲み歩きというのは唐突な気もします。拉致から逃げたあとにバレてるヤサにまた戻るのも危ないだろうと思うし。あと個人的には北川景子が悪くはないけどいまいちハマってないなあとか、またリリーさんか!みたいなのはありますが、そこはまあ好みでしょうね。

今作は探偵と高田のバディものとしても実に良いです。大泉洋の笑わせつつも締めるところは自然に締める雰囲気、松田龍平のぶっきらぼうな感じと腕っぷしの強さ。コミカルだけどハードボイルドな作品世界も含め、『あぶない刑事』を思い出しますよ。高田は今回かなり出番増。最初は吹っ飛ばされて探偵の横にズサー×2、とか可笑しいですが、ちょっと手を合わせてすぐに「勝てない」と悟るのが強者って感じがあります。リリーさんに捕まったのを助けに来るときのキター!感はアガるし、全員分のコーヒー作らせて人数を把握するという機転も。あの厚そうな上着を着たまま戦うとか、戦ってるときの「オゥ」とか「トォ」とかの棒読み感が高田っぽいです。終盤は鍛え直してまで挑んだのに負けてしまうのか?と思わせて、ズボン下ろして勝利って……相手のペースを崩して勝つというマイペースな高田の真骨頂が最高。

探偵がマリに言った「いつか熱くなるものを見つける」という言葉は、鈴木砂羽との思い出話、マリと再会したあと、ラストの病院をあとにした一人の時、と何度も繰り返されます。それは気軽に諭そうとした程度の言葉ですが、それまで死んだように生きてきたマリをどれほど勇気付けたかというのは、最後に見せる「私、見つけたよ」の笑顔に凝縮されています。マリの「熱くなるもの」は図らずも探偵が言ったように「他の者にはわからない」ようなことですが、それでもかつて路地裏で死にかけてたのと同じような姿で檻の中に座りながら、表情は穏やかなマリ。犯した罪は許されることではないし、歪んだ捉え方ではあるのでしょうが、何気ない出会いと何気ない言葉が人の心を救うことがある、というのが心に響きます。

そして何気なく一緒に行動していた高田がニュージーランドへ行ってしまうという別れが、物悲しさに輪をかけます。別れ際の言葉が「寒いな」「札幌だからな」というごく普通のやり取りなのが、陳腐な別れの言葉で表せない二人の関係を思わせてせつない。思わず振り返る探偵と、振り返らず去っていく高田。ああ、ハードボイルド……さらば、高田……と思ったら、エンドロール後のあれですよ!「2メートルある」じゃないよ!探偵が「餞別返せ」となるのもしょうがないですが、しかしこれでまた続編が観れる可能性が上がったことは素直に喜ばしい。何年かおきに冬の風物詩として続いて欲しいシリーズです。

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