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2017
12.12

共有と拡散の牢獄。『ザ・サークル』感想。

The_Circle
The Circle / 2017年 アメリカ / 監督:ジェームズ・ポンソルト

あらすじ
シェアはケア。



巨大SNS企業「サークル」に採用された新入社員のメイは、とあるきっかけでカリスマ経営者ベイリーに目をかけられ、超小型カメラを使ったサークルの新サービス「シーチェンジ」のモデルケースに抜擢される。自身の生活を24時間公開し、膨大なフォロワーを集めて人気者となったメイだったが……。エマ・ワトソン、トム・ハンクス共演による、SNSを題材にしたサスペンス。

今や当たり前のように生活に浸透しているSNS、そこに潜む怖さというものを描いたある種の社会派サスペンスです。友人のアニーのつてで超巨大企業「サークル」へと転職したメイ。サークルはTwitterやFacebookなどにGoogleのサービスまでを統合したようなひとつのアカウントでなんでも出来るというSNSで、若者たちの憧れの企業です。メイも喜んで面接を受けて入社、自由すぎる社風に面くらったりしますが、ある事件をきっかけに小型カメラで24時間自身の生活を配信するモニターをやることに。ネットやSNSという題材は『ディスコネクト』『ピエロがお前を嘲笑う』『NERVE ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』など色んなバリエーションが増えてきましたが、本作はもっとオープンな世界であるSNS、その最大の特徴である「シェア」をメインに据えています。「いいね」が付くとガンガン拡散されていき、フォロワーの期待がさらに自身の切り売りを求めてくる、そんな半ば強要されるシェアや一種宗教的でさえある集団心理など、現代のネットに感じる気持ち悪さが詰め込まれてます。

主人公メイ役は『ハリー・ポッター』シリーズや『美女と野獣』のエマ・ワトソンで、抗えないうねりに翻弄されながら奮闘する女性の姿を演じます。またサークルの共同経営者にして時代のカリスマ、ベイリー役を『ブリッジ・オブ・スパイ』『ハドソン川の奇跡』のトム・ハンクス。ちょっとジョブズっぽい出で立ちですが、やっぱりトム・ハンクスに自信満々に言われると納得しちゃうんですよ、それが怖かったり。メイの友人アニー役に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のネビュラことカレン・ギラン、素顔もいいですねー!ほか、謎の男タイ役に『スター・ウォーズ フォースの覚醒』のジョン・ボイエガ、マーサー役に『6才のボクが、大人になるまで。』のエラー・コルトレーンらが共演。また、メイの父役は2017年2月に亡くなった『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などのビル・パクストン。これが遺作でしょうかね。とても良い演技を見せてくれました。

正直デフォルメしすぎという気がしなくもないし、色々と引っ掛かる点も多いけど、それでもこれはすぐそこにあるスリラーであり、現代の最もありえるディストピアであると言えるでしょう。そういう意味ではイヤな話ですが、止められない流れのなかで新たな道を示していく話でもあります。あとサークル社の「C」を型取ったロゴマークが、ちょっとドラえもんの鈴に似てる気が……。

↓以下、ネタバレ含む。








自由な社風に広大な敷地、社員が思い思いに好きなことをし、プロフは共有されあらゆるコミュニケーションが可能と、サークル社は実にエキサイティングで常識破りで、若者には魅力的に映るんでしょう。ただそれは悪く言えば常識外れでもあるし、公私の境が曖昧になってプライバシーの欠如も招きます。自由に楽しくやってるように見えてもトラブルが起これば当然のように時間など関係なく呼び出される。僕はこんな会社はかえって窮屈で行きたくないと思うんですが、コミュニケーション大好きで苦にならない人には理想的な職場なんでしょうかね。しかし共有、オープン化を謳い、社員が口を揃えて「シェアはケア」と言うのは、自由どころか画一的な思想の押し付けにも思えてゾッとします。

シーチェンジの発表は歓迎をもって迎えられます。トム・ハンクスのベイリーによる海の風景からのプレゼン力、犯罪を防ぎ飢餓を救うという耳触りのよい言葉で何となく信用させてしまうんですね。しかしいつでもどこでも見れるということは、同時に見られることでもあるわけで、メイの24時間配信は彼女の行動全てをさらけ出し、あろうことか両親のベッドシーンまで映してしまうという悲劇を呼びます。トイレのときはカメラが3分間切れるって言うけど腹下ってるときはどうするんだろう……とにかくプライバシーの欠如はエスカレートしていきます。そしてシーチェンジを使って犯罪者を炙り出すソウルサーチ、多くの目とその共有が可能だからできるわけですが、その効果に当てられた者たちによってメイの幼なじみであるマーサーは命を落とします。普段は世界中の他人になど興味がなくても、クローズアップされる人がいればそれを目にした人には「他人」とは違う存在になるのでしょう。そこに集団心理の恐ろしさが加わることで予想外の展開を見せていくのが面白いです(極端ですが)。

そんな怖さはよく表れているとは思いますが、若干展開が無理やりなところも。「ちょっとやりすぎ」と、どちらかと言えばサークル社に懐疑的と思われたメイが、重要会議でいきなりサークル義務化をブチあげるというのは、カヤック事故で救われたとか両親の保険があるとかがあっても唐突感が強いし、両親を傷付けておきながらやめないどころかソウルサーチを提唱、挙げ句マーサーを死に追いやるとか、浅はかすぎるキャラがどうも本来の人物設定と合ってない気がします。「何が怖いか」と聞かれて「自分の能力を活かせないこと」と答える向上心や野心がそうさせたとも見れますけどね。エマ・ワトソンの話しながら途中で軽く笑う話し方も気に障るんですが、あれ演出なのかな?あとマーサーの死はドローンによる視界遮りが原因だとシェアした映像でわかるんだから警察が動かないのはさすがにおかしいし、舞台上のメイを見たアニーが急に不愉快そうな顔になって妬み始めるのは何の前フリもなくていきなりすぎます。ジョン・ボイエガ演じるタイも、元々ベイリーを告発したいと思っていたのか何なのか、立ち位置が微妙。語り方にもう少し滑らかさがほしかったです。

名前も顔も住所も全て晒し、何かやるとすぐにスマホで撮影され、秘密は嘘と称して暴露され、投票率100%というお題目であらゆる個人データが収集される。そんな管理社会の始まりを描く話かと思いきや、物語はあくまで「シェア」に焦点を当て、ベイリーらの不正を暴きメイの逆転劇として終わります。秘密をも全て共有することの怖さを身をもって知ったはずのメイが結局同じ手段を使うのか、とも思いますが、公開し拡散されたものはもう元には戻らない、ということもわかっているのでしょう。既に1000万人を超える人に人生を「シェア」してしまったメイにはそうするしかなかったのだとも言えます。最後に無数のスマホの光で暗い会場内を照らし、「もう闇はない」とドアを開けて出ていくメイ。その先にある光は開けた希望なのか、それとも全てを晒けだす審判の光なのか。……まああれだ、SNSはルールを守って楽しくやりましょうねー。

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