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2017
12.11

奪うのは幸運。『ローガン・ラッキー』感想。

Logan_Lucky
Logan Lucky / 2017年 アメリカ / 監督:スティーヴン・ソダーバーグ

あらすじ
ゆで卵は自販機で売ってます。



不自由な足のために仕事を失ったジミー・ローガンは、戦争で片腕を失った元軍人のバーテンダーである弟クライドと、まもなく開催されるカーレースの売上金を盗み出すという計画を立てる。仲間を必要としたジミーは、服役中で爆破のプロ、ジョー・バングに協力を求めるが……。スティーヴン・ソダーバーグ監督によるクライム・ストーリー。

2013年の『サイド・エフェクト』以来テレビドラマに活動を移していたソダーバーグが、再び劇場映画の監督に復帰した本作。不運に付きまとわれている、と自他共に認めるジミー・ローガンは、仕事はクビになり、別れた妻と娘は現夫の仕事の都合で隣の州へ引っ越してしまう、と不運続き。途方にくれたジミーは、弟のクライド、妹のメリーと共に、アメリカ最大のモーターカーイベント、NASCARレースの売上金を狙うという一攫千金の計画を立てます。いわゆるケイパーものなんですが、いやこれ面白い。誰がどういう役回りか作戦の全容が見えないまま話が進んでいき、少しずつ行動の意味がわかってくるのが楽しいのです。テンポのよい演出とオフビートな笑い、マヌケなのに意外性のある脚本。ソダーバーグ作品のなかで一番可笑しいです。

キャスティングのハマり具合はかなり良いです。ジミー・ローガン役は『フォックスキャッチャー』『マジック・マイクXXL』のチャニング・テイタム、弟のクライド役は『スター・ウォーズ フォースの覚醒』『パターソン』のアダム・ドライバー。この肉体派の兄とおとなしい弟の、付かず離れずながら兄弟ならではの信頼感を感じさせる距離感が心地いい。妹メリー役のライリー・キーオは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のケイパブルですよ。ずいぶん印象違うんで気付きませんでした。そして爆弾のプロ、ジョー・バング役は『007 スペクター』ジェームズ・ボンドことダニエル・クレイグ。ほか『テッド2』のセス・マクファーレン、『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』のセバスチャン・スタン、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のキャサリン・ウォーターストンなども出演。

脚本は新人レベッカ・ブラウンのオリジナルだそうで、よく練られた脚本をソダーバーグが職人技で見事な娯楽作に仕上げています。綱渡りのようでいて至るところに伏線が張られ、存外に壮大な作戦なのがわかったときの快感。不運が付きまとう片田舎の兄弟が、アメリカという国を皮肉りながら迎える着地の、実に心地良いバランス。それにまさかこんな爽やかに泣かされるとは。同じ強盗団ものでも同監督作の『オーシャンズ11』とはずいぶんと違う雰囲気。爽やかで愉快です。

↓以下、ネタバレ含む。








「カリフラワー」から始まる強奪計画、最初は田舎の素人が思い付きでやってるようにしか見えないし、仲間にする奴らもどこか抜けてる感じなので非常に心配になるんですが(しかも「カリフラワー」はかつて失敗した作戦なのでは……)、しかしこれが予想以上にしっかり練られた計画なのがわかってきます。そもそもはジミーが仕事していた現場で金を送るシューターが露になっていることから思い付くわけですが、そこからバレないように金を奪うには?吸引機で吸い出せばよい、どうやれば吸い出せるか?シューターの出口を爆弾で破壊すればよい、どうやって爆破する?プロを雇えばよい、という感じで必要な手順をしっかり考え、細かいところまで手を回して遂行していきます。その全容をあえて見せないことで観てる方としてもスリリングで、実に面白い。

特に刑務所まわりは愉快。服役中であるジョーを一時的に脱獄させるためクライドがわざと刑務所に入る、というのは大胆だし、クライドは武勲があるので刑も軽いというのも踏まえてるし、計画遂行後はちゃんと刑務所に戻すことでその後に追われることがないようにもしてます。脱獄がバレないよう他の囚人も巻き込んで「人気作家の新作が読めない」というスゴい理由で立てこもらせるのは可笑しいし、ボヤ騒ぎのどさくさで戻らせるのもナイス。あとはV8の青い車で飛ばすときパトカーに紫夫人を捕まえさせて目撃されても大丈夫なようにするとか、煙が出て怪しまれても大丈夫なようにもう一人バーの常連を雇うとかも愉快。Gを使った「コード・ピンク」にはうへえとなりますが。

たまたま上手くいった、みたいなところもあるのはちょっと気になりますけどね。刑務所所長がことなかれ主義だから外に情報が漏れなかったわけだし、セバスチャン・スタン演じるレーサーのデイトンがセス・マクファーレン演じるマックスと仲が悪いからジミーたちのことを証言しなかったり、といったところはあぶなげで若干結果オーライですが、作品の緩さと合ってるとは言えます。キャラも結構マヌケで、ジョーの弟たちが「俺たちは倫理で動く」とか言ってたのがメリーのハラスメントに怒って仲間入りするのとか、ジョー・バングもプロだけどなんとなく適当な感じや「爆弾は科学だ」と化学式を書き始めるのも面白い。ダニエル・クレイグ良いですねー。それでいて減塩もグミも伏線というのが唸ります。ただ、吸い込まれた義手はホースの途中で引っ掛かってたのかな?そこがちょっとわかりにくかったです。

全体的に緩さはありますが、その実ローガン兄弟はアメリカを体現する人物でもあります。かつてのアメフトスターで今は田舎でくすぶるジミー。戦争で片腕を失い今はしがないバーテンとして働くクライド。かつてのアメリカにあった勢いも今は衰えた、というのを示していると見れます。そんな兄弟が立ち向かうのが、アメリカ国旗が翻りアメリカ国歌を斉唱する最もアメリカを称えるデカいレース、しかも傷痍軍人の日、というのが象徴的。栄光を取り戻すためではなく、栄光の影に隠れた人々に光を当てるため、この計画は練られたと言ってもいいでしょう。倫理を重視するジョーの弟たちも、アメリカが失った正統性の一部なのかもしれません。それにジミーの娘ちゃんが歌う『カントリー・ロード』、父のために歌うこの曲はそれこそ故郷である片田舎の美しさを歌ったものであり、それを観客もいっしょに歌うことが肥大したアメリカのエゴとは異なるそこに暮らす人々の存在を前面に押し出します。まあそんな小難しいことを考えなくても、パパ大好きな娘ちゃんの思いに爆泣きですけどね。

しかし上手くいったかに思えた現金強奪計画も、ジミーが金を匿名で返してしまう、という意外性を見せます(「オーシャンズ・セブンイレブン」とか言ってて笑いますが)。ジョーは怒り狂いますが、しかし取り分はしっかり配分されます。これがこの作戦の最も賢いところなわけで、莫大な売上金を奪えば一生追われることになるところを、全体からみれば些細な分量だけいただいて後は返すことでそこまで追求されないことを見越したわけですね。実際レースの責任者は損失を保険で賄って捜査依頼を取り下げ、携帯会社が追跡を打ち切る半年後まで支払いをやめることで追えないようにする。しかもジョーだけでなく刑務所の協力者や金庫番の女性にまで分け前を配り、クライドには新しい義手を送り(それこそスター・ウォーズっぽいやつ)、予防接種をしてくれたシルヴィアにまでお礼を渡す。世話になった人や迷惑かけた人にちゃんと返すことで後腐れまでなくすんですね。ジョーたちに対してはちょっと騙した感じにはなりますが、結果で納得させるわけです。

思えば計画の全容は明かされないのに「犯行のための10ヶ条」は繰り返しクローズアップされます。そして予備の計画、欲張らない、引き際を見極めるといったところがキッチリ実行されていて、これがポイントになっています。結果、「誰も傷付かない」犯行が成功するわけです。そしてジミーはシルヴィアといい感じ、ジョーとも再会し、皆でビールを飲む、この打ち上げ感が実にハッピー。そうしてローガン家の呪いもついに解消と思われた矢先、バーにやって来るのがヒラリー・スワンク演じるFBIの女!しかし彼女は捜査中には見せなかった満面の笑顔なので、どんな奴らが成し遂げたのか見てやろうくらいの感じなんじゃないかな?そう思ったほうが楽しいですね。

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