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2017
11.20

罪の自覚に必要な血。『ジグソウ:ソウ・レガシー』感想。

Jigsaw
Jigsaw / 2017年 アメリカ / 監督:マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ

あらすじ
ビリー人形「レッツ・サイクリング!」



目が覚めるとどこかの密室に鎖で繋がれていた男女5人は、罪の告白を強要され、生存をかけたゲームへの参加を余儀なくされる。一方で刑事のハロランと検視官のローガンは、発見された無残な死体を検証し、そこに10年前に死んだはずのジグソウの手口を感じとる……。サイコ・スリラー『ソウ』シリーズの7年ぶりとなる第8作。

殺人鬼ジグソウによって密室に閉じ込められた人々の生存をかけたゲームをグロ描写を交えて描くソリッド・シチュエーション・スリラー『ソウ』シリーズに、よもやの新作登場。閉じ込められた数人の男女と謎を追う警察とが交互に描かれるという構成、手作りの残虐な装置、「誰が」「何のために」という謎解き要素と、シリーズを踏襲したお約束がしっかりありつつ、『デイブレイカー』『プリデスティネーション』のスピエリッグ兄弟らしいテンポとキレと伏線の数々。シリーズは4作目までしか観てないんですが、残虐度は低い方ですかね。その代わり1作目並のミステリー展開がたまりません。一周回って新鮮な感じがあります。

死体に埋め込まれていたUSBメモリを確認すると響き渡る「ゲームは始まった」というジグソウの声。この声に翻弄されるのがマット・パスモア演じる検死官ローガン、そして『天才スピヴェット』カラム・キース・レニー演じる刑事のハロラン。ジグソウことジョン・クレイマーは3作目で死んだはずなのに、新たな後継者が現れたのか、あるいはジョンが生きていたのか?という謎に翻弄されつつ、何かがおかしいという違和感が常に付きまといます。ちなみに脚本は『ピラニア3D』のコンビだそうで、なかなか凝った仕掛けが用意されています。残虐度が低いのも実は理由があるんですね。

2004の1作目から13年間、様々な殺し方で続いてきたシリーズの集大成的な出来。タイトルに初めて『ジグソウ』の名を冠したのも意味があると言えるでしょう。シリーズ初見や、1作目しか観てない人にはわかりにくい部分もありますが、それでもスピード感がスリルに繋がっている面白さは味わえると思います。

↓以下、ネタバレ含む。








序盤の5人、目覚めたらバケツ被って鎖に繋がれている、からの次々襲いくる仕掛けは実にスリリング。血を流すこと前提なので痛々しいし、ギリギリのところでかわしつつも一人また一人と減っていくことで恐怖が増幅します。上から刃物を落とすというのはさすがにちょっと雑ですが、時間制限のあるなかで自らの足切断を迫られたりするのはエグいし、デカいミキサーみたいなのを何とか止めた!と思ったらむっちゃパワフルなエンジンでまた動き出すとか絶望的。最後に撃つべきか、という対峙はラストと対になってますね。それにしてもこのシリーズ、どうやって罪人たちを見つけてくるのかは相変わらず謎です。赤ん坊を殺したのが実は妻だったとか何でわかるんだ……。まあ真相の疑わしい事件を裏で色々調べてる、ということなんでしょうね。

ちょっとずつ何かおかしいな、というのはあるんですよ。一人目の死体がバケツ被ってたのに頭スパッと切られてたりとか、二人目の顔があんなに溶けてたっけ?とか、三人目があんなにずるむけだったっけ?とか。トビン・ベル演じるジグソウ本人が顔を出したときにはさすがに驚きましたが、実は10年前の事件と現在とが交互に描かれていたわけで、映像的な叙述トリックだったわけです。過去の殺戮描写をハッキリ見せなかったり、現在の死体状況と少し異なったりするのもそれが理由であり、ゲーム自体は過去をなぞったもので死体は別人のものだったわけですね。思えばローガンが巨大ミキサーを見て「この装置での傷の死体は見つかってない」と詳しいのも気にはなってたし、一度ジグソウが犯人だと思わせたり墓に死体がなかったりすることでローガンから疑いの目をそらすような作りなってるんですね。

制限時間を示したり、ローガンの助手エレノアがジグソウ信奉者であることでミスリードしたり、冒頭の男をハロランが撃ったように見せかけたり、エレノアや同僚刑事にもハロランがジグソウだと思わせたりして、物語の構成とローガンの周到さによりまんまと騙されます。正直ひょっとしたらローガンがジグソウの協力者なのかな、くらいは予想がつきますが、4作目でがっつり解剖されてたジグソウが甦る説明がつかないし。見つかってない死体もあると言うし、片足を失った男の死体が放置されてもいるので、10年前の事件は表沙汰になってないということなんでしょう。最後が種明かしの嵐でやたら台詞が多いのはちょっとくどかったり、ローガンがジグソウに救われて行動を共にするようになるくだりは少々納得いかないですが、最初に検視でバケツをスパッと切るレーザーが最後に出てきたりとヒントは一応あるんですね。

ローガンの動機が妻の仇討ちであるというのは、死の恐怖を見せることで命の大切さを思い知らせるというジグソウの理念と反してる気もしますが、最後にローガン側のボタンを押すハロランのクソ野郎っぷりでバランス取ってるかな、とは思います。ハロランが見上げた天井の方はレーザーで焦げてる、という描写にアレッ?と思ったところで……というのは「やってくれたぜ!」感があるんですが、もう少し見せ方に工夫があってもよかった気も。でもそこを含め、過去作を想起させる細かいオマージュが随所に見られるので楽しいです(過去の殺戮道具展示会にはちょっと笑う)。何より思ったより控えめだなーと思っていたエグさを、最後にとんでもない形で見せてくれるのには仰天。パックリきれいに割れた惨殺シーンは、幾何学的で美しささえ感じるほど(冷静に見ると超グロいんだけど)。

エンディングへ繋がる「俺は死者たちの代弁者だ」で扉バーン!のローガンには、ジグソウの遺産を受け継ぎながらも独自の方向性、つまり「言われなき死を被った者たちの恨みを晴らす」という仕事人のような赴きがあります。ジグソウの冷徹さとは逆の烈火のようなその姿勢は、後継者というよりも「新たなジグソウ」の誕生と言ったほうが似つかわしいでしょう。だからタイトルもナンバリングではなく、ズバリ『ジグソウ』なのかもしれません。

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