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2017
11.18

七人の私と一人の私たち。『セブン・シスターズ』感想。

What_Happened_to_Monday
What Happened to Monday? / 2016年 イギリス、アメリカ、フランス、ベルギー / 監督:トミー・ウィルコラ

あらすじ
テュリャテュリャテュリャ テュ~リャ~リャ~♪



2073年、人口増加による食糧不足のため、政府が発した厳格な一人っ子政策。そんな世界で生まれた7つ子の姉妹は、政府にバレないよう週に一人一日ずつ外出、共通の人格を演じて生きていた。しかしある日七人のうちの一人が帰宅しなかったことから、姉妹の日常が狂い始める……というSFサスペンス。監督は『ヘンゼル&グレーテル』のトニー・ウィルコラ。

食料不足を解決するために遺伝子組換え食料が開発されたものの、その副作用として双子三つ子といった多生児が生まれるようになった近未来。人口増加を防ぐための一人っ子政策「児童分配法」は、二人目以降の子供は親から引き離され、食料問題が解決するまで冷凍保存されるというもの。そんなある種の恐怖政治下で、七つ子であることを30年隠し通す姉妹を描きます。設定からして興味深いディストピアSFなんですが、これが面白い!「月曜(Monday)」から「日曜(Sunday)」まで曜日の名前をもつ七つ子が、週に一度自分の名前の曜日だけ外出、カレン・セットマンという共通の人格を演じます。徹底した秘密保持と情報共有で銀行員としての仕事も上手くいっているなか、突然「月曜」が帰ってこないという事態が発生し、そこから頭脳と肉体を駆使した姉妹のサバイバルが始まります。

七つ子役は『プロメテウス』『パッション』のノオミ・ラパス。野心家、ヒッピー、肉体派、クール、頭脳派、セクシー、優等生と、見事に個性のバラバラな姉妹を一人七役演じているのがスゴいです。まさに熱演。それでいてノオミ・ラパスだらけとは感じないんですね。髪型やファッションもさることながら、話し方や佇まいも異なるので見分けも付きやすく、かつ外に出るときは外見も統一した一人の人間として振る舞う、というのが意味を持ってきます。また七つ子の祖父役として『ジョン・ウィック』のウィレム・デフォーがいい味出してるし、『ディストピア パンドラの少女』でも管理側の役だったグレン・クローズがケイマン役として七つ子を追い詰めていきます。

七人の役割分担の妙や入れ替わりを上手く使った展開が上手くて、全く飽きないです。これは『おそ松さん』より大変だ。七人それぞれの関係性や本音がありつつ、それでも共に生きようとする姿を丁寧に描くのが良いし、壮絶な少女時代とウィレム・デフォーの愛ゆえの決断には泣けます。名前が曜日というのもイイし、サスペンスもアクションも抜群。いやこれは思わぬ拾い物。面白いぞ。

↓以下、ネタバレ含む。








個性豊かな七つ子は性格も異なり得意分野も変えることで差別化を図っています。同じ環境で育ってそこまで違うものだろうかとも思いますが、そこはキャラ立てができてると見るべきでしょう。母性高めの日曜がなんとなくまとめ役で、仕事のことで頭が一杯の月曜と跳ねっ返りの木曜がケンカし、弱気な火曜はマリファナ吸って怒られ、体を鍛えるのが趣味の水曜は筋トレに余念がない。エンジニアの金曜はコンピュータの画面に張り付き、男自慢の土曜がしなを作る。これを演じわけるノオミ・ラパスの恐ろしさですよ。メイクはあるにしろ目付きまで違うのがスゴい。しかしこれが外に出るときは皆が同じ髪型、同じメイクで「カレン」となるわけです。帰ったらその日あったことを映像で確認して記憶を同期し、翌日は別の者が出社する。自分の曜日以外はずっと家にいるわけで、よく30年も暮らしてきたなと思うわけですが、それが限界に達したからこそ今回の事件が起こったわけですね。

おそらく祖父が存命の頃から同じ家で30年、バレなかったのが奇跡的ですが、七つ子が一人の人格でいることを徹底できるというのは「指切り」という壮絶なエピソードに説得力があるので受け入れられますね。祖父が孫娘たちのために心を鬼にする姿も効いています。祖父の行為はかえって七つ子たちに苦境を強いているのでは、という視点はしっかりケイマンに言わせていたり、ちょっとしたことで怪しまれかねない、というのをマンションの管理人との会話で表してたりして、色々とフェアなのが好印象。また七つ子ならではのトリック、たとえば火曜がウィッグを付けたままだったために月曜と勘違いするとか、そのウィッグをそのまま利用して木曜が潜入するなどは上手いし、月曜と木曜が争った後に戻ってきたのがどちらかわからないというのも面白いです。

また、設定を活かせる突飛すぎない程度の近未来感がいい塩梅です。鏡台に内蔵された体調から肌の張りまでチェックする診断装置とか、『PSYCHO-PASS サイコパス』みたいな指紋認証の銃などのガジェットの数々、ちょっと風変わりな建物など。あと展開が色々と上手いんですよ。会社のライバルの言う秘密が思ってたのと違うというミスリードで、それでいて謎に迫る手掛かりになってるとか、いかにも管理社会的な検問所があったりしますが、そこで働く男と恋仲になることが切っ掛けの一つであったりとか。水曜が欠けた人差し指のところに敵の切り取った指をくっつけて、それで認証させて撃つというスリルに繋げてるのも(手に持たせて撃てばいい気もしますが)面白い。水曜は逃亡シーンで電話で逃げ道を誘導されていくのが『マトリックス』ぽくてニヤリとします。男慣れしてると思ったら真逆だった土曜が、ことが終わった後はまんざらでもなさそうだったりして、でも直後に悲しい最期を迎えるのもせつない。

一人分の稼ぎで七人の生活をまかなうのはさすがに厳しくない?とも思うし(体調崩すような安い食材を買ったりとかはしてるようですが)、ケイマンが「30年見逃していたことを責められかねない」とか言ってて、イヤ街中で無関係の人を殺しまくる方が責められるだろうとも思うし、どうすればスケボーで指を切断するのかはよくわからないしと、気になる点はあります。網膜認証のために目ん玉くり抜くのはさすがにエグさ優先なのが見えるし、実は冷凍睡眠ではないとか黒幕の正体なども途中で何となく予想はできるでしょう。それでも細部まで練られた作りには感心するし、エモーショナルなシーンには揺さぶられるしで、多少の引っ掛かりは気にならない作品の強度があります。

自分には逃げきる能力がないと悟って、家族の写真をアップロードしつつ木曜を逃がす囮となる金曜。序盤で月曜と木曜が口論するシーンがあっての、ラストで月曜に謝る木曜。隠し通す生活に疲れて家族を裏切ったものの、最後に「皆の手本になれ」という祖父の言葉とその涙を思い出して散っていく月曜。そんな七つ子が物悲しく、それでも姉妹の思いを背負って「カレン」を名乗る決意をする木曜が健気です。そして無事に救われた月曜の双子が、悪法を打ち負かした希望の象徴として映る……かと思わせて、ケイマンが最後に言った「未来はない」を裏付けるかのように、引いた画面に映るとんでもない数の赤子たち。この不穏さを残した幕切れがディストピア感があってまた良いです。

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