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2017
11.02

流されて成金飛行士。『バリー・シール アメリカをはめた男』感想。

American_Made
American Made / 2017年 アメリカ / 監督:ダグ・リーマン

あらすじ
お金はちゃんとしまいましょう。



1970年代、民間の航空会社に務める優秀なパイロット、バリー・シールは、ある日CIAのエージェントにスカウトされ偵察機のパイロットとして極秘作戦に参加することに。しかしその過程でコロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルと知り合い、麻薬の運び屋としても才能を発揮する。荒稼ぎをするバリーだったが、やがて大変な危機に直面し……。実在した人物バリー・シールをトム・クルーズ主演で描くクライム・ストーリー。

トム・クルーズが『オール・ユー・ニード・イズ・キル』に続いて監督ダグ・リーマンと組んで作ったのは、バリー・シールという一人のアメリカ人の実話を元にしたドラマです。優秀ながらTWA航空の一介のパイロットにすぎなかったバリーは、キューバの禁製品を運ぶ小遣い稼ぎをしているところをCIAのシェイファーにスカウトされ、CIAエージェント(の手先)に転身。これだけでも意外性があるわけですが、さらに作戦中に出会った男、麻薬王パブロに腕を見込まれて、麻薬の運び屋までやることに。

この相反する二つの秘密、二足のわらじによって終始不穏さがあるんですが、テンポのよさと予想外の方向に転がる話に引き付けられてそこまで重くはならないんですね。むしろ思いもかけない展開に惑わされるトム・クルーズの姿が可笑しい。と同時に、どんどんヤバい方向に話が進んでいくのがスリリング。破天荒で奇妙なバリーの人生が悲劇のようでもありコメディのようでもあって、実に面白いです。

バリー・シール役のトム・クルーズは笑顔がひきつってたり軍隊に乗り込まれてあたふたしたりと、スマートでカッコいい系ではなく『宇宙戦争』などの若干ヘタれ系トムクルですね。同じパイロットでも『トップガン』とはエラい違いですが、でも『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』よりも時々カッコよく見えるときがある気さえします。あやしいスカウトのシェイファー役は『スター・ウォーズ フォースの覚醒』『エクス・マキナ』のドーナル・グリーソンで、滲み出る野心と自信が胡散臭くも存在感。ほか、バリーの妻ルーシー役のサラ・ライト、ルーシーの弟JB役のケイレブ・ランドリー・ジョーンズらが出演。あ、マット・デイモン似の『バトルシップ』ジェシー・プレモンスもシェリフ役で出てました。

バリーは家族思いだし悪人とは言いがたいんですが、CIA、麻薬組織双方にいいように使われながらもリスク承知でしっかり稼ぐのが面白い。金がありすぎて隠すところがないというのが豪気です。背景にはアメリカの思惑と麻薬王の謀略が見え隠れしますが、そんななかで翻弄される一人の男に笑わされ、しんみりさせられます。

↓以下、ネタバレ含む。








バリーは自分でも「勢いで動くのが悪い癖だ」みたいなことを言っているように、わりと流れでやってしまうところが見受けられます。実際はシェイファーには暗に密輸をネタにされて引きずり込まれるし、パブロにはバックの麻薬カルテルによる無言の圧力があったわけで、どちらも半ば強制的ではあるのですが、でも話に乗った後はノリノリなのでそんなに同情心は沸きません。それでいて根が悪人ではない、むしろボンクラで、かつ人当たりもいいので親近感もある。この付かず離れずでありながら観る者を引っ張り続けられるのは、これはもう完全にトム・クルーズの魅力であり、つまりしっかりトム・クルーズ映画でもあるんですよ。

演出的には次々展開する物語をテンポよく繋ぎ、コメディチックなシーンには笑いつつも裏で進行していることは笑えない、という絶妙のバランスを保ったまま軽快に描くのはダグ・リーマンらしいところ。ブツを飛行機から落とす雑さとか、銃を届けるときにトムがバット持って「寄るなーっ」と騒ぐのとか、運び屋業が好調すぎるからと「手が回らないから人を雇った」といういきなりの思い切りのよさとか、DEAのジェットが高速なので飛び過ぎちゃう、などには笑います。金がガレージから溢れて庭にも埋めてそれでも隠しきれず銀行に専用の金庫室まで作るとか、金持ちしかできない飛行機ファックとか、呆れながら笑いますよ。トムが実際に飛行機を操縦しながら撮ったらしい飛行シーンは臨場感も抜群。あとケイレブ・ランドリー・ジョーンズ演じるJBの、出てきた瞬間に「あ、こいつはアカン」と思わせるダメ感は強力。

ドーナル・グリーソン演じるシェイファーはバリーとは逆に人当たり良さそうでいて腹黒いです。IACと紛らわしいダミー会社名を使ったり、そもそもCIAだとはハッキリ明かしてないような……(バリーに「CIAだろ」と言われて否定しないくらい?)。つまり使い捨てる気満々なわけで、実際ヤバくなったらバリーとの関係を即座に全て消す抜かりのなさ。一方のパブロはメデジン・カルテルという麻薬組織なのでそもそもヤバいわけで、上手い話にはリスクがあることのわかりやすいパターンでもあります。いや、実際相当ヤバいわけですよ。アメリカの中米対応や麻薬カルテルとの対立が背景にあるということで、差し挟まれるレーガン大統領の映像やその後大統領となるブッシュもちらりと映したりと事の大きさは随所に見られます。

そんなヤバいことに関わっている自覚がありながらも、流されてしまうバリー。CIAだけでなく、DEA、州警察、ついにはFBIにまで囲まれ、とうとう監獄送りかと思いきやまさかのホワイトハウス。そんな国家権力に踊らされ、最後にはカルテルに命を狙われるバリー。義理の弟であるJBを死なせたことが自分も車が爆発するのではという強迫観念に変わり、周りを下がらせてからキーを回す姿がツラいです。結局同じ時間同じ場所へ通ってたために待ち伏せされ最期を迎えるバリー。それは果たして自業自得なのか、それともアメリカという国の暗部を押し付けられたからなのか。少なくとも原題が示すように、アメリカが彼を作ったのだ、という面はあるように思えるのです。

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