2017
10.23

踊る悪党と壊す異端。『アウトレイジ 最終章』感想。

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2017年 日本 / 監督:北野武

あらすじ
色んな罵倒が聞けます。



関東の山王会と関西の花菱会による暴力団組織の抗争のあと、韓国の済州島に移った大友。しかし済州島に来ていた花菱会幹部の花田が起こしたトラブルにより手下を死なせてしまう。日本では花菱会内部での権力争いが激化、張会長の組織との緊張状態も高まる。そんななか大友は全てにケリを付けるため日本に戻ってくる……。北野武監督・主演によるバイオレンス映画、『アウトレイジ』シリーズの最終作。

『龍三と七人の子分たち』以来の北野武監督作、そして北野作品としては珍しくシリーズ化された『アウトレイジ』の完結編です。山王会は花菱会傘下となって決着が付いたものの、代替わりした会長により花菱会内部は不穏な空気が漂い、一方で花菱は日本と韓国を股にかけるフィクサー、張会長のグループとも不味い関係に。そこに大友という異端分子が加わり、命懸けの生き残り抗争が繰り広げられます。おなじみバカヤローコノヤロー(加えてアホォボケェ)という罵倒の応酬に、結託、裏切りの連続。そんな保身に注力し権力に固執するヤクザビジネス社会を、落とし前を付けるためにブチ壊す大友、という構図になっていきます。

しかしそんな大友に痛快さを感じるかというとちょっと違い、金と駆け引きの横行する社会の不穏さと、攻めているのに追い詰められてるかのような大友の不安定さが目立ちます。大友は姿を消しゆく「古くさい極道」であり、そんな一つの時代が終わっていく寂しさというか、閉塞感が強い。そんな諦念がありながらも、湿っぽさはないという奇妙なバランス。1作目のような凄惨なバイオレンスというわけではなく、2作目のような強大な敵と対峙する緊張感とも少し異なる、狂乱のなか踊る者たちへ確固たる幕引きを行う男のドラマがもの悲しいです。

このシリーズは名のある俳優たちが大挙共演するという側面もありますね。今作でも大友役のビートたけしを始め、西田敏行、塩見三省、白竜、松重豊、名高達男、光石研などの前作からの続投組、加えて大森南朋、ピエール瀧、原田泰造、池内博之、そして岸部一徳や大杉漣まで新たに参加。主要キャラとしては女性はほとんど出ない男臭さ。特にベテラン勢は顔面力が高く、突きつけるかのような顔面アップも多いです。

シリーズ通してカッコいいタイトルの出方、唐突に訪れるバイオレンスの緊張感といった映像が印象的。そしてヤクザ者という表面的な要素とは裏腹に、描かれるのは汚く胡散臭い社会の縮図。そこで足掻く不器用な男の行く末がじわじわきます。

↓以下、ネタバレ含む。








山王会は花菱会の傘下となって縮小、その花菱会も前会長の娘婿で元証券マンの野村が跡目を継いだために、若頭の西野らは不満たらたらで一枚岩という感じではなくなります。なんだか随分スケールダウンしたような印象もありますが、隆盛から斜陽へと傾く花菱の代わりに、前作で存在だけは何となく示されていた張会長の組織が絶対的な権力として浮かんできます。この韓国系組織の得体の知れなさがまず不気味。そしてこの不気味な組織には花菱のやり方が通じないわけです。中田と花田が詫びで持参した3000万が6000万になって返ってきたり、その後に西野の「1億持ってきた」に被せるように張会長が別会話で「80億以下じゃ売らんぞ」と言ってて、もうデカさが違う。

それに呼応するように花菱側はどんどんマヌケさが目立ってきます。そもそもの発端である変態プレイの花田は、強気だったのが大友に凄まれてヘタレな態度を取ったり、中田が張会長の前で日本語で悪態ついてバレバレだったり、詫びに来た西野が張会長にガン無視されたり。山王会も西野が死んだと思って強気に出たら本人登場とか大マヌケ。前作で小日向文世の演じた片岡というトリックスターが退場したせいもあって、行き当たりばったりな奴等が多く目に付きます。張会長暗殺はチンピラに丸投げして失敗。古参幹部をないがしろにしすぎて裏切られる花菱会長の野村は、ポロシャツでくつろいでるところで反旗を翻される。大杉漣の野村が地面に埋められて泣きわめく姿などは最高にマヌケでイイ。相手を軽く見たり、責任を取ろうとしない者は失敗していくんですね。そんな姿がコミカルでさえあります。

そのなかで全てを得ようとする西野は、出るべきときは出て力を示すし、追い込んだうえでどちらに付くかと問う老獪さ。花田が「エンコ勘弁してくれ」というのを聞き入れるのも取り込むためであり、この飴と鞭を駆使したしたたかさは強い。それにしてもやはり西田敏行はすげーな、というのを実感します。「迷惑もハローワークもあるかい!」は名台詞ですよ。出所祝いの席でマシンガン撃ちまくる大友に「もーー!」という泣き顔を見せるのもイイ。あと中田役の塩見三省は病後で痩せ細りほぼ座ったままの出演ですが、聞こえない体の「ああ?」の言い方がさすが。そして張会長役である金田時男の謎の存在感が不気味です。

そんな対立や駆け引きをものともせず暴れる大友は、それを取り込もうとした西野でさえ動きを予測できません。散々仲間を失ってきた大友は、済州島でも若い者を殺されて遂に帰国。その行動原理は全てに決着を付けるということでしょう。山王も花菱も構わず撃ちまくる大友は完全に異端であり、無事に済むとは思えない。でもそれは大友も覚悟の上なんですね。そこにはカタルシスはなく、機関銃をブッ放すときも「カイカン」という感じではないし、花田を口花火で始末するときも、前作で木村を殺した加藤の側近まで殺すときも淡々とこなしていく。そして最後は張会長へ迷惑をかけた自分へのケジメを付けるべく、自らをも殺します。

序盤で夜に現れるタチウオが昼間の海に死んだ姿で上がるのは象徴的。その時点で大友の最期は示唆されており、ひたすら終わりに向かって進んでいくという感じです。他がああだこうだやっているなか、大友だけは揺るぎがない、だから乾いているとでも言うべき諦念があります。もう一人、終わりに向かって進むしかなかったのが松重豊の繁田です。上層部の腐敗により警察としての役割を果たせない、それは片岡を見て知っていたはずなのに、それでも正義を貫こうとして失っていくものの多さに諦念を抱いた繁田は、職場でさえもない、業務外の場所である居酒屋で辞表を叩き付けます。全てを壊そうとする大友、全てを投げ捨てる篠田に、愚直という言葉が思い浮かびます。

最後に釣りをする大森南朋が兄貴である大友の帰りを待つ姿。乾いた世界にそこだけは情というものが感じられます。と同時に、自分を撃ったときには呆気なささえあった大友の死の実感が、これで物語が終わってしまったという寂莫感と共に胸に迫ってくるのです。

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