2017
10.12

終わりなき死からの再生。『亜人』感想。

ajin
2017年 日本 / 監督:本広克行

あらすじ
永井く~ん。



死んでも甦る新人類「亜人」。研修医の永井圭は交通事故で死亡した直後に生き返り、自分が亜人であることを知る。亜人研究施設に監禁され実験されていた圭は同じく亜人である佐藤によって救出されるが、やがて亜人と人類の壮絶な戦いに身を投じることに……。アニメ映画化もされた桜井画門の同名コミックを実写映画化したサスペンス・アクション。監督は『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』『幕が上がる』の本広克行。

絶対に死なない、と言うか死んでも速攻で甦って怪我や体の欠損も元通りになる存在、亜人。その亜人であることが判明した永井圭、同じく亜人で日本転覆を目論む佐藤を中心とした激しい戦いが描かれます。死なないという点以外では人間と違わないのに、その死なないという点で人間扱いされず、モルモットとして連日非人道的な人体実験をされる圭。そしてそんな人間たちに復讐を誓う佐藤や、かつて同じように捕らわれていた田中。人と亜人という相容れない存在が対立するなか、同じ亜人の行いに耐えかねた圭が下した決断により、事態は壮絶さを増していきます。

原作コミックは既刊11巻、うち5巻まで読んだんですが、この実写版はとにかくアクションが見所になっており、そのために大胆なアレンジを行っています。設定を微妙に変え、登場人物も大幅に整理し、これでもかと見せる死んでは甦るの不死身アクションに振り切る、という思い切りの良さを見せています。話の繋がりには不味いところもあるし、原作ファンは改変に不満もあるでしょうが、スピード感とスタイリッシュさに、エグさとスタンドバトルも加えて再構築した作りは、これはこれで面白いです。アクション監督の大内貴仁は『HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』のアクション監督でもあるので信頼感増しますよ。

永井圭役は『るろうに剣心』シリーズの佐藤健、テロリスト佐藤役は『怒り』『ソレダケ that's it』の綾野剛。とにかくこの二人の身体性を存分に活用してるのがスゴく良いです。二人とも裸体サービスまであるという、よくわからない気合いの入り方。特に綾野剛、体のさばき方は凄まじいし、マガジン交換の仕方までいちいちカッコいいし、仰々しい喋り方がツボだし、歌いながらチャリで走られた日にはもうお手上げ。綾野剛オンステージ、最高だな。厚労省の亜人担当職員、戸崎役の『ルパン三世』玉山鉄二は眼力強いし、あの独特なメガネも再現。下村泉役の『デスノート Light up the NEW world』川栄李奈は動きもイイし、圭の妹・慧理子役の『君の膵臓をたべたい』浜辺美波が可愛い。ほか田中役の城田優や『HiGH&LOW THE MOVIE 2 END OF SKY』の村山こと山田裕貴、『帝一の國』の千葉雄大らが出演。

人類と異人種の戦い、迫害する者とされる者という点では『東京喰種 トーキョーグール』に近いものがありますが、「不死」と「幽霊」によってかなり異なるベクトルの作品となっています。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭がいきなりエグさ極まる人体実験だったり、顔の包帯が目が見えるように巻かれてて血の涙を流したりとなかなかエグい(でもレイティングはG)。このショッキングな出だしで、ぬるい話ではないという作品のカラーを示してきます。死なない人間がいたらどうなるか?というのを人間の都合からまず徹底して描くわけですね。これが佐藤や田中が人間へ復讐する動機付けとなります。しかしだからと言って人間を殺しまくっていいのか?というのが圭の立ち位置になり、この辺りのドラマを必要最低限描いて、あとは死なないとはどういうことか?というのを、死んで復活の無限ループによるアクションへと振り切ります。

麻酔の刺さった自分の腕を切り落としたり、撃たれて致命傷を負ったりしても、自ら命を絶てばすぐに復活できる、という亜人の特性を活かしたアクションは壮絶。自分の切り取った腕を囮にして不意を突いたり、復活のタイミングで出し抜いたり、飛行機で激突して大混乱を起こし初動を奪いつつ乗り込む、というのも亜人にしかできない芸当。左手のお守りで一気にひっくり返すところなどはシビれましたよ。自分の死さえも戦略、戦術に組み込めるというのが動きと戦況に幅を持たせていてイイ。死なないという点では『無限の住人』に似てますが、復活のスピード感が違うのでさらにスリリング。加えて佐藤の鬼強さが凄まじい。というか綾野剛が凄まじい。特に厚労省に飛行機で突っ込んでからのSAT戦は最高です。SATの「殺し続ける」という絵面もなかなかスゴい。対する圭も、佐藤健の『るろうに剣心』を思わせるダッシュからのアクロバティックな動きで魅せまくります。

ただしストーリーの繋ぎが雑だったり人物の行動原理が曖昧だったりするのは難点。そもそもただの医師見習いである圭がなぜあそこまで動けるのかは謎だし、助けられた圭が佐藤をいきなり撃ったあとの他人事のような態度などは唖然とします。原作を読むと圭が人間らしさの欠けた人物だというのがわかりますが、映画だけだと圭の人間性がよくわからないですね。妹の慧理子が「昔から冷たかった」とは言いますがちょっと弱い。他にも戸崎と泉の関係とか、説明をはしょってるために宙に浮いたままのところもちらほら。原作に出てきたカイや中野、オグラなどの登場人物もバッサリ切り捨てられてるので、やけにシンプルに感じます。幽霊についてもほとんど語られないですね(IBMという呼称さえなかったような……あったかな?)。

演出的にも戸崎が「トザキではない、トサキだ」と言うタイミング、そこ?とか、千葉雄大が幽霊と出会ったあと何もないの?とか、ヒカキン出すぎじゃね?とかまあ色々あります。SAT隊長が『踊る大捜査線』と同じあの人なのは狙ってるんでしょうが、それを死なせるというのは本広監督『踊る』との決別か?とかね(こういうのがノイズなんだけど)。あと大林宣彦監督のカメオ出演には驚き、と言うかなぜ??しかしそんなところにツッコむ前にアクションで引っ張っていくので見れちゃうんですよ。佐藤健vs綾野剛は最後まで緊張感あるし、泉vs田中も見応えあるし、そして思った以上に迫力なIBM戦は、速さと力強さ、かつ『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』のスタンド戦と異なり幽霊同士の戦いと亜人の生身の戦いを重ねるのが面白い。あと川栄李奈の「クロちゃん!」もなんか可愛いです。

正直佐藤の方に肩入れしかねない話なんですが、そこは綾野剛の内に秘めた狂気を醸し出すことでバランス取れてると思います。「永井く~ん」っていう言い方がね、いちいち面白いですね。そして最後は圭が窓から飛び去るという『マトリックス』のような幕引きに爆笑、もとい喝采です。少々重厚感には欠けるし、ラストの帽子を拾うシーンには蛇足感もありますが、続編があったらまた観てしまいそうです。

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