2017
10.10

なぎなた、はじめました。『あさひなぐ』感想。

asahinagu
2017年 日本 / 監督:英勉

あらすじ
スネ!(新鮮)



二ツ坂高校の新入生である東島旭は、中学まで美術部だったものの流れでなぎなた部に入部。二年生の宮路真春ら先輩たちや、同じく新入部員の八十村将子や紺野さくらと共に稽古に励む。やがて3年生が引退し、地獄の夏合宿を経て成長した旭たちは、ライバル國陵高校との試合に臨むことに……。こざき亜衣の同名コミックを「乃木坂46」のメンバー主演で実写映画化した青春スポーツドラマ。

「薙刀」の読み方さえ知らなかった新入生、東島旭が、なぎなた部に入部して成長していく様を描く物語。主要キャラを演じるのが乃木坂46のメンバーということで多少不安もありつつ観賞。冒頭で旭の一言目「ウエッ」の言い方で早くもアレ?大丈夫かな?と思っちゃうんですが、案の定なかなかツラいです。特にギャグシーンが笑えないのがツラい。でもなぎなたのシーンは悪くないし、思わず涙した泣き場面もあったりするので、そこまで否定しようとは思わないんですよ。何よりなぎなたというスポーツの独自性をしっかり見せているし、互いに高め合って勝負に挑んでいく胴着女子たちはなかなか熱い。

ほとんどが乃木坂メンバーなのはまあいいです。乃木坂は全然知らないんですが、そこまで演技がマズいというわけではないし、武道をやっているという感じは希薄なもののそういう人でもできるのがなぎなただ、と言っているのでそこはいいでしょう。東島旭役の西野七瀬は、正直旭としてはちょっと弱々しい感じがしてしまうものの(でも超絶可愛い)、宮路真春役の白石麻衣の強気なだけではない凛とした雰囲気は良いし、他も結構キャラには合っている人も多いんではないでしょうか。そして大倉文乃役の『ソロモンの偽証』『チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』富田望生の、体格を活かした存在感が良いです。『ちはやふる』の机くんこと森永悠希がまさかの(失礼)イイ男役だ!あと『3月のライオン』のスミスさん役でもあった中村倫也の、空気読まない顧問は不覚にもちょっと面白かったです。あと江口のりこは寿慶って感じではないけど雰囲気が良かった。

原作コミックは3巻までしか読んでないんですが(それでもすげー面白い)、わりと原作に忠実だと思います。ただ原作に忠実ならいいというものでもない、というのが実写映画の難しいところだなーとも思えてしまいました。ギャグとかそのままやるのがかえってマイナスだったり、面を付けると誰だかわからなかったり。あとどうしても彼女らの美しい顔を見せようとする映像が多いため、武道としては泥臭さに欠けるんですね。それも一つの方向性だとは思いますが、あともう一工夫あればアイドル映画を思わせない強度にもできた気はします。

↓以下、ネタバレ含む。








コメディシーンが多いのに笑いが寒いというのは結構イタいです。顔面ぶつけて鼻血とか、これがコメディ演技の上手い女優さんならまた違うかもしれないけど、西野七瀬ははっちゃけ方が足りないのでただ可愛いんですよ(それがいいと言う人もいるでしょうが)。あと音楽で煽って急に止めて落とす、というパターンがギャグでも試合でも多すぎるのもだんだん気になってきます。鼻栓がポーンと飛ぶとかそこだけコントみたいだったり(ちょっと笑ったけど)。でもあまりにそぐわなくてドン引きするリズムなぎなたの選曲なども実際は原作準拠だったりするので難しい。

結構詰め込んでるので多少説明不足なのはしょうがないとは思います。むしろよくまとめたなあと。とは言えそれだけにキャラの掘り下げもそこまで深くはなく、新人と先輩の確執とかもさほどなくわりとすんなり馴染むし、ライバルの一堂寧々がそこまで勝ちにこだわる理由も描かれないのでちょっともやもやしたりも。また面を被ると誰だかわかりにくいというのは難点で、一応前垂の名前で判別は付くものの、もう少し工夫があってもよかった。一回だけ旭の面が透けて顔が見えるというアイアンマン的演出もありましたが、なぜそこだけ……。そう言えば一ヶ所だけ旭のモノローグが入るところもあって、それもまたなんだか唐突です。あと旭が合宿で寿慶から一本取りますが合宿中は水汲みばかりで特にその引き技の練習はしてないとか、練習試合で一本取るのも鼻血が出た以外何もロジックがないとか、背景の説明不足とは別の次元でちょっと描写不足を感じます。

でも映画版独自のアレンジというのもあって、そこは良かったりもするんですよ。3年が最後の試合後で明るく振る舞うのが強がりだった、というのを後輩たちが去ったあとの号泣で見せて、それを後輩たちが背中で聞くというのは泣けます。団体戦で交代するとき背中ポンポンするのとか、さくらが台詞を文乃に取られて「それ私が言いたかった」の重ね方とかもちょっとイイ。他にも旭と夏之との始まりを予感する関係とか、真春が強さを求めるあまり部がバラバラになるとか、青春ものとしての熱さはちゃんとあります。あと中村倫也の顧問の超適当な感じは面白すぎて最高。笑いの面ではあれでかなり救われます。旭がメガネのままの理由とか、寿慶がさすがにグラサンではないとか、実写で不自然なところは解消してたりしますね。

コミック原作の実写化、特にキャラが立ってる作品の場合は配役が重要ですが、これは結構合ってると思います。西野七瀬の旭、原作ではもうちょいたくましい感じですが、まあ何度も言いますが超絶可愛いのでね、もういいです。メガネッ娘を貫き通すのもポイント。真春役・白石麻衣、文乃役・富田望生は前述のように文句なし。将子役・桜井玲香の尖った感じ、さくら役・松村沙友理のブリブリな雰囲気、えり役・伊藤万理華の部長らしい仕切り姿も合ってます。先に武道としての泥臭さに欠けるとは述べましたが、その代わりこのキャスティングによって旭たちなぎなた部員のきらめきというものを前面に押し出してるとも言えるでしょう。原作の味を(それほどは)損なわず、乃木坂46をメインに据えた時点で危惧された学芸会的な出来には(辛うじて)なっていない、と言えるんじゃないですかね。より上を目指すとか人一倍の努力など、彼女たちのアイドルとしての立ち位置を劇中の人物に重ねる、という見方もできなくはないだろうし。そういう点ではこれは正しくアイドル映画ではあるんですよ。

ただ、アイドル映画寄りのさじ加減にしているために、それ以上のものを求めると厳しいものはあります。アイドル性にこだわらずもう少し映像で語る方向性もあったんじゃないか、それこそアイドル主演なら『幕が上がる』とか、青春ものなら『ちはやふる』みたいな作りにもできたんじゃないかな、と思うとちょっと惜しい。ただこれはこれで一つの形ではあると思うのです。

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