2017
09.25

求める起源と招く終焉。『エイリアン:コヴェナント』感想。

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Alien: Covenant / 2017年 アメリカ / 監督:リドリー・スコット

あらすじ
ファスファスしい。



地球から新天地の星へ、人類移住計画の旅路にある宇宙船コヴェナント号。そこには2000組のカップルと乗組員が搭乗していた。その途上で人類の居住可能な惑星にたどり着いたクルーはその星の調査を開始するが、そこには想像を絶する脅威が存在していた……。『エイリアン』の前日譚を描いた『プロメテウス』、その続編となるSFスリラー。監督は前作に続きリドリー・スコット。

前作『プロメテウス』で人類の起源を描いたリドリー・スコットが、それとはまた別の起源を描く本作。今回の宇宙船コヴェナント号に乗るのは冷凍睡眠にある2000組のカップル(男女とは限らない)と、これまたカップルで乗り込むクルーたち。そんな彼らが艦のトラブルで目覚めるとちょうど目的地よりも条件の良い惑星発見、ということでよせばいいのにその星に調査に降り立ち案の定ヤバい目に逢います。前作で不評だったせいか今作ではエイリアン増量、不気味さを増して襲いくるスリルや恐ろしさがしっかりあります。しかしそんな恐怖や世界観などどうでもよくなるほどの、ある脅威的人物の台頭には騒然ですよ。そして「『エイリアン』の前日譚」というのが前作以上に表面的になっていきます。

主人公の女性ダニエルズは『インヒアレント・ヴァイス』『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』のキャサリン・ウォーターストン。ヒロインなのに髪型のせいかちょっとババくさく見えますが、徐々にシリーズらしい戦う女性の姿に。『君が生きた証』のビリー・クラダップが少し頼りない船長役で出てますね。そして前作『プロメテウス』からの続投となるアンドロイドのデヴィッド役は『X-MEN:アポカリプス』マイケル・ファスベンダー。このファスベンダーが何と言うかもう、スゴいです。神秘!という感じです。いや、ええ?ちょっとファス?た、縦笛??と戸惑い、衝撃でクラクラしますよ。

もはやモンスターが襲い来るという単純な構図ではなく、登場するのが皆カップルというノアの箱舟状態などキリスト教的観念も見られたりと、壮大な人類の行く末や起源に迫っていきます。より増したアクションとゴア描写による娯楽作としての出来もいい感じ。そして純粋な好奇心による創造がもたらす功罪、そんな高尚さとは関係なくドジをかましまくるクルーたち、ファスがファスっててファスすぎるなど、色々とスリリングです。

↓以下、ネタバレ含む。








■愚かさを彩る美しさ

ホラー系での登場人物が愚かな行為をして自らの首を絞めるというのは、見ててイラつきはするもののお約束でもあったりするんですが、本作でもそれはあって、と言うか「そもそもそれダメじゃない?」というのが結構多いです。目的地が決まってるのに「この星いいわーここに住もう」って大した調査もしないうちにあっけなく言い出す雑さ、襲われそうな仲間を閉じ込めたうえスッ転んで船が爆発というマヌケさ、2000人も乗ってるのに妻が心配で磁気嵐のなか近付こうとするパイロットの無謀さ。何かもうわざとそういう展開にしてむしろコメディっぽさを狙ってるんじゃないかと思うほど。でもそんな愚かさで事態がどんどん大変なことになっていくのが面白いんですけどね。ちゃんと演出的にハラハラするようになってるし、その辺りのバランスはさすがのリドリー・スコットですよ。

それに映像的にも美しさがあります。冒頭の真っ白な部屋のキレイすぎて落ち着かない感じからしてディストピアSF的でイイ。ここでウェイランドとデヴィッドとの創造する者とされる者という会話が色々と示唆的。と言うかウェイランドがガイ・ピアースなのがちょっと驚きました(前作も出てたらしい、気付かなかった)。宇宙船が充電のために金色の帆を広げるというのはちょっと驚くけど荘厳だし、エイリアン星の光景やデヴィッドの住む怪しげな館の佇まいとか、いかにも胡散臭い実験をしてます的な薄暗い明かりの部屋とか、ベランダから見下ろす支配者的な構図とか、どこか耽美な美しさが印象深いです。


■エグさも際立つギリギリ感

エグいシーンも増量し、冷凍睡眠のカプセルでいきなり一人だけ燃えるダニエルズの旦那とか(しかもこれジェームズ・フランコじゃないか!)、チョン切られた首が水に浮いてる様子を何度も映したり、酸で顔を焼かれたりもします。前作ヒロインであるノオミ・ラパスのエリザベス・ショウ博士もまさかの出演……出演と言っていいのか?という衝撃的な姿で登場。そしてエイリアンにガンガン殺されていく人間たち。思いがけず背中や口から出てくるヤツとか、カーテン開けたら突っ立ってる白いヤツとか気持ち悪くてビビります。ビリー・クラダップに襲い掛かるお馴染みのフェイスハガー、そして飛び出せチェストバスター!この辺りはむしろ安心感がありますね。

成体であるゼノモーフは1作目のような見せない恐怖ではなく、全身さらけ出しての追撃という点では『エイリアン2』のアクション方面に振った見せ方にわりと近いですかね。脱出時の貨物挺の上でグルグルするスリルは、ダニエルズのスパイダーマン的無茶対応もあって愉快だし、クライマックスでのテラフォーミング機械から逃れたエイリアンに対して、ダニーが自分ごと宇宙へ放り出すかと思わせるギリギリ感がイイです。

そしてエグいと言えばファスベンダーのデヴィッドですよ。知識豊富で好奇心が強く、かつ倫理観に欠けるヒマ人なので、まあろくなことしないわけです。寄生体により姿形を変える性質を使ってさまざまなエイリアンを作り出す素人生物学者となり、実験を繰り返して星ひとつ滅ぼすマッドサイエンティストと化します。人類を滅び行く種だと、価値のない種は滅びるべきだと定義し、エイリアン実験を創造だと言い張る。ここはアンドロイドであるからこそ生物的な進化みたいなものに惹かれたというのはあるのでしょう。そしてショウ博士の写真を飾り、彼女を愛していたと言うものの、デヴィッドには自分で種を創造することはできない、というのも彼を駆り立てたかもしれません。コヴェナント号がカップルばかりというのもデヴィッドの孤独さを際立たせます。


■デヴィッドの世界

しかしそこに自分と同じアンドロイドのウォルターがやってくる。相手が自分であるなら同じ興味を抱くはず、ということで口説きにかかるわけです。ここでファスベンダーの一人二役が起こすミラクル!二人で縦笛を吹くという共同作業のファス!ファスにチューするファス!挙げ句ファスvsファスのファスバトル!『アサシン クリード』みたいだったり『X-MEN:フューチャー&パスト』みたいだったりもするし、あらゆるファスが見られるまさかのファス充映画!しかしようやくデヴィッドが見つけたつがいも結局は逃げ出し、人間たちと船へ戻ってしまいます。アンドロイドが二人になっても繁殖はできないわけで、その点でやはり命を作り出す人間の方が未来を紡いでいく話で終わるのかと思わせるんですよ。まあ繁殖の強さという点では、バラバラの顆粒が空気中で形を取って動き出すとか、しかも元は液体だとか、エイリアンの方が断然凄いんですけど。

カップルの片割れを失った人間たちは種の先細りを象徴するかのようではありますが、それでもなんとか生き延びて再び冷凍睡眠に入ろうとするダニエルズ。そこで判明する救いのない事実に戦慄します。顔にホチキス当ててたシーンの不自然さとか、まあなんとなく疑いは持って観ていたわけですが、まさか「湖畔の小屋」が伏線だったとは。エイリアンを船外に放出した時も、ホッとした表情にも残念がる表情にもどちらとも取れる顔の作り方だったのがまた見事です。そしてワーグナーの「ヴァルハラ城への神々の入城」を流しながら、彼は物言わぬ国の王となり、新世界の神となるのです。

エンジニアが人類を創り、人類がアンドロイドを創り、アンドロイドがエイリアンを創る。しかし彼が彼自身と交わしたともいうべき創造のための「コヴェナント(契約)」によって、エンジニアは滅び、人類もまた風前の灯火。これがエイリアンの起源というわけですね。人類の起源を求めていたウェイランドは、自らの創造によって起源である神を滅ぼし、種の終焉までを招くわけです。『ブレードランナー』さえ思い起こさせる構図に、果たして続編はどうなるのか気になるところ。……興収が振るわずに続編制作は厳しいという報もあるようですが、ぜひこの壮大で美しくグロテスクなシリーズを完結まで持って行ってほしいです監督!

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