2017
09.13

相性の良さがもたらすハッピー。『スキップ・トレース』感想。

Skiptrace
Skiptrace / 2016年 アメリカ、中国、香港 / 監督:レニー・ハーリン

あらすじ
DDカップ!



香港の犯罪王ヴィクターに相棒ヤンを殺された香港の刑事ベニー・チャンは、その殺人の証拠を9年間も追い求めていた。そんななかヤンの娘サマンサがヴィクターに狙われていることを知ったベニーはサマンサを救うため、たまたま事件に関わってしまったアメリカ人詐欺師コナー・ワッツを追ってロシアへと向かう。しかしなぜかベニーとコナーは二人そろって追われる身に……。ジャッキー・チェン主演、『ダイ・ハード2』『クリフハンガー』のレニー・ハーリン監督によるバディ・アクション。

ジャッキーとレニー・ハーリンというまさかの組合せ。これがどうだったかと言うと、小道具も駆使したコミカルアクションの香港版ジャッキー映画と、スケールのあるハリウッド版ジャッキー映画が実に上手く融合。表の顔は実業家ながら裏では犯罪を牛耳るヴィクターを捕らえるため、刑事のベニーとその証拠を握る男コナーが立ち向かうことになるという話で、時間構成や会話シーンにやや難はあるものの、二人がバディとなっていく関係性や、ちょっとマヌケで愉快な敵キャラたち、アクションの中で見せるコミカルさなどがとても楽しい。レニー・ハーリンらしい大仕掛けもいい具合にスケール感が出てます。そしてなぜかジャッキー的アジア紀行が始まるという思いがけない旅映画の展開もあって、これが心地よいのです。

ジャッキーと行動を共にするコナー役は『ジャッカス』シリーズのジョニー・ノックスビル。これが『ラッシュアワー』のクリス・タッカーとはまたちょっと異なり、行動や状態で笑わせてくる感じが何と言うか「ちょうどいい」んですよ、バランスとして。刑事と詐欺師というありがちな取り合わせもこの二人だとわりと新鮮。またサマンサ役である『X-MEN:フューチャー&パスト』『封神伝奇 バトル・オブ・ゴッド』のファン・ビンビンが美しい……(ため息)。他、ベニーの部下レスリー役のシー・シー、ロシアの女ターミネーターことダーシャ役のイヴ・トーレス、中国の女戦士ティンティン役の『ライジング・ドラゴン』ジャン・ランシンなど、女性陣が強くてみんな素敵。

『レイルロード・タイガー』では一歩引いた感じであまりアクションの見せ場もなかったジャッキーですが、全盛期ほどではないにしろ、今作ではわりと体を張って魅せてくれます。ノックスビルとめぐるロシア、モンゴル、中国の旅路もとぼけた味わいで、ロードムービーと言うよりは珍道中と呼ぶのがピッタリきます。香港映画好きとしてはエリック・ツァンやリチャード・ン(『五福星』だ!)が出てるのも嬉しいところ。観終わったあとは何だかハッピーな気分になれます。

ちなみに、意味ありげにアルパカの置物が映されるシーンがあって、ジャッキー演じるベニーの亡くした家族の思い出とかそういうのだろうか、と思ったら違うんですよ。単にジャッキーがアルパカ大好きなんですよ。アルパカの牧場を持ちたいというくらいアルパカラブなんですよ。何だその可愛すぎる設定は。

↓以下、ネタバレ含む。








全編面白かったかと言うとそういうわけでもなくて、特に序盤のドラマ部分などは結構退屈。ベニーが相棒ヤンを失うシーンはいいとして、ベニーがやらかして上司に怒られるあたりから、コナーとサマンサとのやり取りなどはタルいし、コナーが両親の嘘話をするシーンはあまりにつまらない上に長くてどうしようと思いました。過去と現在を行き来する構成は特に上手く機能しているとも思えず、回想で同じシーンを繰り返したりするのも野暮ったい。あとベニーとコナー二人の会話がいまいち面白味がないんですよねえ。ベニーのキャラが固いからというのはあるでしょうが、ウィットに欠けます。音楽も全体的にいまひとつ。ただ、二人が旅に出てからはどんどん面白くなっていくので、それで上書きされてあまり悪い印象が残らないです。

通常シーンではスベり気味なギャグも、アクションシーンのなかでは不思議と面白い。序盤の水上長屋を盛大にブチ壊していくシーンは建物が崩れたり棒で移動したりぶつかったりぶつかられたりとコミカルで、途中で不意に見せるシャワー中の男とかはふざけてて笑えます。ドラム缶に入ったままゴロゴロ転がるところとか思わず吹くし、サマンサが床にたまった水にスタンガンを付けてシビれさせるシーンなんてコントですよ。配送倉庫でのロシアチームとの攻防では、コナーがどんどんパッケージ化されていくテンポのよさと、周囲の機械や小道具を使った戦いが実にジャッキーらしいし、ロシアと言えばマトリョ-シカ、というベタなネタをダーシャとの戦いで使うのも意外と面白いです。ダーシャはビニールでグルグル巻きにされて息ができない死んじゃう!って心配になりますが、後でまた登場する(と言うか最後まで出てくる)ので一安心。イヴ・トーレスいいですねえ、WWEのレスラーなんですね。乳が挟まって動けないというのもダイナミック。

コナーにパスポートを燃やされたせいで飛行機で帰れなくなったベニーは、コナーを連れて超ボロ車で長い旅に出ます。ロシアから香港まで何万キロあるんでしょうか。無茶です。つーかなんだこの呑気こいた展開は。と最初は思ったんですが、途中のモンゴルの村での相撲対決、そして観てるうちに楽しくなってくる宴会シーンは歌って踊って何だかハッピー。なぜかジャッキーがアデルの曲を歌い出すというのが不自然ですが、それも何となく許せてしまいます。二人で川下りをするシーンでは泳げないベニーとそれを助けるコナーというところで二人の関係を深めるし、泥んこ祭りの村では追ってから逃れるため泥にまみれたり、崖上で追い詰められた時は眼下の川へ飛び降りる、と見せかけて飛べなかったり(わりと斬新)、歌を歌わないと通れない道では悪党たちまで歌ったりと楽しい(ここでコナーが歌う曲にベニーが微妙な顔をするけど、ひょっとしてジャッキーの持ち歌か?)。二人が裸で抱き合うというあからさまなシーンもあるのに、ブロマンス臭より笑いが勝るのが面白い。

終盤では敵ボスかと思ったヴィクターをあっけなく殺して姿を現す黒幕という、まさかのサプライズ。彼がどうやってそんな権力を得たのか、なぜ今ごろ娘に真実を告げるのか、なぜ最後に娘を託して死を選ぶのか、とその行動には疑問しかないんですが、まあここは巨大船を破壊する派手なクライマックスを堪能です。しかもピンチのときに現れるロシアチーム!ダーシャとティンティンのキャットファイト!ついに敗れるハンサム・ウィリー(そこまでハンサムでもない)!沈む船で窒息しそうなサマンサもスリリング。サマンサは父を二回失うことになったというのがせつないですね。一方で父になる決意をしたコナーが父になれなかったというのもちょっとせつない(と言えなくもない)。

色々ありながらも心の奥でしっかり友情で結ばれたベニーとコナー。実は部下のレスリーちゃんにホレられていたベニー、サマンサといい仲になってしまうのが許せんコナー、仕事を辞めてアルパカ牧場を手に入れるベニーと、終わってみればこれ以上ない大団円。秘孔を突いて眠らせるという小ネタで締める辺りもコメディらしく、総じてハッピーです。レニー・ハーリンが意外にもジャッキーのアクションが好きだった、というのもあってジャッキーの特性を上手く引き出せたのでしょう。監督と主演、そしてジャッキーとノックスビル、それぞれの相性の良さが上手く化学反応を起こしたとも言えそうです。

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