2017
09.05

気高き強さと真っ直ぐな強さ。『ワンダーウーマン』感想。

Wonder_Woman
Wonder Woman / 2017年 アメリカ / 監督:パティ・ジェンキンス

あらすじ
オー・マイ・ゴッド!



女性だけの島でプリンセスとして育ったダイアナは強くなるための修行に励む日々。そんなある日、島にパイロットのスティーブ・トレバーが不時着する。初めて目にする男性という存在、そして世界中に争いが拡がっていることを知ったダイアナは、島を出てスティーブと共にロンドンへと旅立つことに……。DCコミックスの女性ヒーロー、ワンダーウーマンの誕生を描くヒーローアクション。監督は『モンスター』パティ・ジェンキンス。

『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』で初登場したワンダーウーマンことダイアナ・プリンスの単独作。DCコミックスを実写映画化するDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)の一篇になりますが、それほどユニバースと絡めたシーンもないため単品で観ても問題ないです。時は第一次世界大戦真っ只中、外界から隔絶された女戦士アマゾン族の島、そこで唯一の子供であるダイアナは特別な力を持つプリンセス。そこに墜落してきたイギリスのスパイであるスティーブと接したダイアナは、外の世界へ出ていく決心をします。

ダイアナを演じるガル・ガドットがとにかく最高です。いまだ自分の出自も知らぬダイアナが、戦争で苦しむ人々を救うため戦場へと踏み出す姿の何と神々しいことか。ガル・ガドットは『BvS』では怒り顔かおすまし顔が多かったですが、今回はピュアで理想に燃えてるからこそ見せる様々な表情が本当に可愛い。そして『スター・トレック BEYOND』のクリス・パインが演じるスティーブがそれと同じくらい素晴らしい。標準以上の男クリパが見せる、スーパーヒーロー以上にヒロイックな姿。彼のおかげで本作の魅力が格段に跳ね上がっていると言ってもいいでしょう。他に『ハリー・ポッター』シリーズのデヴィッド・シューリスや、思わず「スパッドだ!」と嬉しくなる『T2 トレインスポッティング』のユエン・ブレムナーなどが出演。

『BvS』でも見せた無双っぷりの際立つアクションも良いですよ。ちょっと「そっち方向?」というDCEUっぽい奇抜さもありますが、DCEUのなかでは今のところ最も安定感を感じる出来。それに別に涙誘うシーンというわけではないのに、ここまで泣かされるとは思いませんでした。ダイアナの気高さ、スティーブの真っ直ぐさ。世界をすくのは愛だ、と言うのがこれほど似合うヒーロー映画もないです。

↓以下、ネタバレ含む。








■神の作りし者

ロンドンに行ってからが色々と面白いというのもありますが、それにしても序盤は少々テンポが緩く感じます。島の風景の美しさで魅せたり、ダイアナと母や叔母との関係をじっくり描いたりというのはあるものの、アマゾン族に伝わる神話を語り出したりもするし(絵画が立体化したようなヌルヌル動く映像は面白いですが)、上陸してきたドイツ軍によって屈強な戦士たちがあっけなく倒されていくのも少し拍子抜け。ただそのあっけなさによって、剣ではなく銃の時代へと世界が変化していることを感じられます。

あとアマゾン族はダイアナとは違い、鍛えてはいても普通の人間ということですね。つまり人間界で強さと優しさによって育てられた神が、人間の善を信じ神の力で戦うという下地がここでできているわけです。と言うか、ゼウスとか出てきてマジもんの神だったというのはちょっと驚きました。そりゃあスーパーマンやドゥームズデイと互角なわけだ。正確には半神(デミゴッド)で、原作でもわりと近年に付いた設定のようです。まあ神話の世界はMCUで言えばアスガルドと近い世界観なので受け入れはしやすいです。


■強さを持つ者

ガル・ガドットのダイアナは、にらみ顔はド迫力なのに、まだ純粋で世間知らずなだけに見せる戸惑いの表情や笑顔が激可愛い。メガネ姿がたまらんので、それがすぐ終わってしまうのは惜しいなー!メガネが踏まれて壊れるシーンでは「ああッ……」と声が漏れそうでしたよ。カルチャーギャップネタも少しあってドレスを鎧と言ったりもしますが、後で貴婦人からドレスを奪って潜入するあたり、あながち間違ってもいないかも。女性の地位がまだ低い時代に男だけの会議場で正しいと思うことを言う、という溜飲が下がるシーンもあり、この辺りがダイアナの本当の「強さ」として称賛されるところでしょう。あと快楽の本、全12巻を読破してるというのがなかなか……。それにしても冒頭で映される現代のダイアナはルーヴル美術館で働いてるんですね。人間の文化をもっと知りたい、みたいな欲求があったのかもしれません。

そしてスティーブを演じるクリス・パインの存在感。スパイにしては真っ直ぐで正義感溢れる男。真っ裸で標準以上と言い張る男!でも後で「僕は標準的な男じゃない。スパイだ」と固い表情で言うことからも、諜報活動は本意ではないが平和を取り戻すためにやっているのだというのが伝わります。仲間たちも最初は金で動いていたのにスティーブの思いに最後まで付いていくし、スティーブの真っ直ぐさはダイアナにも大きく響いていきますね。ダイアナがアレスのことを言ってもスティーブは「神などいない」とは決して否定しないという優しさがあり、「なぜ人間が争うのか」に対して「わからない」と言う率直さを見せます。そしてそれでも「希望はある」という前向きさも。それらもまたある意味「強さ」です。ダイアナが平和を具現化する者なら、スティーブはその概念を象徴する者、といったところでしょうか。

そんなダイアナとスティーブ、そして仲間たちの5人で撮った写真が『BvS』に繋がるわけです。この写真の仕掛けには『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』みたいな時を越えるロマンがあってイイ。ちょっとね、スティーブの仲間たちはもう少し深掘りして、よりチーム感を増してほしかったなあとも思いますけどね。特にユエン・ブレムナーが銃を撃てない理由は描いてほしかった気も。ドクター・ポイズンことマル博士なんかも、あのマスク姿や総監との関係など色々ありそうで、ひょっとしたらダイアナとは逆に「愛ゆえに世界を滅ぼす」みたいな立ち位置なのかもしれませんが、そこまでは深くは描かれず。まあスティーブがマル博士を色仕掛けで落とそうとするのが「え、作戦それ?」となるのは可笑しいです。


■戦う者

アクションは躍動感があり、スローも織り混ぜたキメ絵の連続でちょっとザック・スナイダー感があります。アマゾン族将軍アンティオペの見せる矢を三本のスペシャル技とか、悪漢に囲まれたときにスティーブの「あとは頼む」で狭い路地での敵一掃とか。素晴らしいのは中盤、ダイアナがアンティオペの形見のプレート(ティアラ?)を額に付け、自身を隠していたマントを脱ぎ捨て、戦場へと出ていくシーン。"あの"テーマ曲もあって劇中最高にアガるケレン味がありつつ、ダイアナの崇高さが最も際立つシーンです。そして機銃をものともせず立ち向かう暴れっぷりが痛快。スティーブたちが構えた鉄板を踏み台に飛び上がって鐘楼をブチ壊すシーンまで完璧。

この戦場のシーンが良すぎてクライマックスの神対決は大味に感じてしまいますが、人間たちが戦う裏で糸を引いていた軍神アレスとの直接対決は、神の子のけじめとしてやはり必要だったろうなと思います。アレスの登場が唐突な気もしますが、ゼウスがいるならアレスもいる、としないとちょっとバランスが取れないということですかね。スティーブは戦争を「僕だって誰かのせいにしたい、でも僕らみんなの責任だ」と言っているのを思えば、実は神の悪戯だったというのはスティーブの行動を意味のないものにしかねないですが、だからこそ人間世界とは別次元の神の領域でダイアナは一人戦い、スティーブの信念を守ります。


■救う者

軍神アレスの正体はサプライズではありますが、そこまで驚きはないというか、やはりお前か的な感じ。蛇足感はあるものの、小部屋で出たり消えたりの見せ方とか、徐々に形を成す兜に手で切れ目を入れたりとかはイイ。ゼウスの息子ということはダイアナとは兄妹?と思ったら、最後の最後で「さよなら兄さん」と言わせるのも良かったです。ただアレスに対峙したダイアナが背中の剣を取ろうとしたら屋根の総監に突き立てたままだった、というあれは何だろう?ギャグだとしたらブッ込むタイミングが微妙すぎですが……。まあアレスと戦ったおかげでダイアナは本当の力に目覚めたわけだし、両手クロス波動攻撃もモノにできたということで、いいんじゃないでしょうか。

派手な見せ場も多いものの、単純に「最高!フォー!」と騒ぐ感じでもなくて、余韻に浸りながらあれが良かったこれが良かったと言いたくなるというか、燃えるけど落ち着きのある良さがあります。ラブストーリーとしても秀逸だったのも意外と言えば意外。ダイアナに惹かれながらも信念を通そうとするスティーブの「僕は今日を救う、君は世界を救え」という腰を抜かすほどのカッコいい台詞は、今年一の名言でしょう。スティーブとダイアナの表情を交互に映すことで、最後にスティーブが何を思って散るのかも台詞なしで通じます。そしてスティーブが去り際に何と言ったのかが聞こえず、全てが終わったあとに「アイラブユー」だったとダイアナは悟ります。このときに初めてダイアナは自分の気持ちを知ったのかもしれません。

世界を救うのは愛、というド直球のメッセージが野暮ったくならないのは、ダイアナに「愛の女神」感があるからでしょう。ここからの長い年月でダイアナは人間に失望したりもするんでしょうが、この時代に撮った写真を『BvS』で見ることで再び世界を救うことを決意するわけです。劇中では一度も「ワンダーウーマン」という呼称が出てきませんが、不穏な騒ぎに飛び出していくラストショットからのタイトルで、ワンダーウーマンの原点がここにあると納得することができるのです。

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