2017
08.28

海の底、檻の中、絶望の淵。『海底47m』感想。

47_Meters_Down
47 Meters Down / 2016年 イギリス / 監督:ヨハネス・ロバーツ

あらすじ
47メートル=ビル15階分。



メキシコで休暇を過ごすリサとケイトの姉妹は、水深5メートルの檻の中からサメを鑑賞する「シャークケイジダイビング」に参加するが、ワイヤーが切れて檻ごと水深47メートルまで沈んでしまう。無線も届かず空気残量もわずか、周囲にはサメが泳ぐなかで2人は生還を目指すが……というパニック・スリラー。

夏と言えばサメ映画!というわけで昨年の『ロスト・バケーション』並によくできた海の恐怖を描いたのが本作。檻のなかから目の前でサメが見れるシャークケージダイビングを楽しんでいたら、ケージのワイヤーが切れて海の底へ落ちてしまった姉妹のサバイバル劇。わりと早い段階で舞台が海底47メートルに移るんですが、その間海上の場面が全く映らないので、ずーっと海の中。この息苦しさがとんでもない。鑑賞のためおびき寄せられたサメがウヨウヨするなか、通信は途切れ、酸素も少なくなってくるという、畳み掛けるような極限状態が本気で怖い。直接的なサメの怖さよりシチュエーションの怖さが凄いです。90分のタイトな上映時間が緊張で長く感じるほど。

マンディ・ムーアの演じるリサはかなりビビりなのですぐパニックになるし、クレア・ホルトの演じるケイトはアクティブではあるけどそれだけに危険な賭けに出ようとしたりと、この姉妹の性格に差があることでよりスリルに繋がります。ケイトは多少冷静とは言え恐怖はあるし焦りもする、そしてリサも傍観者ではいられない。ごく普通の女性二人である、というのがことさら強調されているのもヒヤヒヤします。加えてダイビングを主催する船長らが本当に信用できるのか、置き去りにされるんじゃないかというスリルもあったりします。

美しい海面の光景とは裏腹に、47mも下に行くと見通しが効かない別世界。そのためどうしても寄りの絵が多くなるんですが、それをアングルの工夫やケージに付いているライトの映し方、あえての超近接撮影などでこなすのも上手い。「耳抜きは頭を後ろに傾けて唾を飲む」「息が荒いとエアが減るのが早い」「急に浮上すると潜水病になるので減圧しながら」といったダイビングの知識や、サメの生体にまで触れていて、何気に勉強にもなります。そして終盤の展開の凄まじさ!海怖い。でも面白いぞ。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭、プールでワインをこぼしたときの画が悲劇を予感させてイイですねえ。主役の姉妹は旅に浮かれるのはいいとして、男とも知り合ってイイ感じとか得体の知れないツアーにほいほい付いていったりと、危機意識に少々欠けます。一応傷心のリサのためという名目だったり、つまらない女と言われたのを見返すみたいな動機もありますが、話を転がす理由としては軽い。まあこの軽さがまた普通のOL感があるとも言えるし、知り合ったばかりの男たちと彼らに案内された船のクルーの胡散臭さ、正規に許可を取ってるかも怪しいシャークケージダイビングと、徐々に不安が募っていくのは上手いところ。船に乗って出発してからは音楽もないためあらゆる動作に緊張感が伴い、禁止されてるのでは?という撒き餌、船長テイラーの含んだような表情、ハビエルのがさつな態度など、こいつらは信頼できるのかという雰囲気を持たせて、後の「置き去りにされる」という恐怖にも繋げています。

男二人が無事に戻り、微かに安心させてからのサメ見学で悲劇の幕が上がります。もう上がろうとする目の前でのクレーン破損、海の底へと落ちていくときの思いがけないスピード、海底に着いた時のパニック。ここからは極限状態の連続。ずっと水中という息苦しさ、空気は減り、明かりもなく、方向もわからない。急な浮上は潜水病になるし、通信が途切れたときの心許なさも大きい。そして全てにおいて脅威となるサメの存在ですね。特にスゴいのがリサが明かりに向かって泳いでいくシーン、「サメは下から襲ってくるので海底を泳げ」という耳より情報に従い海底を這っていたら、目の前に口を開く大きな海溝。ここの絶望感は半端じゃないです。しかも広い海で戻る方向がわからなくなるという恐怖。ここは心底ゾワゾワしました。

他にもスリリングな工夫が満載です。ハビエルは助けに来るしテイラーも置き去りにはしなかった、というのが意外に思えるのが上手いミスリードですね。なぜハビエルが直前まで交信しなかったのかがよくわかりませんが、それでも一度はケーブルを繋いで浮上にまでこぎつけ、そこからの(ケーブルがなんか細いという伏線通りに)再度の落下、しかも今度はケージに足を挟まれるという絶望の上書き。さらには手の傷からの流血、エアの残量とピンチに事欠きません。また、水中銃をサメを倒すためでなくタンクを引き寄せるために使うとか、BCD(浮力調整器)でケージを浮かせて挟まれた足を抜くなど、そのピンチを脱するための工夫も面白い。サメがここぞというときにしか姿を現さないのも、いつ来るかわからない緊張感として効いています。

アクティブでモテるケイトに劣等感を抱き、終始弱気で動けなかったリサが、ケイトを失った絶望的な状況で突然「ここで死ぬわけにはいかない」と奮起するのはちょっと根拠が弱いかなあ、とは思います。もはや元カレを見返すどころではないわけだし。まあ生存本能に目覚めたということですかね。そんな引っ掛かりはありつつ、それでも終盤の怒涛の展開には度肝を抜かれます。発煙筒でサメを避けながら血を流すケイトをリサが支えて浮上、というのもスリルですが、発煙筒を一本落とすという間を取ってからの、最後の一本を点けたときのショック!この凄まじいショット一発で他のサメ映画に大きく差をつけたと言ってもいいくらいです。そして海面に出てからも噛まれては引き込まれ、もうすぐ引き上げられるというときにまた引き込まれ、目を潰して脱出という、息をも付かせぬ連続技。

それでもやっと生還できて、あとはエンディングを待つのみ、と思うわけですよ。ここでテイラーの声が無線のように遠くなり「まさか?」と思った直後のこの救いのなさ。一件落着と思ったら実は終わってない、というのはホラーではよくあるパターンですが、完全に油断していたので「うわー」ってなりましたね。希望を感じてしまっただけに揺り戻しでとんでもない絶望感。あのリサの姿で暗転してたら凄まじいトラウマ映画になったかもしれませんが、結果的にリサだけは助かったというのもそれはそれでえげつない。ラストショットの水中から見上げる海面、その美しさにいつまで経っても辿り着けないのではないか、と思えて背筋が凍ります。

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