2017
08.17

喰うか、狩られるか、あるいは。『東京喰種 トーキョーグール』感想。

tokyo_ghoul
2017年 日本 / 監督:萩原健太郎

あらすじ
亜門君!



人を喰らう存在「喰種(グール)」が人間に紛れている東京。喰種に襲われ重傷を負った青年カネキは、喰種の女性リゼの臓器を移植されたために半喰種になってしまい、人を食べることでしか生きられなくなってしまう。カネキは喰種の溜まり場である喫茶店「あんていく」の店長、芳村に救われるが、やがて喰種を駆逐しようとする人間たちとの戦いに巻き込まれていく……。石田スイの同名コミックを実写映画化したホラーアクション。

見た目も行動も人間と変わらないものの、捕食時は人間を遥かに越える身体能力と特殊な器官で人間を攻撃して食料とする「喰種(グール)」。人間でありながら半分この喰種となってしまった青年カネキが喰種と人間の間で苦悩しながら、喰種を抹殺しようとするCCG(喰種対策局)との戦いに否応なく関わっていきます。コミックは現在トータル26巻。未読ではありますが、導入部を丁寧に描いていると感じられます。ダークな世界観と触手系ホラーアクション、良いですねー!マスクや武器(クインケ)などのギミックも実にカッコよい。人間と化物の間を繋いでいくみたいな話かと思ったら、それ以上にマジョリティから見たマイノリティの苦難という話なのはちょっと驚きました。

カネキ役であるドラマ『デスノート』『64 ロクヨン』の窪田正孝は、イラつくほどのキョドり演技で喋り方も弱々しく変えつつ、それでいて喰種として暴れるときなどは振り切ってる感がスゴい。ヒロインのトーカ役である『HK 変態仮面』清水富美加は、この名前で世に出るのはこれが最後なんですかね……コメディエンヌっぷりを封印しアクションでも魅せてくれますよ……そして喰種を狩る側であるCCGの真戸呉緒役、『アイアムアヒーロー』大泉洋が最高です。これまたユーモアは全くない非情さが怖いくらいですよ亜門君!ほか、二面性がスゴい蒼井優、なかなかのクズっぷり白石隼也、ほんわかする相田翔子などが出演。

監督の萩原健太郎はこれが初長編ですかね。食肉グロ系みたいなシーンは思ったより少ないし(PG12ですが)『寄生獣』のために既視感はありますが、心情も丁寧に描きつつアクションも派手でイイ。現実と隣り合わせでありながら全く違う世界に放り込まれた男の恐怖と苦悩と覚醒。面白いです。

↓以下、ネタバレ含む。








闇に生きる者を描くせいか暗い画面が多いですが、単調さはなく、町の明かりや部屋の光源などでシーンにより雰囲気を作り出しています。ビジュアルは原作に沿ってるんでしょうがそこまで不自然さはないですね。喰種の攻撃器官である赫子(かぐね)の描写も喰種によって異なったり、CCGの使う武器クインケが喰種の赫子を使っているのも面白くて、身体能力の異なる喰種と人間がこのクインケによって対等、どころか喰種の方が劣勢という意外性をもたらします。亜門のクインケがどうもケバブに見えてしまうのがなんですが。

喰種同士の戦いはカネキと白石隼也のニシキ戦がありますが、狭い室内でのバトルは迫力。トロフィー立てて顔をぶつけるってアクションは意味不明で新鮮でした。ここではカネキの覚醒と友人ヒデとの決別も描かれて、ドラマ的にも転換点となっています。カネキがヒデを抱えて泣きながら顔をベロンと舐めるってのは窪田正孝のアドリブらしいですが、理性と本能のせめぎあいが表れてて良いですね。窪田正孝はスゴいな。普通の食料が食べられず部屋でのたうち回るシーンなどは、わざわざ口一杯頬張ってゲブゥア!と吐くのさすがにやり過ぎだとも思うんですが、それだけ「普通ではない」ということが強調されているとも言えます。

半喰種となったカネキはそれまでのマジョリティとしての立場から、差別され駆逐されるマイノリティの立場へと劇的に変化します。今まで見てきたものとは全く違う世界を見る。対岸の火事だった場所に今はいる。生まれながらの喰種と違い、どちらの世界も知っているカネキだからこそ感じることがあるわけです。トーカに食い物の味を教えろと言われ、真戸に「貴様らみたいな化け物が生きようと思うことが罪なのだ」と言われる。一方で人間の友人の持ってきた弁当を美味しそうなふりをして食べるトーカや、「悪いことだよね」と言いながら人肉しか食べれらない雛実を見る。「この世界は間違っている」という一見単純な台詞は、二つの世界を知る者が身を引き裂かれる思いで振り絞る言葉なんですね。

CCGは二人しか出てきませんが、大泉洋の真戸が自信満々で一切の慈悲を見せない態度、鈴木伸之演じる亜門のストイックな姿勢、二人とも過去に何かあったのだろうと思わせる描き方で。そこには人間だったころのカネキが思いもしなかった闇があるのでしょう。喰種でありながら平気で喰種を殺すニシキのような者がいるかと思えば、亜門がヘルプの刑事と信頼感を育んだ矢先に味わう喪失などもあり、主人公側が善であるとか人間側が悪であるなどと単純には割り切れない。そしてどちらも己の身を守るために戦わざるを得ないわけで、この辺りが葛藤としてドラマになっていますね。

カネキが食事をどうしていたのか、ずっとコーヒーなのか?というのが描写不足でよくわからなかったり、トーカに鍛えられる時間がかなり短期間に思えるわりにカネキがむっちゃ強くなってたり、喰種というわりにはあまり食肉シーンがないのがちょっと緩かったりはします(目玉がデザート的扱いなのは面白いですが)。すっごい地味に出てた佐々木希は一体なんなの?とかね(続編に向けた要員?)。でもその辺りは良い点のほうで十分賄えます。笛口親子の悲哀と娘の二種としての覚醒、カネキの超カッコいいマスク姿と、腕を交差して指をグネグネ動かす超カッコいいポーズ、世界観に上手くマッチしたワイヤーアクションとCGの融合。「原作も読んでみたい」と思わせるのは良い実写化ですよ。喰うことにも狩られることにも抗うカネキがどこまで行けるのか見てみたいので、続編も作って欲しいです。でもトーカ役は誰になるんだろうね……

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