2017
08.14

吸って吸われて呪われて。『ザ・マミー 呪われた砂漠の王女』感想。

The_Mummy
The Mummy / 2017年 アメリカ / 監督:アレックス・カーツマン

あらすじ
セテパイ!



中東の戦闘地帯で発見された石棺。それは2000年前の古代エジプトで闇堕ちした女王アマネットのものだった。考古学者のジェニーと共にこれを発見した米軍関係者ニックはイギリスに石棺を運ぼうとするが輸送機が墜落、やがてアマネットが目を覚ます……。トム・クルーズ主演のアクション・アドベンチャー。

『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』でもリブートされた1932年の『ミイラ再生』が、トム・クルーズ主演で再リブート。ユニバーサルスタジオが一連のモンスター映画を同一世界観で描くという企画「ダーク・ユニバース」の1作目になります。2000年の眠りから目覚めた古代エジプトの王女が人類への復讐のため襲い来る、それを阻止すべく立ち上がる男の戦いを描きます。

オカルティックな雰囲気でのアドベンチャーでアクションも豊富、とくればハラハラしながらも血沸き肉踊る冒険活劇を期待するところ。実際、乗ってる飛行機が墜落するときの迫力とか、王女がロンドンの街を襲うスペクタクルなど見所も色々あります。しかしそれらを繋ぐストーリーはどうにも中途半端。なんでそうなるの?という展開が続き、登場人物像もよくわからないまま話は流れていきます。監督のアレックス・カーツマンは製作や脚本では結構大作も手掛けてきてるようですが、監督作はこれが2作目くらい?野暮ったい演出が多いです。

主人公のニックは金儲けを目論んで発掘品を売りさばこうとする小悪党かと思いきや、世界を救う役目を担ったりもするという、結局どういうヤツなのかがハッキリしないのが痛い。しかしそれを演じるのがトム・クルーズであるため、『宇宙戦争』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などのように徐々にヒロイック性を目覚めさせていく人物に「見える」のが救い。いやもう本当にトムが主演で良かった。そして呪われし王女アマネット役である『キングスマン』『スター・トレック BEYOND』のソフィア・ブテラが非常に魅力的であるのも良いですね。この二人がいなかったら擁護できないところでした。

結果的にはヘタレ姿もカッコいい姿も見れるトム・クルーズ映画としてはなかなか面白かったんですけど、一本の映画としてはアドベンチャーとしてもホラーとしてもどうもパッとせず、ここからユニバース展開していく1作目としては非常に厳しい出足。これならユニバース構想から弾かれた『ドラキュラZERO』も仲間に入れてあげて全然いいくらいですよ。

↓以下、ネタバレ含む。








序盤でエジプトと関係ない十字軍の過去エピソードが始まるのにはここからどう転がるのかとい興味も持てるんですが、そのすぐあと今度は王女アマネットの背景を流暢に説明されるところで「あれ?」と思うんですよ。なんかテンポ悪いぞと。そこからはクエスチョンマークの連続。軍のお偉いさんは遺物を引き上げようとするときになぜかその遺物を盗もうとしたニックに手伝わせるし、デカいライトをいつの間にあんな深い奥底まで下ろしたのか、敵が来たから移動するって言ってるのになぜ余裕こいて石棺を運ぼうとしてるのか、そもそもなぜアマネットは飛行機を落とそうとするのか、あんな高所から落ちたらバラバラになりかねないと思うんですが。

女王がどこまで力があるのかもよくわかりません。飛行機のエンジンが壊れたり、鳥を操ったりしたのも彼女なのか?生気を吸って甦り、吸われた者をミイラ化させ操る、というのはまあわかりますが、ニックの相棒ヴェイルは生気を吸われなくても操られるし、スカラベで生者も操ることができるし、なぜか十字軍のミイラまでエジプトの女王に従うしで万能じゃないですか。しかも復活後の町中で見せる砂嵐の圧倒的パワー!銃で撃たれても平気だし、もう勝てる要素ないと思うんですが、なぜか鉤縄であっけなく捕まります。と言うか、実体化してるとはいえこの世のものではない呪いのミイラを捕獲とかできるの?すげーな。

そんな混乱をきたすような展開をさらにかき回し、結果一周して何となく落ち着くところまで持っていった感のあるトム・クルーズのニック。軍人なので一応戦闘力はあるということでミイラ相手にも大立ち回りですが、序盤は本当に小悪党な感じで心配になります。ただこれがちょっと笑えるタイプのトム・クルーズだとわかれば、グッと安心感が増すんですよ。ヒロイン登場時に彼女とは既に合体済みだったり、墜落後に復活した後まっぱコントを見せてくれたり、上半身脱がされてサワサワーッてされてウホーッ!ってなったり、ビンタで素晴らしい吹っ飛び方をしてくれたり……なんかこう書いてるとコメディだったような気がしてきますが、しっかり体を張ったアクションも披露してくれるので問題なし!女子トイレで相棒の亡霊と喋ってるときに女性が来て慌てるとか、最初から男子トイレに行けよって感じで笑います。

アマネット王女は怒りの中で時折見せる悲しげで苦しげな表情が実に良いです。ソフィア・ブテラはカワイイなあ。「セテパイ!」ってね。「センパイ!」みたいで萌えますね(拡大解釈)。本来のヒロインである考古学者ジェニー役は『アナベル 死霊館の人形』のアナベル・ウォーリスで、個人的には彼女も結構良かったんですが、作劇上いまいち魅力的に描かれてないのが残念。突然ニックに「あなたは善い人よ」みたいなことを言い出したときはさすがにポカンとしましたよ。あとおそらくユニバースを繋ぐ役割となるのであろうある人物を『ナイスガイズ!』のラッセル・クロウが演じていて、それがまさかのジキル博士というのはちょっとアガったものの、あんな危ない奴が組織のトップでいいのか?ラッセル・クロウとトム・クルーズがバトルを展開するというのは結構スゴい絵面だと思うんですが、そこに必然性がないのも引っかかります。ハイド化したときに「HAHAHAー!」って笑いながら襲ってくるのは愉快でしたけど。

水銀で悪の力を抑えるというそれっぽい感じとか、「テムズ川にも遺跡がある」という伏線によって地下鉄からいきなり水の中という荒技、ミイラが鎧で沈んでいくというのもちょっと面白い。瞳が二つになるというのも意味はよくわかりませんがインパクトはあるし、ニックがまさかのセト神化して、最後に生気を吸って倒すというのも(トム・クルーズなので)許せます。死を越えた生の力を得ることで、ニックがこのユニバースの中心として位置することになる、というのはなるほどなーと思いましたね。しかしそれ以上に不可解な点もやはり多いです。ニックの相棒のヴェイルは霊なのかミイラなのか?と言うかミイラってゾンビと同じような描き方でいいのか?自分で自分を刺すと自分を保てるという都合の良さや、なぜか最後に相棒を生き返らせ、なぜかまたエジプトへと去って行くニックとか。何より「冒険が命」と言いながら冒険のロマンがないのは致命的。『ハムナプトラ』や『リーグ・オブ・レジェンド』は面白かったな……などと思いながら観たくはなかったです。

この珍妙さはダーク・ユニバースにこだわったせいだけではないとは思います。でもそれが足を引っ張っているように感じるのは、冒頭のユニバーサルロゴから大々的にダーク・ユニバースを前面に出しちゃってる、そのドヤ顔感のせいもあるんですよねえ。ユニバースの今後の方向性がいまいちわかりませんが、「モンスターにはモンスターを戦わせる」というジキルの台詞からもどうやらバトル方面に振れていくんですかね。不安しかないんですけど……ともあれまたトム・クルーズが色々魅せてくれるなら観ざるをえないし、今後のラインナップとしてハビエル・バルデムの『フランケンシュタインの花嫁』、ジョニー・デップの『透明人間』というのは決まっているようなので、恐る恐る様子見というところですね。作品は怖くはなかったですが、今後の展開はホラーなみにドキドキです。

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