2017
08.08

若者は青春し、変身する。『パワーレンジャー』感想。

Power_Rangers
Power Rangers / 2017年 アメリカ / 監督:ディーン・イズラライト

あらすじ
善も悪もドーナツは好き。



問題を起こして補習クラス行きとなった高校生ジェイソンは、同じクラスのビリーと訪れた鉱山でたまたま居合わせたクラスメイト、キンバリー、トリニー、ザックらと共に不思議なコインを見つける。それは紀元前に地球を守った5人の戦士「パワーレンジャー」の超人的なパワーが身に付くものだった。彼らは復活した悪の戦士リタを阻止するため戦うことに……。スーパー戦隊ドラマをリブートしたヒーローアクション。

日本の「スーパー戦隊」シリーズを英語版にローカライズしたテレビドラマ、『パワーレンジャー』を映画化したもの。映画化自体は3度目らしいですが、リブートということで特に復習などはしなくても大丈夫でした。元ネタは日本の『ジュウレンジャー』なんですね。で、ハリウッドで戦隊ヒーローを作るとどうなるか、というのがポイントになるわけですが、これが面白い!偶然スーパーパワーを手に入れた5人の若者が、かつて世界を守った「パワーレンジャー」の1人ゾードンと機械生命体アルファ5に導かれ、地球を守るヒーローとなる、という話ですが、特筆すべきはそこに青春群像劇としての要素を強く絡めているということです。そのためになかなかヒーローに変身するところまでいかない、という弊害はありますが、それ以上にザ・青春!というドラマが丁寧に綴られるのが秀逸。

加えて思いの外エキサイティングな映像の数々に、戦隊もののお約束もしっかり押さえた絵面もあって実に良い。性別も人種もバラバラ、マイノリティでもある5人が、互いを思いあい受け入れるからこそ得る力が描かれます。パワーレンジャーの5人を演じるデイカー・モンゴメリー、ナオミ・スコット、ベッキー・Gらの顔ぶれもフレッシュ。敵となるリタ・レパルサ役の『ピッチ・パーフェクト』エリザベス・バンクスのすっとぼけた女王キャラも最高です。5人を導くゾードン役は『ブレイキング・バッド』『GODZILLA ゴジラ』のブライアン・クランストンですが、いや気付かないよほとんど壁だし。

スポーツ馬鹿、プリンセス、ガリ勉、アウトロー、不思議ちゃんという組合せに、補習クラスという設定はまさに『ブレックファスト・クラブ』そのものですが、組合せ方が上手くて感心します。手にしたパワーを試すときの若者らしさなどは『クロニクル』を彷彿とさせるし、若者の成長と強大な敵との戦いという点では『ミュータント・タートルズ』を思い出します。多少シーンの繋ぎが雑なところもありますが、これまでのヒーローチームとはひと味違う、青春×戦隊ヒーローものとして実に楽しいです。

↓以下、ネタバレ含む。








■若者たちは青春する

ジェイソン、ビリー、キンバリーは序盤からエピソードが出てきますが、ザックとトリニーが鉱山で合流するところはやや唐突。実際は事前に少し映ってはいますが、最初にもう少しハッキリ顔を映してほしかったかなあとは思います。他にも余韻を感じる間もなくシーンが切り替わったり、そこはもうちょい掘り下げてもいいのではというシーンがあったりと、多少繋ぎが雑に感じるところも。とは言え、ちょっとしたマイナスなら許せてしまえるほど、青春ものとしての魅力が強いです。

キャラクターは人種が白人、黒人からアジア系、ラテン系までを配しており、典型的なステレオタイプと思わせて自閉症スペクトラム、レズビアン、はぐれ者といったマイノリティでもあります。スポーツで名の通ったジェイソンは前科者であり、華やかな人気者であるはずのキムは友人を裏切って村八分。そして皆が「普通」とは違う自分に程度の差はあれ悩んでいます。それがスーパーパワーを手に入れ訓練に励むうちに、それぞれの印象が当初から変わってくるのが良いんですよ。ジェイソンが徐々に発揮していくリーダーとしての資質。人とは馴染めないと思っていたビリーが誰より早く見せる変身。傲慢に思えたザックが実は母を思う好青年であり、やがて気付く自身より他者を思う気持ち。心を開こうとしなかったトリニーのカミングアウト。自分の非を頭ではわかっていたキムがついにそれを認める思い。そうやって一段階前に進むことで人としての成長を見せ、「世界を守る」という大それたことを成すに相応しい資格を得ていくわけです。


■若者たちは変身する

動きにキレが出てきてユーモアも加わった訓練シーンなどは、訓練と言うより青春のきらめき!という感じでなんか泣きそうになるんですけど。ドーナツ取り合う女子二人の華麗でキュートなシーンにも萌えます。もう変身しなくてもこいつらのドラマを見てるだけでいいんじゃないか、などと思ってしまうんですが(よくない)、目標があるから一丸となってそこに向かえるわけです。自分語りではなく仲間のために犠牲になれる心、それを持つことで変身ができるようになる、というのがヒーローチームとしての重要な転換点になっているんですね。成長=変身というのはわかりやすいけど上手くハマっているし、明確な恋愛要素は排除したことでバランスも保っています。自己のためにレンジャーたちを鍛えていたと思わせたゾードン(壁の人)が、最後は自分の脱出よりビリー復活を優先するのも熱い。

そんな長い紆余曲折があるだけに、変身した5人が横並びで歩いてくるシーンは激熱いわけですよ。ここからはそれまでのフラストレーションを吹き飛ばすかのように敵ザコとのバトルが展開、動物型メカのゾードを乗り回し(ゾイド実写版の趣もあるな)、町を破壊するリタへと迫っていきます。ポーズを取って「パワーレンジャー!」みたいな名乗りシーンはさすがにないですが、並んだ5人の顔を斜め横から映すショットはイカすし、しっかり採石場で戦ったりするのはお約束を踏まえていて好感。スーツ姿でも顔だけは見せるのは日本と異なるところですが、既に5人に好印象抱いちゃってるのでこれはむしろ顔が見えて正解ですかね。


■若者たちは世界を守る

そしてジオクリスタルを巡りリタと相対したときに、出ました巨大な敵。金汁振り撒きながら暴れるデカブツは資産価値高そうでゴージャスです。そしてゾードが合体して巨大メカ登場!ああしかし、地底からせり上がってくる巨躯はそれはそれでカッコいいんですが、せっかくなのでここは合体シーンを見せてほしかった!ゾードがギミック多そうな作りだっただけに、そこだけは残念。でもまあ手足がそれぞれ息を合わせて操作しないと上手く動かないというのが、力を合わせてやったるぜ!という感じで面白いですね。巨大感は十分出ているし、とどめがバックドロップというのも、あれが伏線だったのか!と意表を突いてて愉快です。

細かい点も楽しい。アルファ5のおちゃらけた感じとか、クリスピー・クリームの使い方とか、最後にリタをぶん投げてキラーン!という漫画のような画とか。崖下の川(湖?)に落ちて基地に出るところの幻想的な様子や(あれ毎回びしょ濡れなのでは)、ジョークがわからないと言っていたビリーが最後にはジョークを飛ばし「マザファッ……ママはいい人」って言い直したりするのも面白いです。ちなみにラストに転校生として名前を呼ばれるトミー・オリバーは、オリジナルのドラマでは6人目のパワーレンジャーとなる人物のようですね。普通の高校生によるヒーロー誕生譚が描かれた今作、興収はちょっと厳しそうですが、ぜひ続編でさらなる活躍を観たいところです。

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