2017
07.31

決めるのは限界ではなく未来。『カーズ クロスロード』感想。

Cars_3
Cars 3 / 2017年 アメリカ / 監督:ブライアン・フィー

あらすじ
カッチャゥ!(かつての流行語・泣)



ハイテク装備の次世代レーシングカーの台頭、そしてまさかの大クラッシュで挫折し、進退極まったレーシングカーのライトニング・マックィーン。再起のために最新技術を誇るトレーニング施設で、トレーナーのクルーズとともに訓練を始めるマックィーンだったが……。ピクサーの長編アニメ『カーズ』シリーズ第3作。

『ファインデング・ドリー』以来となるピクサー作品は、喋る車の世界を描く『カーズ』シリーズの3作目。ピクサー作品のなかでもいまいち惹かれずにだいぶ後の方に観たシリーズなんですが、栄光と挫折、再起を描いた1作目を観て「ナメててごめんなさい」と思ったもんです。2作目も世間の評判はいまいちですが、スパイ映画テイストのスピンオフとして見ればそれなりに楽しかったですよ。

そして今作では、既にベテランの域に達したマックィーンが、ハイテク世代の台頭によりレースに勝てなくなり、さらには思わぬクラッシュで挫折を味わい、人生の岐路に立たされるという話。1作目に通じる復活の話ながら少し意味合いが変わり、ベテランが若い力に挑むという再起の話なんですね。年を重ね、栄光は過去となり、厳しい現実と時の流れの残酷さが襲い掛かる……ってこれを子供に大人気の『カーズ』でやるのか!というのに驚き。加えてそこに「夢破れし者」の視点が交わり、人生の斜陽と輝きを同時に描き出す。これには唸ります。

前2作の監督ジョン・ラセターは製作総指揮にまわり、ストーリーボードアーティストなどで参加したブライアン・フィーが初監督。マックィーン役のオーウェン・ウィルソンらの続投陣に加え、次世代レーサーのジャクソン・ストーム役にアーミー・ハマー、かつての名トレーナーのスモーキー役にクリス・クーパーなどが参加してます。ラジエーター・スプリングスの面々もしっかり登場。ただ前作で前に出過ぎたせいか、名物キャラのメーターはあまり目立たないですね。

同世代レーサーたちが次々と引退し、自身も衝撃的な事故で今後の身の振り方を迫られるマックィーン。仲間たちの暖かさや笑いなどは残しつつも、人生における決断というヘヴィなテーマを、迫力あるレースシーンと共に映し出す。ちょっと疲れた大人にこそ響くような出来です。

ちなみに同時上映の短編『LOU』(Lost and fOUnd)は変形!合体!自由自在!というのが楽しい。ものを大事にすることの大切さも同時に教えてくれる、なんだか愉快でちょっとせつない良作です。

↓以下、ネタバレ含む。








そう言えばこのシリーズを劇場で観たのは初めてなんですが、大きいスクリーンで観ると映像がキレイ。マックィーンの車体に周囲が映り込んだり、クルーズの目が自分のボンネットに映ってたり、レース会場の観客たちも個性があったりと、スゴく細かいところまで描かれてますね。加えて随所に見られる車ならではの描写は止め絵だとそこまでではなくても、動くと実に面白さがあったりします。レースシーンも実写ではありえないアニメならではの動きがあって楽しい。こういう表現上の工夫をしっかり詰めているところがピクサー・クオリティです。

しかし軽快なテンポや親しみやすい絵柄の一方で、物語は実にシビア。一度破れた者が再起を目指すというのは1作目にも通じますが、老いたことによる現実の厳しさにさらされ、共に走った者たちは次々に一線を退き、いつまでも同じではいられないという残酷さを突き付けてくる。誰にでも訪れる人生の転機というものが描かれるわけです。『カーズ』の世界観だから少し緩和されてはいますが、これは人間のドラマに置き換えることも可能な骨太さ。しかしそんな老いを越える話かと思ったら、これが夢破れし者の悲哀をクローズアップする話でもあるというのに驚きます。「勝てば引退は自分で決める」というのが伏線になってるんですね。

着地点としては、寂しさはあるものの納得ではあります。ただレース途中でいきなりクルーズに引き継ぐのはどうにも唐突さが拭えません。クルーズの過去、マックィーンへの憧れ、障害レースでの活躍と、クルーズに焦点を当てて積み重ねてはいるので不自然とは言いませんが、肝心のマックィーンが全力を出し切れず終わっているように思えるし、結局ベテランは後進を育てるしかないのか、というちょっとイヤな刺さり方なんですよ。クルーズと共に走るうちに塗装が剥がれて元の装飾が出てくるマックィーンに「まだイケる」感があって燃えるだけになおさら。せめて一度は経験を活かした技術でマックィーン自身が勝って、最終レースはクルーズに託す、みたいな展開なら……でもそれだと冗長だし都合がよすぎるかなあ。 そんなのも踏まえた結果が二人そろっての表彰台なんでしょうけど。

でもドクの師匠のスモーキーを担ぎ出してきたときは同じことの繰り返しに思えたので、それで終わらないというのは良いサプライズではあります。限界を決めたわけではなく、進むべき未来を決めたわけですね。何より最後のレースでそれまで出てきたダートレースやフワフワ雲など、マックィーンとラミレスが共に経験してきた全てを投入していく展開はアツいです。しかも最後の最後で放つ、ドクがかつて見せた回転ジャンプ。その瞬間にスモーキーからドク、ドクからマックィーン、そしてクルーズへ、「継承」という線が繋がるんですね。だから納得できるのです。そして夢を託す者を見つけたマックィーンと、破れた夢を取り戻したクルーズ。二者の人生の交差、まさにクロスロードです。

最後は全てが丸く収まった感じですが、ドクと同じカラーリングに変えたマックィーンの姿はこれ以上の続編はないということも示しており、なんとも清々しい寂しさがあります。まあ『カーズ』シリーズは短編も相当作られてるしまだまだいくらでも作れるだろうから、また戻ってくるかもしれませんね。

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