2017
07.21

命は強く、人生は儚い。『ライフ』感想。

life
Life / 2017年 アメリカ / 監督:ダニエル・エスピノーサ

あらすじ
名付けた学校の立場が……。



火星で採取された未知の生命体の細胞を調査するため、ISS(国際宇宙ステーション)で調査を開始した6人の宇宙飛行士。しかし次第に成長していく生命体は、やがて宇宙飛行士たちを襲い始める……。宇宙を舞台にしたSFスリラー。

宇宙に浮かぶISSという閉鎖空間で、未知の生命体に襲われる恐怖。よくあるSFベースのスリラーではあるんですが、これが面白い。舞台となるのが現代の(もしくはせいぜい少し先の未来の)ISSだという点を丁寧な作りで見せているのがまず好感度高いです。閉鎖空間で逃げたり襲われたりという恐怖も様々なパターンで描いていて、決して表面だけなぞったわけではない工夫が随所に見られます。無重力のなかを浮遊しながらの攻防ってのはわりと珍しいんじゃないですかね。加えて人物造形も簡潔に、かつくどくない適度さで掘り下げているので入り込みやすい。いやあ良くできてます。

人物の掘り下げには豪華役者陣の存在感も大きく寄与しています。ローリー役に『デッドプール』のライアン・レイノルズ、デヴィッド役に『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』のジェイク・ギレンホール、ミランダ役に『ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション』のレベッカ・ファーガソン、ショウ役に『ウルヴァリン:SAMURAI』の我らが真田広之。ほかヒュー役にアリヨン・バカーレ、キャット役にオルガ・ディホビチナヤで、ほぼこの6人しか出ませんが、この人数構成もちょうどいい感じです。

タイトルの出方がちょっと『エイリアン』っぽいとか、あちこちで『ゼロ・グラビティ』を彷彿とさせるとか、他にも同様のジャンルものとしての影響はあるだろうし既視感はなくはないですが、それでもフレッシュな点もあって上手く組み合わせてるなあという印象。安心してスリルを楽しめます。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭の長回し風ワンカットやISSクラッシュシーンは『ゼロ・グラビティ』を思わせますが、前者はそのワンカットのなかでISSの構造を見せつつ主要人物を一通り登場させていたり、後者は二つの構造物が激突することでより衝撃度が高まっていたりと、まんまではない工夫が良いですよ。センサーで居場所がわかるのは『エイリアン2』みたいですが、それを3D映像で示したりなんてのもありますね。

全編通してほぼ無重力なため、移動がスムーズなときもあれば地に足がつかない覚束なさもあったりして面白い。周囲が宇宙空間であることの逃げ道のなさや、部屋に閉じ籠ったときやかなり狭い通路を抜けるときのスペースのなさ、逃げ込んだ睡眠用カプセルで身動き取れずにカプセルごと絡み付かれたりなど、閉塞感にも変化があってそれぞれでのピンチが描かれるのも工夫ですね。宇宙服のなかで溺れるというのは特に斬新。ISSは撮影時に巨大なセットを実際に組んだんだそうで、それによる実在感も上手く出てますよ。あと登場人物が疑問に思うほどの愚かな行動をしない、というのがイイ。愚かに見えたとしても、そのときは焦っていたりとか恐怖に駆られていたりといった描写も同時に描かれているのが丁寧です。

最後に生き残るのは一人かせいぜい二人だろうと予想はするものの、役者陣が豪華なだけに殺られる順番が予想が付かないし、それぞれが「まさかの」という展開を見せるのも面白いところです。ローリーは最もサバイブ能力がありそうだし、それを証明するかのようにヒロイックな行動を取るものの……とか、船長のキャットは混乱してレバーを反対に回してると思わせて実は……とか、ショウは赤ちゃん誕生というのが死亡フラグすぎるものの「メイ、帰るぞ」の意思によってひょっとしたら……などと思っちゃいます。ヒューが途中で見せる不可解な表情には「おや」と思いますが、足の感覚がないために気付かなかったのでしょうかね。「本能であって悪意ではない」と専門家ゆえに最後までヤツを否定しきれないところ、「上へ、上へ」という弔辞を自ら言うところに哀れみを感じます。

異星生物にカルビンという名前を付けてることにより、単なるモンスターという枠を越えて一個の意思ある生命体として存在感が増します。カルビンの造形は異星人にありがちなゴテゴテしたデザインとは違う滑らかさがあって、悪くないと思いますよ。成長して体を広げたシルエットはむしろ『バトルシップ』の宇宙船にちょっと似てるかも。人間のことは水分の詰まった袋くらいにしか思ってないのがヤバいし、ゴリゴリ砕くし、グルグル巻き付くし、死体の内部に侵入してガクガク揺らすし、となかなかエグいです。最初は小さな単細胞生物でしかなかったのに、実験動物のように扱ったり、ヒューなどはペットのように愛着を感じたりして、結果しっぺ返しを食らうというのは、人の放漫さを暗に示しているかのよう。

ミランダが再三「隔離」を口にするように安全対策はしているわけで、そこの対応は結構現実的に描いていると思うんですよ。それでも予想を超えてくるところが、そもそも未知の生物をナメてはいけない、という人類への警告に繋がるんですね。そのうえ隔離対応が自分たちの首をしめてしまうというのが皮肉。しかしそこでデヴィッドが「80億人のクソがいる場所に戻りたくない」と、人類を否定する立場で作戦を提案するのが面白い。シリアで軍医をした過去による人嫌いという設定がここで上手く活かされています。しかも否定しながら結果として人類を救うための行動でもあるんですね。

それでいてラストの救いのなさ。最後まで人類が自ら招いた危機というのを徹底させています。ただ救命艇が着水してもシーンが続く辺りで、正直展開が予想できてしまうのがちょっと残念。あそこを無音じゃなくて感動的な音楽で盛り上げてたりしたら騙されたなあ。でもそれも安っぽいかもしれないので難しいところかな。ともあれそこに映されるのは、未知の生命が新たな地で育む「ライフ」です。字面だけ見ると希望を感じるのに、人類にとっては「ライフ」の終焉でもある、というこの絶望。不穏さしかないショットでカメラが無情にも引いていくのがたまらんです。

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