2017
07.17

己を縛る掟に銃弾を。『ジョン・ウィック チャプター2』感想。

John_Wick_2
John Wick: Chapter 2 / 2017年 アメリカ / 監督:チャド・スタエルスキ

あらすじ
全員殺す。



マフィア相手の壮絶な復讐劇を終えた元殺し屋ジョン・ウィック。しかしイタリアン・マフィアのサンティーノによる殺しの依頼を断ったために、自宅を爆破されてしまう。復讐を開始するジョンだったが、7億円もの懸賞金をかけられて世界中の殺し屋から狙われることに……。キアヌ・リーブス主演のアクション『ジョン・ウィック』の続編。監督は前作に続きチャド・スタエルスキ。

伝説の元殺し屋ジョン・ウィックの復讐を描くシリーズ続編。前作では亡き妻の残した愛犬をロシアン・マフィアのクソ野郎に殺された怒りで、組織ごと壊滅させて伝説を更新したジョン・ウィック。今作はその5日後から話が始まります。ようやく復讐を終えて新たな愛犬と共に穏やかな生活に戻ろうとしたジョンに、そんなことは許されないとばかりに血の契約「誓印」を盾に仕事を依頼するマフィアのサンティーノ。かくして再びジョンの戦いが始まるわけですが、これがもう最高!最高です!

銃とカンフーを融合させ柔術を取り込んだアクション「ガン・フー」は今作でも健在で、かつアクションシーンは大幅増量!敵の数も大幅増員!独特の裏社会ファンタジーはさらに世界観を広げ、終始ワクワクとハラハラとニヤニヤが止まらない。このスケールアップは『エイリアン』に対する『エイリアン2』、『ターミネーター』に対する『ターミネーター2』という感じですよ。まさに正しい続編の鏡。やったぜキアヌ!

車修理屋のオーレリオ役ジョン・レイグイザモ、ホテルオーナーのウィンストン役イアン・マクシェーンなどの続投陣に加え、不敵な存在感のサンティーノに『サード・パーソン』リッカルド・スカマルチョ、ジョンと張る実力の殺し屋カシアンに『ラン・オールナイト』の殺し屋役も鮮烈だったコモン、サンティーノの片腕アレスに『トリプルX:再起動』のクリ勃起ことルビー・ローズ。またキアヌとは『マトリックス レボリューションズ』以来の共演となるローレンス・フィッシュバーンが出てるのには感慨深いものがあります。

車、銃、格闘といった数々のアクションはカットを細切れにせずしっかり見せ、かつロケーションや構成も工夫があって実にイイ。ハードボイルドな台詞のやり取りにシビれ、裏社会の様々な美学に恍惚とし、犬に和む。細かい点まで色々語りたくなる魅力が満載です。超好き。

↓以下、ネタバレ含む。








■正統なる続編の味わい

前作から5日という設定もあるものの、前作ラストで夜の闇に消えていったジョンが今度は闇のなかから現れるという序盤、しかも対するは前作ボス、ヴィゴの弟(ピーター・ストーメアだ!)で、「たかが犬一匹で」という言いぐさやジョンの名を聞いて「オゥ……」と言葉に詰まる部下など前作の流れのトレース、字幕の無駄に凝った感じなど、ああ続編だなあと嬉しくなります。そう言えば宙に浮いたままだった盗まれた車の問題をしっかり回収する、しかもそれが車だけでなく妻との写真を取り戻すためでもある、というのにも連続性があります。

ジョン・レイグイザモのオーレリオ登場は嬉しいところ。廃棄寸前の事故車(事故じゃないけど)を「修理できる」と言い切るのがシビれる!警官のジミーも地味に再登場。そして何と言ってもウィンストンのコンチネンタル・ホテルですよ。今回はあのホテルが世界展開であることがわかり、イタリアのコンチネンタルも登場(オーナーがジャンゴことフランコ・ネロ!)。しかも銃のソムリエ、防弾スーツの仕立て屋、地図と鍵屋という裏社会ショップが出てきて、これを並行に映す準備シーンにはワクワクしまくりです。防弾を施してまでスーツを着用するこだわりが様式美ですねえ。銃ソムリエとのコース料理をオーダーするかのようなやり取り、「デザートは」の問いに「おやおやフルコースですか」みたいなソムリエの顔や「よいパーティーを」という送り出し方など最高。ニューヨーク・コンチネンタルのあのフロント係も相変わらず味があるし、個人的に犬まで預かってくれるというのが素晴らしいサービスぶり。

このどこかシックで社交界のような裏社会の描き方がファンタジックさがあって楽しいです。独自のコインによって利用できるというのが良いですね。他にも銃やコインを預かる貸金庫とか(「よい狩りを」という台詞がまた愉快)、アカウント部なんてクラシックなパソコンのモニタやエアシューターなどのレトロな事務所的雰囲気にタトゥーだらけの事務員がてきぱき働くというギャップがたまりません。加えてホームレス社会ではキングが独自の組織を作り上げていたりもします。前作の閉じて謎めいた雰囲気も良かったですが、世界観を大幅に拡げながらそれが上手くハマっている今作もスゴく楽しいんです。


■増量アクションの醍醐味

そして何と言ってもアクションの面白さ。あまりカットを割らずしっかり流れを見せてのアクションは見やすく、つまり何をやっているか分かるのでよりエキサイトします。カットを割らないということはそれだけ役者がしっかり動かなければいけないということで、その点でキアヌは実によくやってます。キアヌのアクションはキレッキレとは言いませんが決してスピードがないわけでなく、その塩梅が却って「ああアクション映画を観てるなあ」と強く感じるんですよ。柔術を駆使した投げや極め技、足を撃って怯ませた後のヘッドショットなど方向性がハッキリしてるのが良いし、銃の持ち替えやリロードがちゃんと合間に入るのが嘘くささを軽減します。

序盤の「車での格闘」には結構度肝を抜かれますね。せっかく取り戻した車をボコボコに潰しながらの車同士のぶつかり合い、配給が「カー・フー」と名付けてるのを見たときは「えー」と思いましたが、あながち間違ってもいないですね。曲がりながら斜めにジャンプする車とか、ドアが吹っ飛びむっちゃ痛そうに転げるライダーとか、あとぶつかられてドアのない座席から転がり落ちるというのもフレッシュ。何度も車にはねられては立ち上がるジョンですが、車の方も最後までエンジンはかかって走り続ける、というしぶとさが持ち主に似てます。

世界中の殺し屋に狙われる、ということで、殺し屋に襲われるシーンもまた地下の楽器弾きやなかなか死なないスモウレスラー(死ななすぎ)などが並行に描かれます。そして伝説として語られていた「鉛筆で殺す」をついにビジュアル化したのには喝采!つーかどんだけ殺し屋がいるんだこの世界は。久々に「続編は物量」というのを見た気がします。あとサンティーノの腹心アレス、演じるルビー・ローズが仄かな色っぽさと共に回転ローキックなどで魅せてくれます。劇中ではいっぱい人が死にますが、観てる方としてはルビー・ローズのウィンクに死にますね。いやもう最高。

今回はジョンに匹敵する凄腕として、コモン演じるカシアンが明確にライバルとして登場するのが前作にはなかった良さですね。カシアンがジョンと出会ったときに一瞬で事態を察し「仕事か」「遺憾ながら」の言葉で確信するのとかシビれます。カシアンとジアナは信頼関係以上のものを微かに感じさせますが、その匙加減も絶妙。互角の勝負を繰り広げながらイタリアのコンチネンタルに飛び込んだジョンとカシアンが、オーナーに「やめれ」と言われて「サーセン」てなるのは笑います。しかもさっきまで殺しあってた二人がバーで飲んでるというのがシュールでイイ。真っ白な内装が印象的な駅で通路を挟んだ上下を歩きながらサイレンサーでピシピシ撃ち合うのも可笑しい。そして駅のホームを挟んでの対峙から電車内で徐々に近付いてのナイフ戦。カシアンは死んだわけではない(少なくともあのシーンでは)ので、続編での再登場は期待したいです。


■ハードボイルドな美学

ストーリー的には、前作で触れられていたジョンが引退する条件とされた「不可能な仕事」にサンティーノの協力があったことがわかります。ただ今作の復讐は家を焼かれたから、だけではないんですね。そもそもジョンはサンティーノに「家を返す」と言っているし、家自体に妻との思い出を想起させるという描写もありません。前作で子犬のデイジーを殺されて奪われた生きる希望は、復讐を終えても戻ってきません。今回ジョンが求めたのは前作でボスに言われた世界は追ってくるという呪い、その逃れられない過去との訣別であり、因果応報から逃れるために平穏な暮らしを手に入れようとしたのではないか、と思えるのです。その平穏を「血の誓印」という裏社会の縛りを盾にサンティーノは奪ったわけです。これだけだと復讐の理由にはちょっと弱いですが、そこにかつて信頼関係にあったと思われる姉ジアナの殺しを依頼されたこと、それが否が応でも過去に繋がることで補強されていると言えます。貸金庫で吠えるジョンの怒りがそれを物語ります。

ジョンの他者とのやり取りはどれもイイ。死に行くジアナの手を取るジョンには確かに友人であることが伺えてせつないし、その行動は「ヘレンはどう思うかしら」というジアナの言葉に答えているようでもあります。ロウソクの並ぶ広いバスルームに、血に染まるバスタブが幻想的。また、カシアンがバーで奢ったときの「プロの礼儀だ」に対し、最後にナイフを抜くと死ぬと告げ「プロの礼儀だ」と返すジョンとか、ホテルでアレスが「また会いましょう」と言ったときは「今度会ったら殺す」と返したジョンが、アレスが最後に死に行くときの「また会いましょう」には「いいとも(sure)」と返したり、かつてキングに背後から撃つか傷を押さえて去るかの選択を与えたジョンが、いままた「戦争か、銃を与えるか」という選択を突き付けるなど、繰り返して重ねるシーンにハードボイルドが感じられて好きですねえ。

細かい点では、英語にロシア語にイタリア語に手話までこなすグローバル感や、銃の説明がいちいち細かい点などもプロっぽさがあって面白いです。ジアナ暗殺に向かうカタコンベ地下道であらかじめあちこちに銃を仕込んでいたのは、サンティーノが消しにくることを予期していたんだろうな、というのもプロの予見という感じですね。ラストの戦いが美術館というのには独特の美意識が感じられるし、その美術館での撃ち合いで美術品が壊れたり傷付いたりしないのがね、イイんですよ(台座は撃たれるけど)。最後の「魂の反映展」での鏡を使った幻惑的な舞台は『燃えよドラゴン』みたいで、ああこの監督きっと好きなんだろうなあと思って好感度が上がります。あとキングはジョンに弾丸7発しか渡しませんが、ジョンは結構な弾数を使うので取っ掛かりにしかならない、というのがコンチネンタルと違って厳しいですね。


■ルールに背を向けて

ラストの取り返しのつかなさは結構ショックです。このジョンのルール破りな終わらせ方は、それまでの恩恵を捨て去り、名声をも捨てることでもあります。殺し屋社会のルールは絶対である、という世界観が徹底されていただけに、これは怒りに任せた浅はかな行為にも思えます。何よりシリーズの楽しさのひとつであるコンチネンタルのサービスがもう受けられないというのが寂しくて心許ないですね。どこかファンタジックだった拠り所を失うことが果たしてシリーズにどう影響を与えるのかは未知数で、思いきった結末と言えます。

なぜジョンは自らルールを破ったのか。妻を失い、人生を失い、家を失ったジョンは、取り戻すべき平穏を既に喪失しました。格闘のさなかスマホは壊れて妻の映像を見ることもできない。そしてサンティーノは自分を殺しても何も変わらない、と言い放ちます。そんな殺し屋稼業が招いた喪失を全て打ち消すために、ジョンは最後の銃弾を撃ち込んだのでしょう。殺し屋としての縛りさえもブチ壊して自分を取り戻す、そんな思いが、最後にウィンストンに向かって「襲ってくる奴は全員殺す」という決意となって表れます。「そうだろうとも」と笑うウィンストンには、困難な道を選択したジョンへの親心さえ垣間見えます。

犬と共に駆けていくジョンを見つめる沿道の人々。なかには協力してくれたホームレス暗殺者の顔も見られ、今日の味方も明日の敵になりそうな予感を抱かせます。つーかどんだけ殺し屋がいるんだこの世界は(二回目)。そんななかを疾走するジョンの後ろ姿には、世界を敵に回してでも貫こうとする孤高を感じます。これが果たして「追放」ではなく「解放」となりえるのか、続編が待ち遠しいですね。そう言えば今回は犬に名前が付けられていません。必要以上に情が移るのを避けたのか、あるいは名付ける妻がもういないからなのか。それはわかりませんが、犬に名前を付ける日がきたとき、それがジョンが再び平穏を取り戻すときなのかもしれません。

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