2017
07.06

由緒正しき成り上がり!『キング・アーサー』感想。

King_Arthur
King Arthur: Legend of the Sword / 2017年 アメリカ / 監督:ガイ・リッチー

あらすじ
聖・剣・無・双!



王の子でありながら、叔父の裏切りに会い路地裏のスラムで育った青年アーサー。あるとき岩に刺さったまま誰にも引き抜けなかった伝説の聖剣エクスカリバーを抜いてしまったアーサーは、やがて救世主として成長していくことになる……。『シャーロック・ホームズ』『コードネーム U.N.C.L.E.』のガイ・リッチー監督によるアクション・ドラマ。

ガイ・リッチーが騎士道物語として語り継がれるアーサー王伝説を描きます。幼くして城を追われ娼館で身分を知らず育てられた王子のアーサーは、肉体的にもヤンキー的にも逞しく成長し、やがて王であるヴォーティガンと相対することになります。2004年のアントワーン・フークア監督作『キング・アーサー』(これも好き)というのもあって紛らわしいですね。最初は『聖剣無双』という副題が付いてましたが、権利の関係か何かで削除されてしまいました。原題にもサブタイトルあるから何か付けてほしかったですけどね。

しかも本作はまさに『聖剣無双』というのがぴったりハマるのですよ。クールな映像とスタイリッシュなアクション、と言葉にすると陳腐ですが、まさにそんな感じのガイ・リッチー節炸裂。アーサー王伝説ってこんなんだったのか!と目から鱗の連続です。「いや違うだろ……」という冷静な心の声はこの際無視だ。聖剣は無双なのだ!そして両手で持つのが正しいのだ!王を鍛えたのはカンフーマスターなのだ!メイジはスゴいのだ!象はデカいのだ!と、新解釈にもほどがあるという感じで愉快です。

「スラムのガキから王になれ」を文字通り実践するアーサー役は『パシフィック・リム』のチャーリー・ハナム。キングというよりギャングみたいな威圧感をたぎらせ聖剣を操るアーサーは、画像だけ見ると若干地味ですが本編で動く姿は実にワイルドで魅力的。対するは、なぜにそこまでというほど権力の虜となるヴォーティガン、演じるは『シャーロック・ホームズ』でも監督と組んだジュード・ロウ。ほか、アーサーの父ユーサー王には『ハルク』のエリック・バナ、ペディヴィア卿に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のジャイモン・フンスー、メイジ役に『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』のアストリッド・ベルジェ=フリスベ、グースファット・ビルに『シング・ストリート 未来へのうた』のエイダン・ギレン。

剣と魔法のファンタジーさもありながら、独特の世界観を貫く貴種流離譚。アーサーの成長過程がテンポよく語られるスピード感や、したたかながら勢いのある仲間たちとのやり取りも良いです。正直最初観たときの印象はいまいちだったんですが、もう一度観たら面白いような予感がして二回目観たら、エラい面白かったです。繰り返し観た方が楽しめる系ですね。観た後は持ってる傘を聖剣のように掲げそうになったりするので雨の日は要注意です。

↓以下、ネタバレ含む。








■イカす映像とテンポの功罪

初っぱなから『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』よりさらにデカい巨象や、モルドレッドの邪悪パゥワーで粉々に吹っ飛ぶ人間たちには度肝を抜かれます。そんななか馬で駆け象に飛び移るユーサー王!(ああ、しかし馬が……)演じるエリック・バナは『トロイ』のときよりさらに風格を増しててイイ。そんな感じで剣と魔法と王政というおおよその世界観をアバンタイトルで描くんですね。そしてタイトルの出し方、同時に流れるテーマ曲には実にシビれます。

短いカットでガンガン繋いでいくシーンでのテンポの良さも実に気持ちいい。序盤でアーサーが娼婦たちに拾われて成長する過程、小さい頃は金を取られ殴られまくってたのが徐々に強くなり、ついには女を殴る男を追い出し、金も溜まって、格闘勝負にも勝つように。ハナムがシャドウしながら吠えるのが音楽とリンクするところは特にアガります。また、ヴァイキングとのいざこざ経緯説明も同様ですが、こちらは「どこのジョージ?」とか「どこのマイク?」とかすっとぼけた感じが笑えるし、一体何の話なんだ?と思ってたらヴォーティガンと繋がってたりして面白い。ただこの演出も良い効果ばかりではなく、アーサーたちが町から逃げるところから聖剣で倒す前までの流れではさほど工夫もなく、一定すぎるテンポが裏目に出て眠気を誘われたりもしましたが。

とは言え映像で魅せるシーンは純粋に「カッコいいな~」となるものがやはり多く、聖剣を抜くため群衆を掻き分けていくアーサーの一人だけ白い服が目立つ様とか、聖剣を扱うときに足元の小石が浮かび上がるコミック的とも言える描写とか、手をかざすだけで民を平伏させていくヴォーティガンとか、いくらでも挙げられますね。ヴォーティガンが契約を結ぶ異形たちは『ベルセルク』を彷彿とさせるし、ブラックアイランズの大ネズミや狼、後半の鷹の目ヴィジョンや大蛇アタックなどの動物大行進には和むし(和まねーよ)、そしてスローと回転と遠近感を駆使した聖剣無双シーンには「エクスカリバァァ!」と燃えまくりです。


■アーサーとヴォーティガン

チャーリー・ハナムのアーサーは最初はヤンキーの胴元みたいですが……違うな、終始そんな感じだな。落ち着いた態度と口八丁でピンチを切り抜けようとする世渡りとか、文句言ってくる奴を睨み一つで引っ込ませたりとか、『トリプルX:再起動』のヴィン・ディーゼルみたいなゴツいコート着たビジュアルとか、でも実は蛇が苦手とか、まあ愉快です。ペディヴィア卿も最初は気に入らないと明言するほどだし、グースファット・ビルは序盤では売られ中盤では殴られ、メイジのことは口説く。その前にカンフー・ジョージってなんだよ!王を鍛えたのがカンフー使いってのが熱すぎです。

それでも徐々に王の風格みたいなものが感じられてきます。それは仲間と友情を深めたりするとかではなく、あくまで行動でカリスマ性を示す姿が力強いからでしょうね。「敵を作るより仲間を作れ」の言葉に従うかのように、娼婦たちを守るために手出しはせず、囚われたバック・ラックを救い出そうとし、アーサーを助け出す際に命を落とした者のこともちゃんと見ている、その辺りの積み重ねが効いてきます。あとはチャーリー・ハナムの両手で剣を構えたときのパワフルなシルエットが、まさに肉体派キングという感じで抜群。西洋のソード・ファンタジーにありがちな剣をくるっと回すアクションがないのも却って合ってます。でも剣を引きずりながら歩く行儀の悪さに悪ガキっぽさもあったりして楽しい。

一方アーサーを狙う暴君ヴォーティガンは、権力に目がくらんで兄王を追い落とします。モルドレッドが攻め入ってきたのも同窓だったヴォーティガンと手を組んでいたから。ついには邪悪な力を求めて妻と娘を手にかけます。泣きながら娘を刺し殺すジュード・ロウの叫び声には、悲壮さが滲み出ていて胸に迫ります。ただ、なぜヴォーティガンがそこまで権力にこだわるのかが正直伝わってこないのはちょっと難ですかね。ユーサー王の集める尊敬が妬ましかった、民や臣下を意のままにしたかった、というのはまあわかるんですが。その辺りをあまり突っ込んで描いていないことで、逆に野心に歯止めが効かなくなった悲しい男、というのが強調されていると言えなくもないですかね。


■アーサーと愉快な仲間たち

アーサーの仲間たちはなかなか個性的。ユーサー王の側近だったくせに息子のアーサーには冷たいペディヴィアとか、弓の達人と言えば若くて美しい、というイメージを払拭するおっさん弓使いグースファット・ビルとか、不気味さがありつつもちょっととんがった口元が可愛らしいメイジとか。彼らの「追い詰めるつもりはないが」「追い詰めるなよ」のくだりは笑います。バック・ラックは見た目に反して頼りがいがあるだけに、息子ブルーの目の前で殺されるのは悲しい。潜入捜査官のマギーがべっぴんさんですね。マギーさん無事でよかった。あとカンフー・ジョージが微妙に強そうに見えないのが結構ツボです。アーサーの仲間はアーサーを信頼はしていてもあまり丁寧には扱ってない、ラフな感じが却ってイイですね。

そしてもう一人の主役とも言える、聖剣エクスカリバー。この宝具がもう威力絶大なわけです。そりゃ対峙した兵たちも剣を捨てますよ。しかし抜くことはすんなりできたものの、アーサーはすぐさま気絶してしまい上手く扱えません(そう言えばこのシーンで映る兵士、似てるなあと思ったらデヴィッド・ベッカム本人だ)。聖剣を使えないのはメイジが「どうすればいいかわかるはず」と言うように、親を殺された記憶が知らず悪夢にまでなるほどその喪失感から目をそらしているからですね。聖剣を受け継ぐということは、父の死を受け入れることでもあるからです。しかしヴォーティガンとサシで相対したときに父の「もう逃げなくていい、目を背けなくていい」という言葉を聞くことで、アーサーは目の前で父を亡くした記憶と向き合い、これを乗り越えます。最後には聖剣もグッと握ればガキーン!と答えるまでに。


■伝説はここから始まる

アーサーが過去を乗り越えられるのは、ドン底で暮らし、民を知り、最終的に自らの力と意思でヴォーティガンを倒すことを決意したというのもあるでしょう。「何がお前を駆り立てるのか?」というヴォーティガンの問いに「お前だ。お前が俺を作った」と言うのも、その決意の理由そのものを表しています。単に担ぎ上げられるのではなく、仲間たちを通して見た世界の有り様を変えるために王になる。己を世界の中心にしようとするヴォーティガンとは真逆であり、その意味でも仲間が増えていくアーサーと孤独を極めていくヴォーティガンという対比は効果的です。

伝説を殺すことでより力を得ようとするヴォーティガンは、仲間たちの力を得て伝説となっていくアーサーに破れます。王冠を被り剣を掲げるラストショットが熱い。しかし戴冠の儀式までなんか雑なのがこの一行という感じですね。ヴァイキングが来たときもなんかずっと食ってるし。つーかカンフー・ジョージまで騎士になるのかい!カンフー・ナイトか!新しいな!

本作はアーサー王物語の初めの部分、王になるまでしか描かれていないわけですが、それもそのはず、当初は6部作構想だったようです。円卓が90度分欠けているとか、聖剣を託す湖の乙女の存在とか、名前しか出てこない魔術師マーリン、もっと活躍しそうな女性マギー、もっと活躍するはずのウェット・スティック(トリスタン)、父を殺された少年ブルーなど、今後の伏線らしきものも随所に見られますね。しかし本国の興業成績が思わしくなく続編は厳しいそうな……ランスロットとか出てくる予定あったのかなあ。聖杯の話とかどう料理されるのか観たかったなあ。なんとか頑張って下さいよガイ・リッチー……。

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