2017
06.29

父さんはアウトロー!『ブラッド・ファーザー』感想。

Blood_Father
Blood Father / 2016年 フランス / 監督:ジャン=フランソワ・リシェ

あらすじ
襲いくるバイカー軍団!(既視感)



犯罪から足を洗い、アル中のリハビリをしながらタトゥー屋として暮らすジョン・リンク。そこに数年前から行方不明だった17歳になる一人娘リディアがやってきた。ギャングとのトラブルで追われるリディアを守るため、ジョンは経験を活かして敵を迎え撃つが……。メル・ギブソン主演のサバイバル・アクション。

「ただのおっさんかと思ったら実は激強い」系に新たな一本。しかも主演はメル・ギブソン!元犯罪者のジョンが疎遠だった娘をギャングから守るため、知識やコネや銃撃の腕を駆使して追っ手から逃れ、ときに立ち向かいます。緊張感あるのにユーモアもある父娘での逃避行はロードムービーの趣もあり、そこに滲むジョンの過去への後悔や、旅を経て修復されていく親子関係、更正した男が再び見せる狂犬っぷりなど、タイトな上映時間に色んな要素がみっしり詰まってます。なんかね、台詞回しがいちいち良いんですよ。これは面白い。

往年のメルギブをそのまま年取らせたような主人公ジョンがとにかく最高。渇いたメキシコの風景は『マッドマックス』のようですが、キャラ的にはマックスというよりリッグスに近く、住んでるのもトレーラーハウスだったりして『リーサル・ウェポン』好きは歓喜です。娘のリディアを演じる『はじまりへの旅』のエリン・モリアーティは、ただのビッチなのかと思いきや意外な感性の豊かさもあってなかなか魅力的。敵役ジョナーには『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』のディエゴ・ルナ、ジョンの友人カーヴィ役に『君が生きた証』のウィリアム・H・メイシーというのもイイです。

荒野を娘と二人乗りのバイクで走りながらショットガンぶっ放すメルギブ、という絵面だけでたまらんものがあります。顔に刻まれたシワの深さをものともせず、老いてなお味のあるアクションを繰り広げながら、でもそれだけではない、親子の絆がじんわりと沁みる物語です。

↓以下、ネタバレ含む。








ジョンはワルからは足を洗ったムショ帰りのタトゥー屋だけど、別に寡黙ではない、と言うかベラベラよく喋ります。ファックとかブツブツ言う姿が可笑しい。ギャングにトレーラーハウスを襲われたときに「これでムショに逆戻りだ」とか「罪が追加だ」とか言いながらナイフで相手の手をブッ刺すのが最高です。寝ぼけて電話出て思わず自分の店の名前言っちゃうのも可笑しいし、カーヴィにいちいち「酒は飲んでない」と報告するのは微笑ましい。看守も従うような個室付きの権力者とダチという人脈があったりと、引き出しの多さになかなかの過去をも思わせます。父親代わりのプリーチャーの裏切りに雄叫びを上げる姿とか、二度目に立ちふさがったときは躊躇なく撃つ狂暴性にはニヤリとするし、ヒゲ剃ってスッキリ顔も見せるのはもはやファンサービスですね(面会のためです)。

娘のリディアが付き合っているのがよりによって麻薬カルテルのボスの息子ジョナーで、しかもそれを撃っちゃうというのがヤバすぎ。ジョナー役がディエゴ・ルナなのでまさか序盤で退場しないよねと思ったら案の定再登場して付け狙われます。冒頭のスーパーでタバコはIDないと買えないのに銃弾は買えるというのはちょっと驚きですが、それはともかく、リディアはそんなよろしくない連中とつるんでいたり、ハイになってクラリネット吹きまくったりと、父さんガッカリな不良娘かと最初は思います。しかしモーテルの男に協力させたり、バーの荒くれから住所聞いたりと、すぐに人と仲良くなっちゃう「人を楽しませる子」であり、タトゥーの柄を「ピカソみたい」と評したり「聖書は白人ではなく中東だ」と知識のあるところを見せたりとなかなか個性的でもあります。演じるエリン・モリアーティは静かに涙を流す表情がイイですねえ。

そんな根はいい子なので、リディアがジョンを熊みたいと言って場を和ませたり、ジョンが電気柵でリディアをビビらせたりと、二人が徐々に失っていた交流を取り戻していくのが暖かいです。ジョンが「逃亡術だ」と言ったら「逃げ切れずムショ行きになった」と返されて「生存術だ」と言い直したり、娘の自殺の話に自分の過去を被せて悩ませまいとしたり、会話のやり取りも良いんですよ。ジョンは自店に娘の尋ね人の張り紙をするほど心配してたくせに、いよいよ追い詰められるまで娘に追われる理由を聞きません。リディアは「私のこと何も知らないくせに」と言う台詞を、"わかってくれない"という意味ではなく"父さんを見捨てるような娘じゃない"という意味で言い放ち、一緒に逃げようとします。

ウィリアム・H・メイシー演じるカーヴィは出番少なめながらジョンとの関係性はよく出ていたので、その最期が悲しいです。ジョンのアル中設定がそこまで活かされてなかったとか、インディアンの殺し屋はもうちょい手強さを出してもよかったとか、多少残念な点もありますかね。しかし「三人の継父に任せるしかなかった」「人生を無駄にした」と後悔するジョンだけに、命懸けで娘を守る姿には素直に胸を打たれるんですね。撃たれてムカついて死体に向けてさらに撃つ、という狂犬っぷりにちょっと笑ってしまうだけに、まさかという結末には喪失感が大きいです。でも捕まったジョナーがムショで監視されるところまで取り計らった父への、リディアの「ありがとう」という言葉、そこで暗転するラストが寂しくも爽やかです。

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