2017
06.20

金脈はあるか、信頼はあるか。『ゴールド 金塊の行方』感想。

gold
Gold / 2017年 アメリカ / 監督:スティーヴン・ギャガン

あらすじ
マコノヒー、ハゲデブる。



鉱山事業を営むケニー・ウェルズは、破産寸前に追い込まれた状況を打開すべく地質学者マイクと組んでインドネシアの山奥で巨大金脈を探す。やがて時の人となったケニーだったが、そこで思いもかけない事態に遭遇する……。金鉱を巡る実話を元にしたサスペンス。

1990年代に株式市場に大混乱をもたらしたという通称「Bre-X事件」が元になっているようです。金鉱に関わる人々の金(きん)とカネ(紛らわしいので以降この表記)の話ですが、そこにはカネを巡るドロドロした思惑もあれば、一攫千金を狙うロマンや夢というものもあり、一から金鉱を探すなかで表出するあらゆる感情の詰まったドラマ、ありえない展開の連続がとにかく面白い。夢を諦めない男たちの情熱と足掻きには、カッコ悪さもあるのに羨ましくなる熱さもあるのです。

主人公のケニーを演じるのは『インターステラー』『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒー、自ら製作も関わってるんですが、これが『アメリカン・ハッスル』のクリスチャン・ベールや『ブラック・スキャンダル』のジョニー・デップに続くビジュアル・ショック!薄毛に出っ腹、しかもその体型でオールヌードありという、徹底した役作りで胡散臭い採掘業者を演じます。

ケニーの協力者となるマイク役は『X-ミッション』『ガール・オン・ザ・トレイン』のエドガー・ラミレスで、今回もダークな雰囲気のあるカッコよさがイイ。また『ジュラシック・ワールド』『ピートと秘密の友達』のブライス・ダラス・ハワードがケニーの恋人ケイ役で、顔付きはシャープなのにむっちむちなボディが愛情深さを感じさせます。他にもFBI役で『キングコング 髑髏島の巨神』トビー・ケベルも出演、主題歌はイギー・ポップの『GOLD』です。

カネに執着するという点ではマコノヒー出演作でもある『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に近いものがありますが、本作の方が熱さ成分高め。金鉱の話なのに金自体はほとんど見せない語り方も上手い。金銭的、肉体的、社会的にピンチの連続であるケニーが味わう栄光と挫折、それでも夢見るゴールドラッシュに引き付けられます。ラスト10秒の切れ味には「おぉ…おお!」と震えました。

↓以下、ネタバレ含む。








マコノヒー演じるケニーは見た目もやることも胡散臭く、いかにも山師という雰囲気もあるものの、追い詰められても諦めずとことん進んでいく不屈の闘志があります。そこには父親が「天職だ」と言った眩しい姿の記憶もあるのでしょう。会社が潰れそうなときも必死で電話をかけ、インドネシアではマラリアで死にかけ、ニューポート社に奪われ、大統領に追い出され、度胸試しと言われて虎をも触る。どこまで事実に基づいているかはわかりませんが、実に波乱万丈。フルチンでニューポート社長と握手したり、寄ってきた女性とヘリファックをキメたり、恋人のケイに酷いことを言ったりしてしまうように、カネを手に入れて舞い上がるところも言ってみれば人間くさいです。ケイが本当にいい子でねえ、まさに失ってわかる存在の大きさですね。

そんなケニーにとって、ケイとは違う大きな存在となるのがマイクです。ビジネス・パートナーのはずが、共に辛酸を舐め、生死の境を一緒に過ごし、金脈発見の報に喜び合ったりとするうちに、「ボーキサイトを探して銅を見つけたマイク、金を探して友を見つけたケニー」とまで言うように。酔い潰れたケニーを探しにきたマイクと取っ組み合いのケンカをしたり、「金のツルハシ」受賞のスピーチ前にケニーのネクタイをマイクが直してやったりと、確かに友情を感じるんですよ。「炭鉱者とは」というケニーの感動的なスピーチにもマイクへの思いは含まれていたはずです。

しかしそのスピーチの途中でなぜか姿を消すマイクに不可解なものを感じたところで、170億ドルの金鉱が失われたというニュースが飛び込んできます。マイクにとってはそろそろ引き際だということだったのでしょう。存在しない金鉱でそこまでやれるのか、とも思いますが、金を掘る話なのにカネの話が中心で金の現物はほとんど出てこないのが伏線となっており、「大金が入ったから事実を見ようとしなかった」というのはありえるかも、と思わされます。実際観てる間はそんなこと疑いもしなかったので、これは驚きました。

マイクはケニーを裏切ったのか、と言われるとちょっと難しい。いや、確かにウソをついて騙していたのだからそれは傍から見れば明らかに裏切りですが、ボーキサイト発見の話で「嘘の報告をした」と言うのは真実を匂わせていたとも取れるし、思い返せばマイクがケニーを見つめる目には何か言いたげなときもあったように感じられてきます。それにマイクが金鉱発見を捏造したのは、カネが底をつき、作業員たちが去っていき、金脈がないことをも悟ったからでしょうが、そのきっかけは、恐らく死にかけてなお諦めようとしないケニーを見ているときだったのでは、と思うのですよ。

一方のケニーも、マイクが消えてからも何度も彼との記憶がフラッシュバックするし、マイクの死を知ったときには言葉を失います。物語が一人称のモノローグで始まるのはトビー・ケベル演じるFBIによる事情聴取だったからですが、つまりほとんどはケニーが自分とマイクの話を語っていたということ。ケニーはどんな時でもタバコを吸っているようなヘビースモーカーですが、マイクのことを聞かれたときにだけそのタバコを消すシーンがあり、そこにマイクを疑いきれないケニーの本気の思いを感じさせます。「カネに興味はない、カネに執着している。大きな違いだ」と言うのは、つまりカネを生み出す夢そのものを追っていたのだということであり、それはマイクも同じだったはず、という確信が拭いきれないのでしょう。

なぜケニーがそこまでマイクを信じようとするのかは、単に友人と思っていたから、というだけではなく、彼が「契約書だ」と言って見せた布切れに書いた「見返してやろうぜ、儲けは山分けだ」という言葉にマイクが応えてきたからです。嘘はつかれた、しかし最初の約束通りに世間を見返し、儲けは山分けにしたのです。金鉱などなかったことを最後まで隠し、一人罪を被ってケニーに夢を見せ続けたマイクは、果たして裏切者なのか?その問いに対する答えは、少なくともケニーにとっての答えは、ラストで彼の顔に一瞬浮かぶ泣き笑いのような表情に見ることができるのです。

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