2017
06.14

人生の悔いに抗うために。『おじいちゃんはデブゴン』感想。

ojiichan_ha_debugon
我的特工爺爺 The Bodyguard / 2015年 中国、香港 / 監督:サモ・ハン

あらすじ
もうデブゴンて呼ぶのやめてあげて……



初期の認知症で一人暮らしの老人ディン。隣家の少女チュンファはそんな彼を慕ってよく遊びにきていたが、チュンファの父レイがマフィアの宝石を持ち逃げしたためマフィアに誘拐されそうになる。かつて軍隊にいたディンはそれを阻止するため戦いに身を投じる……。サモ・ハン監督、主演による香港アクション。

香港映画界の大ベテラン、サモ・ハン・キンポーことサモ・ハンが、20年ぶりに撮った監督作。20年前というとジェット・リー主演の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&アメリカ 天地風雲』かな?アクション監督では度々名を目にしてきたし出演作も多いですが、監督・主演も兼ねるのは『五福星』シリーズ辺りまで遡りそうです。そんなサモ・ハンの役どころは、故郷の村に一人で暮らす66歳の退役軍人ディン。すぐに物事を忘れてしまう初期認知症のおじいちゃんです。そんなディンの元にちょくちょく遊びに来るのが,
ギャンブル狂いの父親レイと二人で暮らす少女チュンファで、彼女とディンを中心に物語は展開します。

じいさんと少女の交流というウェットなドラマではありますが、加減を知らないイカれマフィアが絡んで起こる事件はなかなかにヘヴィ。肝心のサモ・ハンは「ああ」とか「うん」とか口数も少なく、お年寄り設定なので動きも少ないんですが、そんなサモ・ハンの本気出したときの激強さには思わず喝采。あの体格であんな攻撃されたらそりゃポキポキ折れますよ。そしてチュンファちゃんはなかなか小生意気ですが、それでもディンにとっては重要な存在となっていきます。チュンファ父のレイ役は最近では『グレートウォール』にも出ていたアンディ・ラウ。製作と主題歌も担当してるほどですが、役柄はなかなかのクズです。

アクション自体は良いんですが、その見せ方にはスッキリしないものがあり、展開がちょっともたつくのもあって爽快感には少々欠けるのは残念。でもサモ・ハンの巨体ならではの迫力アクションには燃えるし、大家の女性ポクさんの猛アタックに困るサモ・ハンなどは楽しい。心の傷を抱えた老人の、癒しの物語を堪能できます。

↓以下、ネタバレ含む。








ディンが敵の手足を折る際に骨が透けて見えるような変なエフェクトを入れたり、クライマックスの闘いがロシア人のあたりからやたらコマ落としの映像が続いてせっかくのアクションがわかりづらかったり、なぜそんな演出を?と色々引っ掛かります。動けないのをごまかしているのでは、と不本意な勘繰りをしちゃうんですよ。でもアクション監督としてはさすがで、最初に掌底で相手を突き飛ばすのには、それまでの鬱々した展開を吹き飛ばしてくれてアガります。体格を活かして胸で相手の手を返してそのまま折るとか、背中越しに腕を決めてそのまま後ろに飛んで落とすとか、相手を行動不能に陥れる容赦ない攻撃が最高。ナイフで足を刺されたくらいでは動じないし、終盤の怒濤の無双バトルには燃えます。

ディンには孫娘を行方不明にさせてしまったという過去があり、彼が一人で暮らしているのもそれが原因です。かつて身に付けた武術で闘うのも自分を慕う少女を救うためというだけではなく、チュンファに孫娘の面影を重ね、二度と失うまいと思うから。ポクさんに自分の人生を話すシーンには、てっきり忘れてしまうから覚えておいてほしい、ということかと思いきや「だから優しくされる資格はない」と、抱え続けた傷の深さを見せます。それだけにたった一人で戦い続けるのは熱い。

ただ、敵ボスの金子賢みたいな奴が小者臭スゴいうえにあっけなく死ぬというのがこれまたスッキリしません。敵役が目立たないんですよね。サモ・ハンを「カンフーパンダ」呼ばわりしたりとか、爺さんと足を怪我した男との遅い追跡劇は『ロンドンゾンビ紀行』の年寄りチェイスみたいで笑いますが。あとチュンファちゃんね、そんなに可愛いげがないので守りたい感が薄いんですよ。ディンの軍服をジャミラみたいに着ておどけるのもイラッとするし、ラストなんて彼女が行方知れずになって何日も経ってるかのようなのに、ただ友達の家にいただけってのはディンが気の毒すぎます。チュンファの父レイが別れを告げたその鼻先で殺されるのも何だし、エンドクレジット中にレイがチュンファ母を追い出すシーンが最後にあるのも謎。

そんな感じで色々唐突な展開も多いですが、それがかえって何が起こるかわからない緊張感を醸し出している、とも言えますかね。ポクさんが警察官の息子をダシにしてまで老いらくの恋にひた走るのなどは良いですねえ。ポクさんの紹介が字幕では「昔は美人、今は見る影も……」みたいになってますが、台詞では「昔はアンジェラベイビー、今はアンジェラなんとか(聞き取れず)」でした(多分)。そしてサモ・ハン監督復帰作ということでツイ・ハークやエディ・ポンなどのゲスト出演者も。警察署の偉い人役でユン・ピョウが出てきたのには感激です。

軒先に座るじいさんたちのようには余生を楽しめないディン。しかし過去を乗り越えたわけではないにせよ、チュンファを救い出したことで同じ過ちを犯さずに済んだディンは、ようやくじいさんたちの座るベンチに腰をかけます。冒頭でディンの過去を語るのがチュンファによる手描きの絵であるということは、彼がやがてその事実をチュンファに語れるまでになるということでもあります。認知症により多くのことを忘れてもチュンファのことは忘れなかったというのであれば、ディンの余生はラストに彼が見せたような微笑みに満ちていたことでしょうね。

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