2017
06.11

倒せ帝国、光の戦士。『封神伝奇 バトル・オブ・ゴッド』感想。

houshin_denki
封神傳奇 League of Gods / 2016年 中国、香港 / 監督:コアン・ホイ

あらすじ
スター・ウォーズのことではないです。



古代中国、殷の紂王は九尾の狐が化けた美女である妲己に言われるがまま、暴政・侵略を行っていた。人間界の乱世を平定するべく、仙界最強の道士・姜子牙は道士たちを遣わせ、周の国と共に立ち上がるが……。中国古典小説の一つ『封神演義』を元にしたファンタジーアクション。

「封神演義」は「西遊記」「水滸伝」などと並ぶ中国の古典小説で、紂王と彼を操る妲己の暴虐に対し姜子牙(太公望)を始めとする仙界の道士たちが抵抗し、やがて人類の住む人間界と仙人が暮らす仙界をも巻き込んで戦いが展開していく、という一大バトル中華ファンタジーです。日本でも小説やコミックで広まりましたが、そんな「封神演義」が実写映画化、しかも姜子牙役がジェット・リー!安能務の小説版にハマり、藤崎竜のコミック版を全巻持ってる身としては、これは観ないわけにいかないでしょう!

これがどうだったかと言うと、一部のキャラと設定は原作を踏襲しているものの、かなりのアレンジが入っています。美術や背景も中国と言うよりはもっとオリエンタルな雰囲気で、もはや中華伝奇とさえ言い難いです。映像はほぼCG、大味な伝奇ものというのも半ば予想通り。しかしながらそんな予想やコレじゃない感の、さらに斜め上を行く過剰な演出!超人的アクション!破天荒な創意工夫!といった点が楽しいです。好きな人なら雷震子、哪吒、楊戩といった名前が出るだけでアガるし、何より妲己様が美しすぎます。

姜子牙役のジェット・リーはアクションはほとんどないのが残念ですが、体の具合が悪いからしょうがないですね。その代わり他の面子が暴れてくれます。雷(雷震子)役に『PUSH 光と闇の能力者』のジャッキー・ヒョン、姫發役に『激戦 ハート・オブ・ファイト』のアンディ・オン、ナタ(哪吒)役に『西遊記 はじまりのはじまり』のウェン・ジャン、楊戩役に『イップ・マン 葉門』のホアン・シャオミンです。申公豹役には『ドラゴン×マッハ!』のルイス・クー、紂王役にベテランのレオン・カーフェイ。さらには藍蝶役は『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』のアンジェラベイビー、可憐!そして妲己役が『新少林寺 SHAOLIN』『X-MEN:フューチャー&パスト』のファン・ビンビン、妖艶!

枝葉の多い展開はもっとタイトにできたんじゃないかとは思うし、原作ファンには物足りなさもありますが、色々と突き抜けてて嫌いになれないです。ファンタジーと言いつつSF要素が入ってるのも異質。神のような力を持つ道士たちの活躍は、テイスト的にちょっと『キング・オブ・エジプト』を思い出しましたよ。なんかやたら金ピカだし。あと、観てる途中で「あれ、これはひょっとして……」と思ったら案の定「続編ありき」だったようで、引きがあざとい(そもそも一本の映画に収まるボリュームではないんですが)。ちなみにえらい長いエンドロールが終わっても特におまけ映像などはないです。

↓以下、ネタバレ含む。








香港映画の伝奇ものにはよくあるんですが、なんかもう全てが仰々しいんですよ。それが上手く作用しているところもあれば、やりすぎ感を与えるところもあります。アクションに関しては大体アガる演出に繋がるのでまあいいです。特に序盤の水路脱出シーン、盾を組み合わせて船にするというギミックに、アトラクションにしか見えない水路滑走などはスピード感あってたまらんです。逆に最長老の目玉を解析するシーン(スゴい字面)は空中にキラキラしたのが浮きすぎてて邪魔だったり、床からせり出す装置などがやたらカチャカチャ組合わさる仕掛けが近未来だったりというのは過剰すぎて気になります。しかもその過剰さがファンタジーという感じではなく、例えば九尾の狐である妲己の尾が触手というかもはや『宇宙戦争』のトライポッドみたいだったり、空飛ぶ艦隊が飛び立っていく後ろ姿が『スター・ウォーズ EP2』のようだったりというのもあって、スゴくSF映画っぽいんですよね。まあそもそも『封神演義』はある意味SFではあるんですけど。

原作から付け足した設定がまた過剰と言うか余計だったします。最初の王宮の見た目から「あれ?」と思いますが、太陽が三つある世界の話なのでもはや地球の話ではないし、妲己以上の脅威として「黒竜」というのが出てきますがそこは女媧でしょ?となるし、巨大サソリのくだりいらないよね?とか、ナタが子供の姿になるのいらないよね?とか、色々と余計。あとオリジナルキャラを出すのはいいけど、説明やナビゲートの役である仙草が全く魅力がない、と言うかイラッとします。原作からの改変も、姜子牙の乗るのが四不象じゃなくてデカい鶴であるとか、太乙真人が女性でしかも姜子牙の元恋人であるとか、申公豹が不死軍神とかいうハルク(と言うかアボミネーション)みたいな姿になるのなんてショックです。もっと仙界大戦みたいなのを期待したけどそこまで拡がらないし、『封神演義』と言えば宝貝(パオペイ)ですが(少なくとも字幕では)その言葉は出てこないし、そもそも誰も封神(死して神に封じること)されないんですよね。タイトルがガン無視されてるんですけど。

キャラは悪くないです。主人公が雷(雷震子)というのはちょっと意外でしたが、真っ直ぐなキャラで好感が持てる主人公像だし、滅ぼされた翼族という宿命を背負っているのがヒロイック。翼を取り戻すのは予測できるものの、ここぞというところでくるのがいいですね。肌に細かい文様があるのが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』のドラックスぽい(というかSF映画パクりすぎ)。ナタがCG丸出しの幼児の姿なのには脱力しますが、ウェン・ジャンに変わってから火風二輪で走る姿や、腕六本という大盤振る舞いには燃えます。最初は変なじい様だったり何かを作っていたけどそれが何かは謎のままというのがアレな楊戩も、黄金の鎧を着て何だか昔の特撮ヒーローみたいになるのはちょっと面白いし、哮天犬が出てきたときにはアガります。申公豹は雷公鞭の威力がド派手だし、ちゃんと黒点虎に乗ってるし(ルイス・クーかどうかわかりにくいというのは難ですが……)。そんな申公豹が不死軍神と化したのを黄金の剣で真っ二つにする姫發の「どこのヒーローですか」という無双感には呆気に取られます。

姜子牙のジェット・リーは最初はお調子者のジジイという感じで、まるで初登場時のヨーダみたいな軽妙さ(というか胡散臭さ)がありますが、若返りの呪いを受けてどんどんいつものジェット・リーになっていくというのがサービスなのか何なのか。若ジェットが一瞬映るのはちょっと嬉しいですが、あんな子供にまで戻っちゃったら今後出番がないじゃないか……。妲己様の美しさはとどまることを知りません。もうそれだけで良いです。口のはしから血が滴る表情とかセクシーすぎて僕も魅了されたい。藍蝶(藍蘭だったっけ?)は多分オリジナルキャラだと思うんですが、これは人形故の感情や苦悩みたいなのがあって思ったより良かったです(これもまたアンドロイド系のSF話的ではありますが)。雷の復活した翼に彼女の蝶が混ざって見えるのはニクいですね。ただ、オリキャラ出すなら原作にあるキャラをもっと出して欲しかった気も……(聞仲とか黄天化とかさー)。

過剰な演出はやりすぎ感があるし、原作ファンには物足りなさがあるし、原作知らないと飲み込みづらい点もあったりと、映画としてはあまり良い出来とは言い難いです。二つの場面が変な合成で同時に語られるとかダサくてビックリしたし、なんか中国でも評判悪いそうで。ただ、登場キャラを絞って親近感を持たせたり、それを仲間を探すロードムービーの形にした発想は悪くないし、アクション的には過剰な派手さが面白かったりするので、個人的には続編には期待してます。果たして公開されるかな?というのが不安ですが……。

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