2017
05.10

氷も溶かすファミリーの絆(と爆発)。『ワイルド・スピード ICE BREAK』感想。

Fast_and_Furious_8
Fast & Furious 8 / 2017年 アメリカ / 監督:F・ゲイリー・グレイ

あらすじ
テイテイは常識。



DSS捜査官ホブスと共に、ベルリンで反体制派からEMP(電磁パルス砲)を奪還するミッションを行っていたドムが突然離反。ファミリーを裏切ったドムを取り戻そうとするホブスやレティら仲間たちは、その裏に天才的ハッカーのサイファーがいることを知るが……。カーアクション『ワイルド・スピード』シリーズの第8作。監督は『ストレイト・アウタ・コンプトン』のF・ゲイリー・グレイ。

車は走るだけとは限らない、でおなじみ『ワイルド・スピード』シリーズ、主要メンバーであるポール・ウォーカーの遺作となった前作『ワイルド・スピード SKY MISSION』で一区切りとなり、この『ICE BREAK』から新たな、そして最後の三部作となるようです。相変わらずハゲ率高いメンバーも勢揃い、今度はどんな大げさなミッションに挑むのかと思いきや、なんと中心人物であるドムことドミニク・トレットがファミリーを裏切るという急展開。何か事情があるに違いないとドムを信じようとする仲間たちは、ドムがサイバーテロリストのサイファーと行動を共にしていると知り、ドムを取り戻そうとします。

車(と筋肉)を使ったこれでもかという連続アクションには、とにかく楽しませようという気概を感じます。ただのアウトローな走り屋だった昔に比べるともはや『トリプルX:再起動』並に話がでかくなってきて、一体彼らは何者なのかよくわからなくなってきますが、それでもちゃんと車をメインに据えていることで差別化を図ってますね。今回は寒冷地でアイスをブレイクする無茶も見せてくれます。キャラ萌え&燃えも絶好調。期待しすぎたか前作より少々雑に感じるところもなくはないですが、祝祭的アクションのつるべ打ちにエキサイトし、ファミリーの絆の強さに泣かされます。

ドム役のヴィン・ディーゼル、ホブス役のドウェイン・ジョンソン、レティ役のミシェル・ロドリゲス、ローマン役のタイリース・ギブソンらに加え、デッカード・ショウ役のジェイソン・ステイサム、ミスター・ノーバディ役のカート・ラッセルも前作に続き出演。そして敵役であるサイファーには『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のシャーリーズ・セロン、さらにはクリント・イーストウッドの息子でもあるスコット・イーストウッドも参戦。濃いです。

ファミリー映画(家族向けという意味ではない)になっていくシリーズから中心であるドムを切り離し、一度ファミリーを分解することでより強く家族を描くという、ここから始まる新シリーズとしては上手い展開でしょう。少し釈然としないところはあって、そこを飲み込めるかどうかは人によりそうです。

↓以下、ネタバレ含む。








■裏切るのにはワケがある

『トリプルX:再起動』もそうでしたが、キャラ萌えとキャラの関係性萌えに関してはヴィン・ディーゼル作品の持ち味という感じになってきました。ドムのイケメン度は冒頭から最高潮、非常にワイスピらしい公道レースにアガり(その前のスターター女性のセクシーさにもアガり)、燃え盛る車でバックで走って勝利、最後はジャンピング海の藻屑ってのが最高です。対戦相手に「車はいらない、尊敬だけで十分だ」ってカッコよすぎだし、しかもインパラをいとこにあげちゃうという太っ腹。そりゃ全く関係ないキューバの人たちもワーワー言いますよ(言うか?)。対戦相手もわざわざニューヨークまで手助けにきますよ(盗難車売りに来たのか?)。というか、ドムの裏切りを誰も「裏切った」と思ってない、というのが愛されてますね。その分サスペンスには欠けるんですが……

レティ姐さんは今回見せ場が少なめですが「信じる」という点においては誰よりも強いと言えますかね。いちいち挟まれるローマンの軽口とそれに苦い顔をするテズ、あとラムジーとの微妙な三角関係などは息抜きをもたらす感じですね。ローマンなんて極寒の海にたっぷり浸かった後だというのに、寒さに震えるどころか平然と軽口叩いてるとかどうかしてます。新キャラのリトル・ノーバディは若気の至りで痛い目見たり、真面目なツッコミ役でカタブツすぎたりと地味ではありますが、「ルールNo.3」として「ルールはない」と好きな車を選ばせるあたり、あのファミリーにすっかり毒され……もとい解放されたようです。


■最強メンバー&最凶ヴィラン

何と言ってもロック様ことホブスですよ。娘のサッカーチームにハカを導入、自らも踊って敵チーム(子供)を威圧、舌を出して挑発(子供相手)と実に大人げないですが、でも奥様たちにはモテモテのロック様!ステイサムに煽られて筋肉アピールするロック様!手錠を引きちぎり(マジか)ゴム弾撃たれても平気(マジか)なロック様!走る車の窓につかまりながら魚雷の向きを素手で変える(マジか)ロック様!バックブリーカーやダブルラリアットなどのプロレス技まで見せてくれて、最強&最高です。テイラー・スウィフトはテイテイと呼ぶのか……勉強になります!

新たな敵となるサイファーは、冷酷で論理的、演じるシャーリーズ・セロンがさすがの存在感なことで「何でもできるハッカー」という陳腐すぎる設定もねじ伏せてる感があります。ただ犯行の目的が「核の驚異で主要国を従わせる」であり、つまりは世界征服なんですけど、そうしてどうするのかというビジョンが見えないのが難点。サイファーで良かったのは、ドムが求めているものを「ファミリーから解き放たれる自由な時間だ」と言ってドムが言い返せないところ。これはドムが一人の走り屋としての意識を失ってないということでもありますね。あとゾンビタイムと称して何十台もの車がドリフトしてきたり、車が雨のように降ってくるシーンは圧巻。圧巻すぎてちょっと車がもったいないという気になります。


■ファミリーの抱える矛盾

問題はジェイソン・ステイサムのデッカード・ショウです。最後に控える最強の敵という扱いだったはずですが、なぜかホブスらと一緒にサイファーに立ち向かうことに。サイファーに見捨てられたから、という理由はあるようですが、かつてのドムたちの仲間であるハンを殺した仇という因縁は都合よく棚上げ。長年のファンならここは受け入れがたいところだと思うんですけどね。ただなあ、やはりアクションは素晴らしくて、刑務所の大乱闘をかき分けて進むパルクール的なアクロバット、そしてスピード感はカッコいいし、パワフルで猪突猛進なホブスとの対比も効いているし、なにより終盤で敵飛行機乗り込んでからの子守りアクションなどは最高すぎて、赤ちゃんにウィンクまでされた日にゃあ因縁もどこかへ吹っ飛びます(それにしてもあの赤ちゃんは超カワイイ)。

多くの主演作でナイスなタフガイを演じてきた、まさにジェイソン・ステイサム力が発揮されてしまうわけですが、最強の敵が味方に!という熱さを語るにはちょっとスッキリしない感が残るのが残念。しかも弟のオーウェン・ショウまで出てきたときには「おおルクエヴァまで!」という喜びと「平然と出しちゃうの?」という疑問とのせめぎあいを感じてしまいます。ただそんなせめぎあいを、二人の母役としてヘレン・ミレンを投入することでさらに緩和させてくるんですよ。「ファミリーだから見捨てない」と言ってるドムたちに対して、「しょうがないけど家族だから」という一家が出てきたのが、ファミリー礼賛とは違った家族の形という感じで良いんですよねえ。制作陣の思う壺な気もしますが、まあドムたちとは一応仲間ではなく共闘ということのようだし、これからどうなるかはわかりませんからね。


■生き続ける想い

亡くなったポール・ウォーカーの演じるブライアンは劇中では生きています。ただしブライアンは前作ラストで家庭を取ったためか、レティが「巻き込むわけにはいかない」と言いますね。そのためブライアンの妻でありドムの妹でもあるミア役のジョーダナ・ブリュースターも単独で出るわけにはいかず出番なしなのは残念。とは言え、せめて劇中ではポールに生き続けてほしいというヴィン・ディーゼルの想いの表れなんでしょう。

だから僕は赤ん坊に「ブライアン」と名付けるのは、わかりそうなものなのに予想できなくて(ブライアンは生きてるから)、結果「そうきたか!」と、ある意味メタ的な結末には思わずジーンとしてしまいましたけどね。しかし赤ん坊の母親であるエレナ(『MEGA MAX』で登場)が殺されるというのが、ホントに子供を残すためだけの役割のようで、ちょっとどうなのかなーとは思いますけどね。ドムとレティの子がさらわれた、だったらまだスッキリもするんですが。あーでも実の子絡みは次作以降で実現する可能性もありますかね。

というわけで、「釈然としないけど燃えるし泣ける」という、ちょっと歪な形に落ち着いた本作ではありますが、潜水艦の爆破から全員が車で盾になってドムを守ったり、「ファミリーを見捨てるなと言ってきた、自分を見捨てないでくれてありがとう」というドムの台詞に泣かされたりで、結果的には大団円。かつての敵も今は友、ジャンプの漫画のように拡がっていくファミリーの輪により「何者でもない」はずのミスター・ノーバディまで親戚のおじさんのようにテーブルに鎮座し、素行の悪い遠縁のおじさん(ステイサム)までファミリーに加わったこのシリーズ、ここから始まる三部作がどう帰結するのか見守っていきたいところです。次にどんな邦題が付くのかもちょっと楽しみ。

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