2017
05.08

気ままなアイツと歩む旅。『クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』感想。

kure_shin_shiriri
2017年 日本 / 監督:橋本昌和

あらすじ
尻が出せない!(死活問題)



ある日、突如野原家に不時着した宇宙船から現れた、宇宙人の少年シリリ。シリリの発する謎の光線により、ひろしとみさえは25歳若返って子供の姿にされてしまう。シリリは二人を元の姿に戻すことを条件に父親を探すことを要求、子供だけになった野原一家は日本縦断の旅に出るが……。アニメ『クレヨンしんちゃん』の劇場版25作目。

今度のクレしんはSF!地球にやってきた宇宙人シリリの「バブバブ光線」により両親は子供になってしまいます。大人に戻るためには日本のどこかにいるシリリの父親を探さなければならない、というわけでシリリをしんのすけの尻に隠して野原家は旅に出ることに。様々な危機にあってきた野原一家は宇宙人くらいでは怯まないのか意外と呑気ですが、とは言え子供ならではの危機に巻き込まれつつ、少々粗さはあるものの家族の絆的な話もきちんと織り混ぜたロードムービーとなっています。

しんちゃんの物怖じのしなさというのは並みの5歳児を超えてるわけですが、なんかアレですね、ダクトを通る『ダイ・ハード』的な場面もあって、ボヤきながらも飄々と進んでいく姿はジョン・マクレーンのようですね。あと犬のシロは活躍は少なめですが、ついでに「役には立たない」とも言われますが、一緒にいるだけで何か心強いという錯覚を抱かせるなあ。そしてゲストキャラのシリリ、頭が尻のようでニコチャン大王(古い)を思い出すデザインは、見てるうちに段々良く思えてきます。演じるのは沢城みゆきで、『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』での峰不二子とは違いすぎてひっくり返ります(そりゃそうなんだけど)。ちなみにシリリの父役で宮迫博之、モルダダ役で蛍原徹がゲスト声優です。あと志田未来が本人役で出てますが、いやまあ本人?という感じがユルいです。

本作はしんちゃんや野原家ではなく、宇宙人シリリが主人公である、というのが特徴的。しんちゃんはどちらかというと彼を(結果的に)サポートする役割であり、種族内でもマイノリティであるシリリが自分を取り戻すという、一人の少年の成長譚なんですね。そして種を超えた友情の物語でもあります。

↓以下、ネタバレ含む。








両親が子供になるというのは面白い設定です。大人がいると春日部から目的地(沖縄辺り?)まですぐに行けてしまうのを、子供化することで警察に疑われたりUFOオタに捕まったりヒッチハイクが必要になったりと旅が困難になり、これによりロードムービーとしてのドラマが増してます。さらにしんちゃんとシリリを家族から分断することで、今度は少年同士の信頼を築く過程を描くんですね。また、子供だけでの行動というのがよりストレートに大人の酷さを映し、なおかつ両親が無事に大人に戻れるのかというスリルにも繋がっていて上手いです。

野原家の父ひろしはちょっと危機感に欠けるところはありますが、家長として頑張る姿は印象的に描かれます。一方でシリリ父はシリリに旅をさせるのがバブバブエネルギーを集めるためであり、ひろしとの対比というのはあるにしても自分の息子に対してちょっと酷すぎますね。何よりシリリと父の関係は修復されず、最後に母が迎えに来て唐突に終わってしまう。そこはもう少し考えてほしかった気もします。そもそもシリリ父らはより住みよい星にするのが目的らしいけどなぜそうするのかがよくわからないし、それにしては人類バブバブ化計画という侵略と変わらないことをしようとするので、立ち位置がハッキリしないのも難点。

UFO大好き八尾さんがヒッチハイクしてる野原家を見つけるのは都合がいいし、何より誘拐の犯罪者じゃないかという気もしますが、その情熱もアブダクションされた人を崇めるのも子供時代の好奇心の延長ではあるし、ウザさが面白いのでまあいいか。あと野原家の屋根にあんなのがブッ刺さってるのに騒がれない不思議とか、バイクのサイドカーに乗せてもらうときはシリリ普通に顔出してんなとか、カスカベ防衛隊が簡単に宇宙船を操れるのすげーなとかもありますが、そこら辺はギャグの範疇ということで。ライトセイバーかと思ったら懐中電灯だったり、それを股に挟んで伸ばすというネタには思わず笑いましたよ。あと怪しげなサーカスシーンは良いですね。なんか良いです。みさえが大人に戻ったときのセクシーな姿もなんか良いです。

シリリは最初こそ強がって高圧的な態度に出ますが、他人ができることができないという劣等感に苦しんでおり、それゆえに臆病になっています。父に認められたいと懸命にその所在を求め、父の教えを必死で守ろうとする姿が悲しい。シリリがダンボールに隠れて移動するというシーンは一瞬「メタルギア・ソリッドか」と思うものの、これが異星で一人きりであるシリリの孤独と恐怖を煽っています。何にでも醤油をかけて食べたがるという味覚の偏りからもわかるように、まだ子供なんですよ。それがわかるにつれシリリに愛着が沸いてきて、しんちゃんの尻に隠れて尻が倍の大きさになるバランスに徐々に安心感さえ感じてきます。だからエンドロールにその姿で歩くシーンが微笑ましくて良いのです。しんちゃんと共に過ごしたことで、たとえ「スクスク光線」が出せなくても自分には自分の個性がある、そのことに気付けたシリリにはスクスクと育ってほしいと思わせてくれます。

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