2017
04.23

奴らを阻むは壁と信頼。『グレートウォール』感想。

The_Great_Wall
The Great Wall / 2017年 中国、アメリカ / 監督:チャン・イーモウ

あらすじ
女神かと思ったら将軍でした。



時は宋王朝時代。黒色火薬を求めて宋にやってきた傭兵のウィリアムたちが、命からがら辿り着いた万里の長城。しかしそこでは60年に一度現れる圧倒的な敵に備え、戦いの準備の真っ最中だった。やがて襲撃した敵を何とか撃退したウィリアムだったが……。チャン・イーモウ監督、マット・デイモン主演の戦乱アクション。

雄大な景観に圧倒される中国の万里の長城、しかしその壁が建設されたのは異形の敵との人類の存亡をかけた戦いのためだった!という伝説があるとかないとか。そんな伝承というかトンデモな設定を巨額を投じて作られた本作、これが歴史スペクタクル巨編と見せかけて、大真面目に化物軍団と戦うというSF伝奇アクションでしたよ!正直話はかなり粗いし、シーンの繋ぎ方も微妙なんですが、しかし!武侠映画『HERO』を彷彿とさせるチャン・イーモウの美麗なビジュアルに心奪われ、細部までこだわったバラエティ豊かな「壁ギミック」の数々に燃え、大軍団と戦う兵士たちの信頼に熱くなる!物語の雑さとは裏腹に別の魅力に溢れているのです。

何と言っても主役であるリン将軍、『スペシャルID 特殊身分』『ポリス・ストーリー レジェンド』のジン・ティエンです。『キングコング 髑髏島の巨神』では添え物だった彼女が、今回は出番も台詞もアクションも大増量、美しき闘将として存分に魅せてくれます。卑しき異国の傭兵にも情けをかけてやる優しきリン様、その眩しき姿!マット・デイモンなんておまけですよ(暴言)!あ、マット・デイモンも『ジェイソン・ボーン』とはまた違ったキメまくりアクションやってるので、むしろ謎の男を演じるウィレム・デフォーの方がおまけっぽいですが。あと軍師のワン役がアンディ・ラウです!英語の役って初めてだっけ?さすがの存在感が嬉しい。

『ワールド・ウォーZ』や『スターシップ・トゥルーパーズ』や『ロード・オブ・ザ・リング』の中華版という感じですが、それはそれで好き。アメリカで大コケしたという理由もわからなくはないですが、この一大戦乱伝奇絵巻、好きな人にはたまらんものがありますよ。僕は昔中国に旅行した時に万里の長城にも行ったことあるんですが、あそこでこんな戦いがあったのか……と思うと感慨深いです。(注:フィクションです)

↓以下、ネタバレ含む。








■壁のように遮る雑さ

編集が悪いせいか、話の繋がりが唐突で雑に感じる部分が多いです。当初は5人いたウィリアム一行が、長城に着く頃にはいつの間にか二人になっててアレ?って思うし、最初の将軍が死んだあと(あっけなく死ぬのも拍子抜けですが)他にも偉そうな司令官クラスがいたっぽいのに誰も反対もせずあっさりリンが将軍になったり、ウィリアムになつく若者が「ウィリアムが止めるのを見た」と言うけどそれを見たのか見てないのかというシーンがないので本当なのか庇ったのかがわからない。あと、いつの間にか壁に穴が!って饕餮がそんな穴掘ってるのを匂わせる場面あったっけ?饕餮が押し寄せてから都の人々がどうなったのかもよくわからないし。色々と削られた結果かもしれませんけどね。

雑さは人物描写にも表れていて、特にマット・デイモンのウィリアムはトバールに嘘つきだ人殺しだと言われますが、そこまで悪人に見える描写がないので、今までの生き方を変えようとする思いがあまり伝わりません。信頼(シンニン)に影響された、だけではちょっと弱い。ウィレム・デフォーのバラードが25年も長城にいた理由も説得力がなく、リンやワン軍師に英語を教えるのと、ウィリアムたちに火薬を見せるくらいの役割しかないですね。そそのかしたり裏切ったりしたわりにはあっけない死にざま、しかもやられるシーンは直接ないので「何だったんだ……」という感が拭えず。


■壁を守りし人々

しかしそんな雑さをカバーして余りあるビジュアル&アクションですよ。青、赤、黄の鮮やかな鎧を纏う禁軍が、一糸乱れぬ隊列で並び立つ荘厳さ。特に青鎧の女性ばかりの鶴軍、まるで開発途上の『進撃の巨人』の立体起動装置のような人力バンジー攻撃、はっきり言って効率は悪いし死にすぎですが、そこにある刹那的な美しさにはなんとも魅了されます。そしてヌンチャク太鼓ですよ!戦いを鼓舞するリズムという点で『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を彷彿とさせますが、そこにヌンチャクを使うというのが武侠ものの片鱗をほんの僅かながら感じさせて激アツ。

また、壁に仕込まれた武器の数々を、起動するための内部の動きの描写から一斉攻撃の迫力まで映し出し、タイトルの「長城」に恥じない見せ場の連続。城壁から出る巨大ハサミ、同時発射で敵をなぎ倒す鉄球は、火炎鉄球、トゲ付き鉄球とランクアップしていくのもたまりません。鳴り矢を撃ち込みその音で位置を知るという『キングコング 髑髏島の巨神』でも見られたスリルや、遠く欧州から求めてくるだけの威力を見せる火薬武器のド迫力。都へ向かう饕餮を追うために気球が出てくるのもアガります。これが燃えやすいというのも余計なハラハラを煽ってきますね。

ウィリアムは弓矢の見せ場が多く、最初に将軍たちに見せるデモンストレーションなど「いやそこまでやらんでも」というくらい魅せるし、鎖を伝って壁の下に降り立っての戦いなどはクレイジーなヒロイックさがあってイイ。終盤に狭い通路で見せるキャプテン・アメリカばりの盾を投げての攻撃は最高すぎて笑います。またウィリアムを何かと助けるペドロ・パスカル演じるトバールは、結構ウィリアムとのバディ感があって良いんですよね。いっそ裏切らずにウィリアムとのバディアクションをもっと見たかった気もしますが、そうするとウィリアムとリン将軍の関係が描けなかったんでしょうね。美しさがとどまることを知らないジン・ティエンのリン将軍は、自らバンジー飛んだり鎖を回したり気球に乗ったりと、将軍としてはちょっと前に出過ぎじゃないかとも思いますが、「だがそれがイイ」としか言えません。イイ。ワンを演じるアンディ・ラウには、どうせ軍師なら『墨攻』みたいにバリバリ戦ってもほしかったですが、いるだけで安心なのでよしとしましょう。


■壁を超えて

壁を築いた理由である饕餮(トウテツ)に関しては、最初こそデザインが惹かれないなあとも思いましたが、中国神話に出てくる妖怪としてわりと伝承に沿ったビジュアルのようです。目が体の横の方に付いていてそこが弱点というのは特徴的。そしてあの恐るべき物量です。一匹だけでも倒すのに苦労するのがあんな大軍で押し寄せてきたらビビって泣くしかないですね。60年に一度罪を忘れさせないために現れる、という戒め的な意味合いを持つのも神話っぽいです。人類の、と言うより皇帝の罪なのでは、とも思いますが、それを活かすように調子こいた官僚が捕えた饕餮に仲間を呼ばれてしまうというシーンがあるのは上手い。ただ、饕餮のバリエーションが少ないのもあって、そこまで魅力的ではないというのは難点。女王を守るデカくて硬いヤツみたいな他の種類がもう少しあればなあ。あと女王一匹倒せば全てオッケーというのもお約束すぎてちょっと拍子抜けではありますが、拡げすぎた風呂敷をたたむのには便利ではありますかね。

最後は壁が全く関係なくなるのがちょっと残念ではあります。でもその壁を守る者たちが命を賭して都を守ろうとし、それを「信頼」の理念だけで全うしようと散っていく姿が熱いのでいいでしょう。ラストでウィリアムがトバールを選ぶというのも申し分なし。壁は饕餮に突破されたけど、ウィリアムの滅私の思いがリン将軍との間の壁も崩すことができた、というわけです。色々と都合のよい展開も多くトータルで見ると決してホメられた出来ではないですが、それでも伝奇ものとしての見せ場は十分すぎるほどあるし、何となく許しちゃうタイプの作品です。

スポンサーサイト
トラックバックURL
http://cinemaisland.blog77.fc2.com/tb.php/1220-af0b2574
トラックバック
back-to-top