2017
04.15

孤独にさよなら、闇の騎士。『レゴバットマン ザ・ムービー』感想。

LEGO_Batman_Movie
The LEGO Batman Movie / 2017年 アメリカ / 監督:クリス・マッケイ

あらすじ
A.B.R.(いかなるときも録画しろ)



数多のヴィランからゴッサムシティを守ってきたヒーロー・バットマンは、ひょんなことから彼の元にやってきた少年ディックと行動を共にすることになる。そんななか彼のライバルを自認するジョーカーは、何とかしてバットマンに自分を認めさせようと躍起になり、街を大混乱に陥れる事態を巻き起こす……。ブロック玩具「レゴ」で描かれた世界でバットマンを主人公にした3Dアニメ。

全編レゴの世界でレゴのキャラが物語を繰り広げる『LEGO ムービー』、そこに登場したキャラの一人である(しかも相当目立ってた)バットマンを主演に据えた異色ヒーロームービー。一応言っておくと、単独で何本も実写映画化された、スーパーマンに並ぶDCコミックスの超有名ヒーロー、それがバットマンです。そんなバットマンという存在を本気で『LEGOムービー』させちゃったのが本作。

これがどうなったかと言えば、全編ハイテンションなギャグの連続、凄まじいテンポの良さにこれでもかと詰め込まれたネタの数々に爆笑必至。いやホントに開始2秒で笑ったのは初めてかも。何と言ってもこの人です、ノリノリでラップしながらヴィランをぶちのめす、皆の人気者バットマン!本当は孤独なのに「全然平気」と虚勢を張る、ちょっとめんどくさいやつバットマン!そんなバットマンの真実を軽いテイストの中に映し出す構成には驚かされます。もちろんレゴのポップさや柔軟さも存分に活かされ、笑いと涙の大活劇となっています。

バットマンの声は『LEGO ムービー』に引き続きウィル・アーネットなので地続き感があります。他のキャストも、宿敵ジョーカー役は『ハング・オーバー』シリーズ『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のザック・ガリフィアナキス、バッツの相棒ロビン役は『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のマイケル・セラ、バッドガール役は『シン・シティ』シリーズのロザリオ・ドーソン、執事アルフレッド役はレイフ・ファインズ(これがちょっとメタ)と豪華。『LEGOムービー』監督のフィル・ロードとクリストファー・ミラーが製作に回ると聞いたときは若干不安でしたが、同作でアニメーション共同監督だったクリス・マッケイは期待した以上に応えてくれましたよ。

ジョーカーを始め多くのヴィランも続々登場し、ゴッサムシティを恐怖(と笑い)のドン底へと叩き落とします。そしてバットマンとジョーカーとの関係性を『ダークナイト』に負けないレベルで映し、両親を失ったバッツにとっての「家族」というものまで描き出すのには驚き。さらにはあんなのやこんなのや、あ、あの人まで出るとは!その意欲と熱意とユーモアセンス、恐ろしいほどのスピード感、狂気さえ感じる自由奔放さに拍手喝采です。

↓以下、ネタバレ含む。








■レゴって楽しい

まさか冒頭のワーナーロゴからネタを仕込むとは!という調子で、その飛ばし方は絶品。バットケイブの合言葉が「くたばれアイアンマン」とかマーベルにケンカ売ってるし、メタルなラップを愛するあまりポップスに敵意むき出し、そして実はスーパーマンが嫌いというのも爆笑。マスクを取ったときに髪型が元に戻るなどの小ネタも多くて笑い転げます。それにしても、いやまさかトム・クルーズが遂にアメコミ映画に参戦とは、いや参戦じゃないけど、あれ『ザ・エージェント』ですかね?なんであれ観て笑ってんだよバットマン……。とにかくあまりに膨大な笑いどころはとてもコメントしきれません。

そんな笑いの部分、さらにアクションなどにまで「レゴならでは」という描写が多くあるのが楽しいです。バットモービルがカチャカチャ組み直されてバットウィングになるのなどは組み立てが自由自在というブロック玩具としての表現にも活かされているし、「ノーノーノー」って言いながらバタバタ転がるバットマンの可笑しさや、ラストに人々が繋がって橋のようになるなど、レゴフィグ(レゴの人形)の造形が上手くハマった動きなどもレゴっぽいです。


■ヒーローのアイデンティティ

そんなレゴっぽさもさることながら、『LEGOムービー』よりしっかりバットマンらしさを重視しているところにこだわりが見えます。劇中で『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』や、ノーラン版からバートン版、果ては1966年の劇場版(グレーの全身タイツが時代を感じます)まで、歴代バットマン映画を実際の映像まで使ってその歴史を振り返るというサービス(暴挙?)、さらには『スーサイド・スクワッド』にまで言及してるのが細かいです。

しかも元来のバットマンに対して疑問に思うべきところに焦点を当てているのがスゴい。一つは「バットマンがヴィランを倒してもちっとも犯罪が減らない」という点。そのためにバーバラは「警察と協力して対応すべき」と提案するわけですが、市民の称賛を一身に浴びたい……もとい今まで一人で街を守ってきたのを横からあーだこーだ言われて面白くないバットマン。金にものを言わせて……もとい資金と技術を注ぎ込んで自警活動を行うバットマンにとっては、ヒーローの面子に関わる問題です。

もう一つは、前述とも絡みますが「バットマンの孤独さ」です。様々なヴィランと戦うバットマン、しかしその戦いは常に一人。アルフレッドがいるとは言え、彼はあくまでサポート。本来ならジャスティス・リーグというヒーローチームの一員ですが、唯一普通の人間であるバットマンはやはり煙たがられているのか、ジャスティス・リーグ結成パーティーでハブられるという悲惨な事態に(涙)。孤独はバットマン自身が選んだ道ではあるし「別に気にしてないし?」という態度も崩しませんが、巨大な邸宅で一人ロブスターをレンチン待ちする姿はあまりに寂しい(間の取り方が最高すぎて笑いますが)。しかしそこにやってきたディック少年が「ロビン」としてバットマンと行動を共にすることで、バットマンの人生は少しずつ変わり始めます。


■昨日の敵は今日も敵

バットマンに登場するヴィランも、ペンギン、トゥー・フェイス、リドラー、キャット・ウーマン、ハーレイ・クイン、ベノム(アホの子)など文字通り大集合。本当にこんなのいるの?というヤツもいますが、覚えきれなかったため調べられない、というほど大量に出てきます。そんなヴィランの中心となるジョーカーですが、ジャック・ニコルソンの高圧さやヒース・レジャーの不気味さも持ちつつ、過去のジョーカーとは異なる「カワイイ」という属性を持っていることにやられます。バットマン最大のライバルだと自負していたのに「お前とは何の関係もない、何とも思ってない」と言われて涙ぐんじゃうジョーカー。これはヴィランのアイデンティティに関わる大問題だし、それ以上にバッツ大好きなジョーカーにしてみれば実に残酷な言葉。「好き」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」なのですよ。

そんなジョーカーがバットマンを振り向かせるために利用するファントムゾーン。てっきりゾッド将軍でも現れるのかと思ったら、あまりに斜め上のカオス状態で開いた口が塞がらないまま笑ってしまいます。『ハリー・ポッター』のヴォルデモート、『ロード・オブ・ザ・リング』のサウロン、『ジュラシック・パーク』のラプトル、『マトリックス』のエージェント・スミス、キングコングにグレムリンまで、アメコミどころか様々な映画の壁をブチ壊してやってくる悪役の数々。権利関係とか大丈夫なの?と心配になるほどの超絶クロスオーバーに、映画好きなら狂喜乱舞です。しかしこれは果たして収拾がつくのか、と不安になるんですよ。

ところがここで助けに来るのがジャスティス・リーグではなく、ゴッサムで活動するヴィランたち、というところが「バットマン」のタイトルに恥じない堂々たる展開で熱いわけです。そして共闘するなか、ヒーローの活躍に魅力的な悪役は不可欠だと、こんな借り物の別作品の悪役ではなく本物の悪役が必要だと、バットマンは気付くわけです。それは共依存であるかもしれませんが、ある意味バットマンは一人ではないということでもあります。「お前が憎い。I Hate You!」というバットマンの台詞こそがジョーカーとの絆なんですね。


■新たなファミリー

バットマン・チームについては、ロビンの存在が予想以上に際立つのが素晴らしいです。ポテンシャル高すぎる上にカワイイ。また、ゴードン(今回は超地味)の娘バーバラがバットガールとなる、というのも意表を突かれました。ちなみにバーバラを演じるロザリオ・ドーソンは、マーベルのドラマ『デアデビル』に出演してるんですがいいんでしょうか……?まあそれを言ったらアルフレッドの声を当てたレイフ・ファインズは、ヴォルデモート卿の中の人なわけですが。

バットマンことブルース・ウェインは、幼い頃に両親を殺され一人で生きてきました。しかしロビンという相棒に出会い、バットガールという頼もしい仲間も増え、アルフレッドまでスーツを着て戦うことになって、もはや孤独に酔いしれるふりをして寂しさに耐える必要はなくなったわけです。さらにロビンの父となることを自覚し、バーバラとも信頼を深め、アルフレッドが父代わりだったことを認識することで、両親を失った悲しみを乗り越えて「家族」という繋がりに向き合うことができたのです。

バットマンの暗部を抉り出し、それを克服させ、ヴィランとの関係を見つめ直し、ゴッサムシティを守るという使命もこれ以上ないほど描く脚本。爆笑のなかに多くの熱さを入れ込み、思い切り風呂敷を拡げながら見事にたたみ、なおかつ「バットマン」という作品の歴史、疑問とその解答までを描き出す演出。いや素晴らしかったです。最後に皆のバットサインを用意するバットマンは憑き物が落ちたかのようで、これが実写だったらシリーズが継続できるか心配になるほどの大団円。でも大丈夫です、レゴだから!

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