2017
04.11

ちびっ子ギャングと冴えたハナグマ。『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』感想。

ichigo_milk
Quatsch und die Nasenbarbande / 2014年 ドイツ / 監督:ファイト・ヘルマー

あらすじ
イチゴミルクうまー。



とある平凡な村、そこにやってきたモニター会社により提供される新商品に大人たちは夢中になり、老人たちを邪魔者扱いして老人ホームへ入れてしまう。子供たちは大好きなおじいちゃんおばあちゃんたちを救うべく、ある計画を実行することに……。ドイツ発のキッズ・アドベンチャー。

ドイツの真ん中にある村ボラースドルフが全てにおいて平均的だ、ということでやってきた消費者調査会社「銀色団」。新商品のモニター調査と称してとんでもない商品を村人たちに提供し、ここが世界の中心だと言われてその気になった大人たちは疑いもせずそれを使います。しかし普通が大事、平均的なのが一番、そんな画一的な社会に否を唱えるべく、6人の若者たちが立ち上がる!まあ若者っていうか3、4歳の幼児たちなんですけど。このわんぱくちびっ子たちが、大好きなジジババをホームから家に連れ戻すため町中巻き込んで大騒動を巻き起こします。

オーディションで選ばれたという6人の子どもたちは映画初出演(そりゃそうだろうな)ながら元気いっぱい。また子供たちと共に重要な役割を果たすのが、ペットのアカハナグマであるクアッチで、ペットというより子供たちの引率者でありブレインなんですが、なかなかの名演技。この天才的ハナグマと共に幼い反逆児たちが見せる大発明の数々や、歌って踊ってのミュージカル仕立ても愉快です。

絵本の世界のようなカラフルでポップな町を舞台に、シニカルで超キュートなお話が展開、ほのぼのします。先人の知恵を尊ぶという話でもあり、あくせくするより楽しく暮らそうという話でもあり、マーケティングに惑わされるなという話でもあります。

↓以下、ネタバレ含む。








園児に毎回縛られる先生とか、躍りながら登場する記録承認の人たちなど、どこか間の抜けた大人たちには笑ってしまいます。そして言うまでもなくちびっ子たちがカワイイです。ちょこちょこ走り回って「わー」って言うだけでカワイイ。しかしそこは「ハナグマ・ギャング団」を名乗る跳ねっ返りたち、先生を縛り付けて幼稚園を脱走したり、バックれて高いクレーンに登ったり、水に睡眠薬を混ぜて大人たちを眠らせたりと、目的のためなら手段を選ばぬ極悪ぶり。そして参謀である天才ハナグマ・クアッチの計略により、捕えられたベテラン団員(ジジババ)たちを解放し、さらに勢力を増した組織は主要な交通網を押さえ、ハイになるブツ(イチゴミルク)を精製し、やがてハナグマ・ギャング団は町を牛耳っていくのです。なんというノワール!

まあノワールではないですが、子供たちが銀色団とは違う手段で町を活性化させていくのは確か。平均的で普通であることが結果的にジジババがホームに入る原因と考え、たとえ突飛でも楽しく幸せに暮らしたほうが良いという、実に健康的な思考で行動するわけです。そのための手段が様々な発明をして世界記録づくりに挑むというもので、これがいちいち楽しい。電車は暴走し消防車は湖に沈み、と予想外におおごとになるのも愉快です。でもそれだけの大騒ぎで大人たちの目を覚まさせ、じいちゃんばあちゃんも孫たちに楽しく加担できて、とにかくハッピー。序盤に紹介される子供たちの個々の特性(というか好きなこと)をもう少し活かしてくれたら、チームものとしてさらに良かったですかね。

村の大人たちは純朴さゆえに滑稽ですが、そんな村人を食い物にする銀色団は、モニターと称してマズそうなシリアルや爆発するアイロンなどの欠陥品ばかり与えたり、スーパーの棚に商品を紛れ込ませたりとなかなかのクズっぷりで、まさに消費社会の権化という感じです。コミカルに描いてはいますが、これはいわば見せかけだけの物質的な豊かさの象徴。それに対抗する子供たちは、壊れたものから新しいものを作り出すという、消費するだけではない「再生」をやってのけ、そうして作った新しいものを家族と喜び合う、精神的な豊かさを見せてくれます。平均的だから世界の中心なのではなく、パパとママとジジババたちと一緒に楽しく暮らす、そここそが世界の中心なのだということですね。

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