2017
04.09

踊ろうみんなで。『チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』感想。

cheer_dan
2017年 日本 / 監督:河合勇人

あらすじ
絶対アメリカ行ってやるでのー!



高校に入学した友永ひかりは軽い気持ちでチアダンス部に入部するが、そこに待ち受けていたのは顧問の早乙女によるスパルタ指導だった。厳しい指導や規律に辟易するひかりだったが、やがて仲間たちと共に大きな目標に向かって進んでいく……。全米チアダンス選手権大会で優勝した福井県立福井商業高校の実話を映画化した青春ストーリー。

タイトルにもなってるんでネタバレも何もないんですが、ごく普通の女子高生たちがチアダンスで全米制覇するという実話を元にした物語です。しかし長いうえに身も蓋もないタイトルだな……。人物やエピソードがどこまで事実に基づいているのかはわかりませんが、メインのキャラを立てつつ目標に向かって進む青春もの、という形になっています。演出的には正直非常に不満も多く、特にコメディっぽさを出そうとしてスベってる前半は痛々しいし、ドラマの盛り上げ方や音楽の使い方もベタで粗いです。それでもチアダンスを通して信頼を深めていく彼女たちはとても眩しく、躍動感に溢れたチア演技も圧巻なので結果オーライ。

チアダンス部の中心となるひかり役は『海街diary』『ちはやふる』の広瀬すずで、イラッとするけどやはり別格、という感じがさすがだし、部長の彩乃役である『劇場版 零 ~ゼロ~』中条あやみもまじめな感じがよく出てます。『ソロモンの偽証』で印象深かった多惠子役の富田望生、あゆみ役の福原遥といったメンバーも良いですよ。みんな福井弁なのもローカル感あるし。でも一番良かったのは唯役の山崎紘菜ちゃんです。いや贔屓目じゃなくて。『神さまの言うとおり』の明るいキャラとは違い、やさぐれてるのかと思ったら単に寂しい子だったというのが可愛いし、笑顔の練習が可愛いし、要するに可愛くてですね、いや贔屓目じゃなくて。彼女たちの顧問・早乙女役の天海祐希は、まあ何と言うかいつも通りではありますが、凛とした佇まいが良いですね。

ノリきれない部分はあるものの、普遍的な青春スポ根ものとしては悪くないです。何よりチアダンス部の面々が魅力的に描けているのがポイント。実際に特訓して撮影に臨んだというチアの演技は、団体パフォーマンスとしてもステージでのきらめきとしても見応えあり。チアのダンスはポンダンス、ジャズ、ヒップホップ、ラインダンスの4種類の組合せだ、というのは初めて知りました。

↓以下、ネタバレ含む。








ターゲットがライトなドラマ層ということなんでしょうか、なんともすっとぼけた軽いノリが多くて、非常にイライラします。特に序盤、ポカ♪とかボヨン♪などのふざけた効果音、早乙女の「地獄に落ちろ」という台詞と雷が鳴るというセンス、あと"ズッコケる"というコントのような動作。うわあ……とか思いながら観てました。入部希望者への説明でも「体操部です」と言いながらレオタード姿を晒すとか、ダンス初見せのときにもなぜかみんなルーツの衣装でわざわざ踊るとか(あゆみの「ズッキュン♪」には吹いたけど)、辞めちゃう先輩たちがヤンキーみたいだとか、わかりやすさを求めたのかもしれませんが結果的に超不自然。バレリーナの子があからさまに憎まれ役なのはいいとして、憎まれ口を叩いたあと必ず軽く躍りながら去っていくのもどうかと思うし。

あとコメディ狙いの弊害かもしれませんが、天海祐希の演技がちょっと大げさに感じるんですよ。ナンバープレートにまでネタを仕込んだ「地獄先生」という呼び名も特に浸透してないし、地獄と言うかちょっと厳しい先生くらいのもんだし、天海祐希は後半は良かっただけに少々残念。でも桜が舞うのをバックに歩いてくる登場シーンはカッコいいし、終盤に明かされる、多惠子の家に来て遅くまでバイトさせることへの母親への抗議とか、「ひかりは笑顔だけじゃない」というコーチに激しく同意するとか、「松岡修造か」と言われてたけどホントに修造の本を参考にしてたとか、実はこう思っていた、こんなことをしていた、という姿には泣けます。

中学の頃から気になっていたサッカー部の孝介を応援したい、という軽い気持ちでチアダンス部に入ったひかり。ちょい適当な普通の子なわけですが、笑顔だけはいいと言われるその笑顔が確かに魅力的であるとか、足を痛めて全治2ヶ月の際に皆をステージに送り出したあとの言い様のない悲しみの表情、踊りたいと願う姿などはやはり広瀬すず、魅せてくれます。『ちはやふる』で広瀬すずと共演した真剣佑をキャスティングするというのは新鮮味に欠けますが(真剣佑が悪いわけではないけど)、一度はやる気をなくしながら再びサッカーをしたいという姿が、単なる憧れから共に目標に向かって邁進する同士となる、という感じなのは良いですね。

彩乃の何とか皆をまとめて高い意識を持たせたいと無理する姿などは応援したくなるし、バラバラになったチアダンス部をもう一度建て直そうとしたときに、打ち解けられずに苦しんでいた唯と三人でショーウインドウの前で踊るシーンなどは、台詞なしで見せててじんわりします。多惠子の劣悪な家庭環境を見せられるというキツいシーン(母役の安藤玉恵がさすが)など各人の背景を見せつつ、ついに彼女らが"JETS"として再集結して横並びで歩いてくるシーンが熱い。あとスベりの多いユーモアシーンも徐々にこなれてきて(と言うか慣れてきて)、少しずつ大きくなる優勝の垂れ幕とか、『サクラダリセット 前篇』にも出ていた健太郎によるストーカー男などはちょっと面白かったし、ひかりの父役でTKO木下が見せるテンポのよいやり取りは良かったです。「キャッチャー?」「セカンド」の被せ方は抜群。

本番のダンスシーンが最初の失敗と最後の優勝のときしかないというのは若干物足りなくもありますが、意外と他にも盛り沢山なのでバランス的にはちょうどいいですかね。せっかくの最後のダンスシーンでダンス中に過去の映像を挿入するのは野暮ったいし、アメリカの実況が最初小バカにして途中から手のひら返すという演出も『メジャーリーグ』や『ピッチ・パーフェクト』みたいで既視感ありまくりですが、それでも最初の笑い者にされたステージに比べての堂々たる演技にはやはりくるものがあります。最後は薄暗い通路じゃなくて、ひかりと早乙女がステージに戻ったところで優勝を告げる方が全米制覇!というカタルシスがあった気もしますが、「見たことのない風景を見てこい」と言った早乙女の思いとそれを見たひかりの思いが遂に結びつき、そこから部員たちの喜びへも繋がっていくシーンなので、この方が良いでしょうね。

トータルでは楽しめたし、最後はひかりが孝介と共に指導者となって母校に戻る、というのもね、その後全米制覇を5回も成し遂げる福井商業高校の「受け継がれる伝統」みたいな感じに繋がっていて良いんじゃないでしょうか。個人的には「なぜ山崎紘菜ちゃんがセンターじゃないんだ」とは思ってましたけど。いや完全に贔屓目ですけど。

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