2017
04.05

咆哮響く秘境、命懸けの楽園。『キングコング 髑髏島の巨神』感想。

Kong_Skull_Island
Kong: Skull Island / 2017年 アメリカ / 監督:ジョーダン・ボート=ロバーツ

あらすじ
ドン!ドン!ドドドドドン!(ドラミング)



1973年、アメリカの衛星写真に写った南太平洋上の未知の島、髑髏島を探索するため、特殊機関モナークの調査隊と護衛の軍人たちが嵐に閉ざされた島へと上陸する。しかしヘリで調査用ミサイルを撃ち込んでいると、突然巨大な生物が現れて暴れだした!1933年以来多くの映画が作られてきたキングコングを、新たな視点で描くアクション・アドベンチャー。

キングコング映画は2005年のピーター・ジャクソン版『キング・コング』以来ですかね。今作は特に続編というわけではなく、新たなコング映画という位置付けのようです。で、これがどうだったかと言えば「ウホー!超面白かったウホ!」という知能指数だだ下がりの言葉に集約されます。いやコングは別にウホとか言わないけど。あと最大限にホメてますよ?もうね、デカい!強い!野生の子!でも話せば分かり合える!いや話しはしないけど。まあとにかく、もはや神話の域にあるような古代生物だらけの島で、巨大にもほどがある類人猿・コングが暴れまくり、コング以外も暴れまくり、人間は虫ケラのように蹂躙されるという、完全に巨大生物メインの怪獣映画。これが楽しくないわけがない。それでいて人間たちもちっぽけながらしっかり絡んでいき、対等のドラマまで見せてくれます。

テンポがいいと言うか見せ場がポンポン連続してて、あまりやると有り難みがなくなりそうなところを全く違う見せ場で繋ぐので、どんどんノセられていきます。また、1973年という時代の持つ雰囲気が良いですね。地球観測衛星ランドサットが登場した頃、まだ地球上に未踏の領域が存在しててもおかしくない頃であり、探検とか秘境とか冒険という言葉に違和感がないです。そしてそんな雰囲気を裏切らないどころか予想を超えてきますからね。人間たちの方も登場人物が多いわりには意外とキャラも立っており、「こいつがそんな活躍を!」という動かし方がしっかり燃えるものになっているのも面白いです。

出演陣も豪華。調査隊を率いるコンラッド役は『マイティ・ソー ダーク・ワールド』のトム・ヒドルストン。こんなにワイルドなトムヒは初めてなのに、それでも匂いたつ色香を隠せないという、これぞトムヒ。コンラッドと行動を共にするカメラマンのウィーバーには『ルーム』のブリー・ラーソン、アカデミー女優が泥だらけになりながらも魅せてくれます。そしてパッカード大佐役は我らがサミュエル・L・ジャクソン。コングvsサミュエルのサル顔ガン睨み対決はちょっと笑っちゃうくらい激アツ。島に詳しいマーロウ役に『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でも印象深いジョン・C・ライリー、古代生物生存を唱える学者のランダ役に『10 クローバーフィールド・レーン』より少し痩せたかな?というジョン・グッドマンというキャスティングもたまりません。

巨大さを見せつける画作り、サービス過多とも言うべき見せ場の数々、興奮するショットの特盛り、タンクトップと、とにかく面白さ満点。過去作品へのオマージュを感じさせるシーンや、単にデカいゴリラが暴れるだけではない描写にも監督の愛情が感じられます。実際監督のジョーダン・ボート=ロバーツはゴジラや日本のアニメにも造詣が深いようで、この「俺たち寄り」に振り切った完成度にも納得です。超面白かったウホ!そしてエンドロール後の映像は見逃し厳禁だぞ!

↓以下、ネタバレ含む。








■髑髏島へようこそ

時は第二次世界大戦、乗ってる戦闘機が撃ち落とされ島に降り立った二人の軍人がいきなり殺し合うというスリリングな始まり。刀を素手で掴んでヒャー!となり、『プライベート・ライアン』のようにナイフを突き刺されそうになったりと戦争映画の様相ですが、これをぶった切るかのように突如出現するコング!もうこれだけで非現実的な冒険の始まりとしては申し分ないです。この後にガンガン音楽(ブラック・サバス!)を鳴らしながら髑髏島へミサイルをブチ込むヘリの姿なども幾多のベトナム戦争映画を彷彿とさせながら、やはりコングにより止められます。もちろん人間の力ではコングに敵わないという圧倒的戦力差を出してはいるわけですが、一方で人間同士の争いは空しく、兵器での攻撃は何もなし得ないということを言ってるようでもあり、これもまた戦争映画的と言えます。

今までのキングコングと違い、コングが人間の女性に恋をする、という展開がないのは特徴ですね。山頂でウィーバーがコングの顔に触れるというシーンはあるけど、それは『ジュラシック・パーク』でサム・ニールがブラキオサウルスに触れるような異種間の交流に近いだろうし、海に落ちたウィーバーをコングが助け出すのは人類の庇護者としての行動という方が合ってる気がします(まあウィーバーだけ特別扱いには見えますが)。人間との交流を最小限にしたことで余計にコングの野生や、ときには神々しさが際立つし、その分怪獣バトルに尺を振れているので良いですね。コンラッドとウィーバーの間もロマンスではなく信頼関係という感じだし、個々のドラマの方を重視したということでしょう。

テンポの良さはシーンの繋ぎによく表れてます。音楽でヒャーッと盛り上げてスッと別のシーンに切り替わる、しかも缶詰やらスコップやら何かの物のアップを映すことで緩急つけており、無理やりな感じもするものの本作のスピード感にはマッチしてます。あと細かい描写も色々と凝っていて良いですね。ヘリの群れが飛んだ後にトンボが飛んでいるのを映すのは人類の虫ケラ感が出てます。島の伝説を複数の岩の並びに描いて一視点からだけ見えるようにするのは、秘伝という感じで面白い。トリケラトプスらしき頭蓋骨のところでガトリングをセットして撃つ、なんてのも燃えますね。ジョン・グッドマンのランダ博士がスカルクローラーに食われたときに持っていたフラッシュが怪物の腹の中を移動していくという残酷さ、これがフラッシュの音と光で居場所を示すことによるスリルに繋がるというのも上手い。そのスカルクローラーにトドメを差すウィーバーの投げるライターは、オーロラの写真を撮るとき露光代わりにコンラッドから渡された彼の父の形見で、そういう意味では「俺のジョン・ウェイン」である父親が息子を救ったとも言えて何気に熱いです。このように随所に創意工夫が見られるのがとても好ましいです。


■荒ぶる神と死を呼ぶ悪魔

そして島の守り神、コングです。とにかく巨大(今までのキングコングで一番デカい?)で、ジャンプ力はスゴいし、ヘリや木はブン投げるし(しかもコントロールがイイ)、かと思えばヘリの下敷きになった水牛を助けたりもする。類人猿としての表情も出せるので、何となく意志疎通できそうなラインがギリギリあるのが魅力。ちょっと『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のシーザーを思い出します。両親を失って一人きり、という悲哀まで感じさせて、ここまで背中で語るゴリラというのも初めてじゃないでしょうか。

太古のモンスターたちもバラエティ豊か。角が立派なデカい水牛は最初はビビるもののちょっと可愛い。足が竹みたいなクモはブッ刺し方もエグいですが、真下から銃で撃ったら体液が降り注ぐというのがさらにイヤですねえ。何となく安全な生物かと思わせて、サンドラット責任者をさらって八つ裂きにする翼竜もエグいです。巨大タコは登場したと思ったらコングに踊り食いされるのが最高。踏み潰したときに墨が舞うのが細かいです。2本の腕に蛇のような胴体という造形が悪魔的でもあるスカルクローラーは、閉ざされた環境で独自の進化を遂げた感がありますね。消化できないホネは吐き出すというのがリアル。

そんなスカルクローラーのデカいバージョンとコングが激突するラストバトルは、見どころのオンパレード。コングが大木を持って刀を抜くように枝を払ったり、それでスカルクローラーをかっ飛ばしたり、船のアンカーの鎖で首を絞めたり、スクリューを鎖鎌みたいに飛ばしたり、と実に多彩。『パシフィック・リム』もかくやという巨大アクションの連続です。スクリューをメリケンサックにしてブン殴るなんてよく思い付いたよスゲーな。心の中でずっと「うおォォォッ!」って叫びながら観てましたよ。ちょっと声が漏れたかもしれません。


■導く者、触れる者

登場人物は微妙に過去や背景を匂わせながらもそこまで掘り下げず、深くはないけど薄っぺらくもない、というバランスでまとめてるんじゃないでしょうかね。代わりに人となりは行動で示したり、台詞の端々に垣間見せたりして、そこから観る者が想像できる余地を作っていると言えるでしょう。

コンラッドはガスマスク付けて日本刀で鳥を切りまくる!という鳥無双以外は何もやってないような気がしますが、水牛を撃たないよう制したり、パッカードの面子を立てつつ道を探したり、コングを救うという決断をしたりと、絶妙に一行の行動をコントロールしていて、さすがロキ様チャームが高い、もといさすが元SASという判断力と統率力。大スカルクローラーが機銃を撃つ飛行機ボートに向かってくるとき、直前でコンラッドがボートから離れて囮になるシーンもあったりします(コングが鎖で食い止めるので目立ちませんが)。でもランダに「男は何かを求めて戦場に向かう。まだ見つけられてないからここにいる」と言われて同行を承諾するのは、戦争で何かを見失っていたからかもしれません。

ウィーバーは女性で戦場カメラマンということで色々と辛酸も舐めたのだろうな、というのが序盤で船に乗り込むときのやり取りにちょっと感じられます。演じるブリー・ラーソンは顔の骨格が力強いので逞しくも見えますが、満面の笑顔が別人のように人懐こいのも魅力的ですね。タンクトップ姿は言うまでもなく良いです。大スカルクローラーに発煙筒を撃ち込む姿はカッコいいし、自分を助けて去っていくコングを見て流す一筋の涙はさすがの一言。


■戦う者、調べる者、知る者

パッカード大佐は、序盤で戦地引き上げの際に失った部下のドッグタグを虚ろに見やったり、最後の任務を命じられたときはニヤリとしたりと、戦地でしか生きられない男というものを感じさせます。コングを倒すことにこだわるのも仲間の敵討ちというだけでなく、敵は倒すべきものという戦争の呪縛から抜け出せないでいるのかもしれません。しかしまあコングと同等のアップで勝負するのはサミュエルにしかできませんね。最期にサミュエルお得意の「マザファッカ」を全部言わせてもらえないというのが不憫です(爆笑したけど)。彼の部下たちも観てるうちに徐々に個性が出てきて、チャップマンは口半開きのマヌケ面ながら息子への手紙には泣くし(演じるトビー・ケベルは『猿の惑星:新世紀(ライジング)』のコバ役という猿つながり)、バンダナの若造スリフコや、ムードメーカーのミルズ、意外にも生き残ったレルスなど、どいつもなかなか印象深いです。特に論理的なのかアホなのかわからないコール、手榴弾持って食われようとしたら完全な無駄死に、というのが超せつなくて泣けます。『プレデター』のインディアンを思い出しました。

学者チームではジョン・グッドマンのランダはもちろん存在感抜群ですが、彼を差し置いて意外にも活躍するメガネ君ことブルックスですね。「どの島も我々が最初に調べるべきだ」という説得や、船の機関銃で援護射撃などわりと頼もしかったり、かと思えばチャイナ娘のサンちゃんにちょっといいとこ見せようとしてヘボかったりと、意外とおいしい役どころ。彼の唱える地下空洞説はミサイルの映像を見たときにそれっぽい実証がされそうになりますが、結局本筋には絡まず。次作の伏線になるんですかね。ちなみにサンを演じるジン・ティエンは今回は残念ながら添え物でしたが、『スペシャルID 特殊身分』『ポリス・ストーリー レジェンド』などの女優さんですよ。『グレートウォール』にも出るようで楽しみ。

そしてコンラッドを食い、コングとも並ぶ影の主役、ジョン・C・ライリー演じるマーロウ。飄々としながらも二十年以上も髑髏島で生き抜いた男が「コングを助けに」と言うコンラッドに「俺抜きでか」と言うのが超カッコいい。何より彼については、最初は敵同士だった日本兵のグンペイ抜きには語れません(字幕はガンペイでしたが)。サバイブするうち国を越えて友となったのであろうグンペイとの絆は、共に作った船や、形見の日本刀、そして「不名誉より死」という台詞、と随所に見られます。この二人だけで余裕で薄い本が作れるほど(監督がこの二人の前日譚を作りたいと言ってて、わかってんなー)。そしてエンドロール、家に帰ったマーロウが妻と再会し息子と対面、ビールとホットドッグで野球を見るという夢に見た時間を過ごし、しかも贔屓のカブスは優勝(実際に1973年に地区優勝)。まさかこんな形でハッピーエンドを描き出すとは。泣かせます。


■世界は驚きに満ちている

結果的にコングに助けられ、遂に帰路へと着く一行。しかしコンラッドが言うように、秘境はもはや既知のものとなり、人跡未踏の髑髏島の謎も謎ではなくなっていくのでしょう。そう考えるとちょっと寂しささえ感じますが、そんな憂いを吹き飛ばすかのようにコングさんが「まだまだ俺のターン!」とばかりに吠えて締めてくれるのが嬉しいところです。

だがしかし!これで終わりではなかった!エンドロール後の映像で、ブルックスの属するモナークに連れてこられたコンラッドとウィーバーが「島はここだけではない」という台詞と共に見せられる、鳥や蝶や三股の何かが描かれた壁画の写真。それらの示すものに最後の一枚で気付いたとき、世界はとんでもない広がりを見せるのです。そうして鳴り響くのは、日本人には特に馴染み深く、今やハリウッドをも席巻するあの咆哮。最後の最後まで途切れない熱さに興奮し、震えながら泣きます。

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