2017
03.31

寝る子は育ち夢を見る。『ひるね姫 知らないワタシの物語』感想。

hirune_hime
2017年 日本 / 監督:神山健治

あらすじ
タブレットは大事。



東京オリンピック開幕を前にした2020年。父親と二人で暮らす女子高生のココネはしょっちゅう居眠りをし、決まって同じ夢をばかり見ていた。ある日父親が突然警察に逮捕されてしまったココネは、父が連行された理由を知るため幼なじみの大学生モリオと共に東京へと向かうが……。『攻殻機動隊S.A.C.』『009 RE:CYBORG』の神山健治監督によるオリジナル長編アニメ。

舞台は岡山県の倉敷。いつも居眠りをしてしまう女子高生ココネが寝てる間に見る夢は、人々がお城に集まり機械を作る不思議な世界。そこには魔法を使えるお姫様がいて、父王により塔に幽閉されているのです。一体この夢の意味するものは何か、そして不意に逮捕されてしまったバイク好きの父が抱える秘密とは?というお話。ファンタジーとスチームパンクを合わせたような世界観、夢と現実とのリンク、カッコいいメカ、隠された秘密、そしてひたすら前向きで天真爛漫な女子高生。そんな様々な要素が取り込まれ、不可思議な冒険の旅へと誘われます。

主人公のココネ役は高畑充希。声優は初挑戦だそうですが、岡山弁での演技もなかなかのもの。主題歌も彼女が歌ってるんですね。ココネの父モモタロー役には江口洋介、モリオ役は『オーバー・フェンス』の満島真之介、ほか古田新太や高橋英樹らが出演。江口洋介はちょっと不自然さがなくもないですが、どのキャラも役者の顔が浮かんでくるということはなかったのでキャスティングとしては悪くなかったんじゃないでしょうか。

やがてココネにも見えてくる父と母の秘密、そしてココネが出会うのは……と物語としては転がっていくんですが、しかしなあ……いや、描こうとしたことは何となくわかるんですが、それを語ろうとするとどうにも歯切れが悪くなります。現実と夢の融合という点では素晴らしい先行作品が色々とありますが、そこに楔を打ち込んだかと言えば、個人的にはそこまで至らなかった印象。メカはカッコいいんだけどなあ。

↓以下、ネタバレ含む。








単体では惹かれる要素を色々取り込んではいるものの、詰め込みすぎの感もあり、なんともまとまりがないと言うかボンヤリした印象。わざわざ少し先の東京オリンピックを背景にしたり、夢の世界で機械を作る人々が登場するのは、そこに絡む自動車産業の復興や先端技術の開発に打ち込む人々を描こうとしたんだろうし、ココネの母親が会社で実現できなかった夢を父親と共に田舎の片隅で果たそうとするのも、モノ作りへの情熱を表そうとしたのでしょう。夢と現実が徐々に混ざりあっていくのはそれをより強調する狙いなんだろうし。そしてココネは母の思いを知り、父と思いを分かち合い、祖父は父と和解するに至る、と家族愛も描いているわけですね。

わかるんですが、それがどうしても僕には響いてこないんですよ。なんでかなあと考えてみて気付いたのは、そこにロマンを感じられないからだ、ということです。自動運転を実現させる、それを実際にモノとして作り上げる、これを表現するのに使う「夢の世界」を絶妙に現実に近付けてしまったがためにファンタジー世界が中途半端になってしまい、かえってロマンを阻害してるように思えて仕方なかったのです。でも夢の話と絡めないと物語の根幹が成り立たない、という構造的な宿命を抱えてしまっているんですね。さらに「この会社にはビジョンもプランもない」という台詞、これが完全にビジネスの世界の話であることを決定付けてしまい、そのビジネス臭がさらにロマンを遠ざけます。最初から「プロジェクトX」なら別によかったんです。でも「思い描く夢」と「寝て見る夢」を強引に繋げたために、なんか居心地が悪くなってしまうのです。どうせならもっと家族愛に寄せちゃった方がよかった気も。

メカはカッコいいんですよ。トランスフォームするサイドカー付きバイクのハートや、巨大なオニを城の外へブッ飛ばす『パシフィック・リム』を思わせる巨大ロボ、エンジンヘッドなどにはアガりかけます。でも空を飛ぶときにはジェットを吹かすのに、同時に羽まで生えるというのはどうなんだ。別に『エヴァンゲリオン』を意識したわけではないのでしょう。母親が「心根一つで人は空も飛べる」という社訓を「私なら一文字変える」として娘に付けた名前が「心羽(ココネ)」であり、だから"羽"が生えたのだ、ということでしょうね。それを操るのが父であるというのもあるでしょう。でもこの時点でロマンを回復しようとしても手遅れ感があります。

謎の敵が「オニ」で、それを倒す父の名がモモタロー、父の友人には猿と雉もいます。犬がいないぞ、と思わせて、最初からジョンという犬のぬいぐるみも登場している。でもこの桃太郎設定も特に上手くいってるとも思えないんですよ。あと生活感や心情を出そうとしたのか余計に思われるカットも多く、そのためにテンポも悪い。エンドロールでは父と母の思い出が映されますが、最後に母が車で走り去るのは、あれで事故って亡くなったとかいうことなのか?よくわかりませんが、どちらにしろ去りゆく姿がとても寂しいと思っていたら「え、そこで終わるの!?」となります。好きな要素は色々入っているのに、そのどれにもノリきれず散漫なまま、どんよりした気持ちで終わる。夢と現実の線引きの曖昧さは良いと思うし、細かいところまで手を入れた映像もいい出来だったと思うんですが、それだけに残念です。

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