2017
03.29

10万年後の君へ。『ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』感想。

dora_nankyoku
2017年 日本 / 監督:高橋敦史

あらすじ
パオパオ~♪



夏の暑さから逃げて南太平洋の巨大な氷山にやってきたのび太たち。ドラえもんの道具で遊園地を作って遊んでいると、10万年前の氷の中から不思議なリングを見つける。リングの謎を解くため流氷の出どころである南極に向かった一行は、そこに氷に閉ざされた巨大な遺跡を発見する……。劇場版ドラえもん、第37作。

大長編ドラえもんのオリジナルです。今度のテーマは氷。ということでかき氷に始まり、流氷、氷の遊園地、氷に閉ざされた謎の宮殿と、氷と冒険へのこだわりは相当なもので、タイトルに偽りなしというのが好印象。やがて舞台は10万年前の南極へと移り、謎の人々やら古代の秘密などが絡んできて、なんか色々大変なことになります。どんなピンチもひみつ道具で解決だ!とはすんなりいかないのが劇場版らしいところ。

団結力で危機を乗り越えていくのび太たちの活躍は、スケールの大きな舞台と派手な演出とでまさに大冒険。またゲストキャラでは、活発女子のカーラやダジャレが寒いヒャッコイ博士を差し置いて、『のび太の宇宙開拓史』にも登場した二本足の象のような生物パオパオが大フィーチャーされてます。見た目をちょっとマンモスに寄せてきてるのが細かい。そしてやはりひみつ道具は大きな見所のひとつ。『のび太のひみつ道具博物館』などでも大量の道具が登場しましたが、今作はピーヒョロロープやコエカタマリンなど懐かしいひみつ道具が意外な使われ方をされるのが楽しいです。

氷の下に埋まる巨大な街、コロシアムのような舞台、超高層の塔からの眺めなど、ビジュアル的にはなかなか壮大。あとスノーボールアース説など科学的根拠に基づいた描写もあったり、氷山ができる過程を分かりやすく説明したりというのが藤子・F・不二雄の描くドラえもんっぽくてイイんですよ。展開的にちょっともったいないなーというところもありますが、悪くない完成度。平井堅の書き下ろし主題歌が染みます。ちなみにフィギュアスケーターの織田信成と浅田舞、サバンナの二人がゲスト声優だそうですが、特に気付かなかったのでまあいいです。

↓以下、ネタバレ含む。








ひみつ道具は使い方次第で広がるなあというのは感心するところ。氷ざいくごてで作ったイスを、やわらかガスで柔らかくするのとかひんやりして気持ちよさそう。ボウンっていう音がイイですね。ピーヒョロロープを犬ソリにするという発想は大したもんだし(他にもっとあるだろうという気もするけど)、ここほれワイヤーで巨大さと多層的な宮殿を表すのは原作での使われ方を上手くアップデートしています。他にもコエカタマリンを攻撃に使ったり、避難するのにかべがみハウスを使ったり、奪われたものをとりよせバッグで取り返そうとしたり、発信機代わりにトレーサーバッジを使ったりと多彩(今見るとこれってGPSだ)。さがしものステッキが自走式というのはアレンジしすぎ感もありますが。あとお馴染みほんやくコンニャクが凍ってて、それを鍋物で温めるなんてのは可笑しい。

氷や寒さといった演出はかなりこだわってる感じです。夏場の日本でどこでもドアの向こうから流れてくる南極の冷気は寒さと共に不穏さもあったりします。氷の下に古代の都市が眠ってる画などは『天空の城ラピュタ』で水に沈んだ遺跡を思い出しますね。あと巨大さというのも目を引きます。古代ヒョーガヒョーガ人が作ったという巨人ブリザーガはシシ神かというほどの迫力で、あれだけデカいとそれだけでアガります。一方で不満点を挙げるなら、偽ドラえもんの正体がちょっとわかりにくいですかね。実はユカタンと同一パオパオだったモフスケの色が変わっていた理由を「凍ってる間に変わったのね」で済ませるのもちょっと弱いです。あとはドラえもん置き去りシーンはもっと悲壮な演出でもよかったかなあとも思いつつも喪失感は十分だし、序盤の凍ったドラえもんの謎が時間移動によるものだという描写が少々くどいけどそこはわかりやすさ優先でしょうね。

メンバーの個々の見せ場もちゃんと用意されてて、ジャイアンの歌が大タコを追い払うのに役立ったり、スネ夫がひらりマントで単独で皆を守るというのはなかなか熱い。しずかちゃんはね、もう何やってもデキる子ですから何やってもオッケーです。その点ではのび太は出番は多いものの、単独での活躍の場は意外と少ない気もします。終盤ドラえもんが二人現れたときに本物を見抜く理由も「かわいそうだ」というフワッとしたもの。でもその守るべき対象を感じ取り「かわいそう」と思うことこそ、のび太の長所である「優しさ」だとも言えるでしょう。過去に置き去りにされたドラえもんを救うべく自分たちだけで何とかしようと解決策を探るのび太たちには、劇場版ならではのチームワークと逞しさが見られて良かったです。

ラストでカーラの星の姿を見たとき、そこには10万年という時間の重みがあります。ついさっきまで一緒にいたというのもあって演出的にはその重みはあまり深く描かれませんが、大人が観れば感慨深く感じるところです。随所に工夫と愛情が見られるし、思いの外スペクタクルだしで十分面白かったですよ。

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