2017
03.14

憶えている未知の思い。『クリミナル 2人の記憶を持つ男』感想。

Criminal
Criminal / 2015年 イギリス、アメリカ / 監督:アリエル・ブロメン

あらすじ
車をもらうぞ → マジだった件。



任務中に死亡したエージェントのビリーのみが知る機密事項を回収するため、CIAはビリーの記憶を他人の脳へ移植する手術をすることにする。その移植対象として選ばれた死刑囚ジェリコ・スチュアートは自分と全く異なる人格の記憶に混乱するが、否応なしにテロリストとの戦いに巻き込まれていく。ケビン・コスナー主演のスパイ・アクション。

米軍の核ミサイルさえ遠隔操作できるプログラムを開発した男「ダッチマン」、その所在を知るのは死んだCIAエージェントだけ。急遽彼の記憶を極悪死刑囚ジェリコに移植する、という話なんですが、これがすんげえ面白いです!まずジェリコという男の設定、善悪の判断がつかず邪魔する者はマフィアの勧誘であろうがブチのめすという暴れっぷり。そして逃走して国家危機そっちのけのジェリコが、ビリーという相反する男の記憶により次第に見せていく変化。これが実にスリリングな上に予想外にエモーショナル。さらにCIAと無政府主義者との対決にジェリコが関わっていく際のサスペンスやアクション。加えて家族愛や悪党の真実などさまざまな要素が絡み、引き付けられっぱなしです。

ジェリコ役のケビン・コスナーが、悪逆の限りを尽くすような暴れ方から今までなかった感情に目覚めていく様までとにかく素晴らしくて、こんな最高のケビン・コスナーは久し振り。役者陣も豪華で、ビリー役は『デッドプール』のライアン・レイノルズ、その妻ジル役に『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』のワンダーウーマンことガル・ガドットというアメコミ夫婦ですね。CIA上司役のゲイリー・オールドマン、ドクター役のトミー・リー・ジョーンズは、コスナーと共に『JFK』で共演してたんですよ、そういえば。なんとも感慨深いです。あと『スター・トレック イントゥ・ダークネス』のアリス・イブや、よく見たら『ニンジャ・アベンジャーズ』『ドクター・ストレンジ』のスコット・アドキンスまでいる!(残念ながら目立つアクションはなし)

記憶の移植という設定から、これもライアン・レイノルズの『セルフレス 覚醒した記憶』と丸被りしてそうに思えますが、話的には全然違うしあれよりもっと科学的に描いていて、その科学的な視点が物語にも関わるというのがとても良いんですよ。まさかここまで泣かされるとは思わなかった。極悪中年が暴れ、戸惑い、そして世界を救う。最高です。

↓以下、ネタバレ含む。








ジェリコは容赦ない暴力性と表面には出さずに醸し出す思い、その間で見せる揺れや雄叫びなどが本当に良くて、ケビン・コスナーさすがです。ガル・ガドットの悲しみをこらえる姿もとても印象深く、セクシーさは抑え気味ながらそれでいて長く伸びる素足が素晴らしい。この二人が手探りで心を開いていく様が自然で良いです。幼い娘がジェリコになつくというのは記憶云々とは関係ないところなので都合のいい展開ではありますが、娘への愛情の記憶を持つジェリコが激しく揺さぶられる、というのは納得できるんですよ。だからもう娘とジェリコが話すシーンは泣けてしょうがないです。また、橋を回転させての攻防や、無駄にクラッシュしまくるカーチェイスなど派手な見せ場によるスケール感もしっかりしています。クライマックスのミサイルの行方などは「いつの間に仕込んだ?」とは思うものの(見逃したかな?)、飛行機が飛び立つ絶望からのあの大逆転、そして「借りは何倍にもして返す」の体現と、カタルシスが半端じゃないです。あとゲイリー・オールドマンのやることなすこと全部裏目のポンコツぶりね!

記憶移植に関しては、機器を脳に挿入し、情報の電気信号を取得し、それを移植先の脳にマッピングする、という科学的手順を逃げずにある程度示しているのが偉いです。リアリティはなくとも説得力はあるので十分。首の後ろのデカい傷跡などにもそれは感じられます。ジェリコ自身は自分の記憶も残っているわけですが、意識と記憶は別物なので、知らない他人の記憶が入っても自分を失うわけではないんですね。そして悪党が無意識にフランス語を話したり、手際よく傷を縫って応急処置をしたり、さらには硫酸とニトロ酸で爆発させるという化学的攻撃まで見せたりと、知識の活用により対応に幅が出てくるのが実に面白い。徐々に映像として現れてくる記憶によりダッチマンの居場所を思い出していく、というサスペンスの見せ方も上手いです。

移植するのはあくまで記憶ですが、ドクターが「習慣が行動を決める」と言うように、ビリーが習慣的に取っていた正しい行動をジェリコも行うようになるんですね。またジェリコは幼い頃の虐待により前頭葉に障害を抱えており、そのために善悪の判断ができなくなっているというのが判明します。これは観る者へのジェリコに関するエクスキューズではありますが、同時にそこへビリーの記憶が移されることで感情にまで影響を与える、という展開にも繋がっていきます。記憶というのはその時の感情も込みだということであり、今まで知らなかった感情を知ることに戸惑いながらも、ジルや娘と接することでビリーの記憶にある愛情や思い出を共有し、それがまたジェリコの行動を変えていくわけです。海岸の景色に惹かれるのもその一環ですね。

がさつさが消え、落ち着きを得ていくジェリコ。しかしその感情をこの年になってから知る、というのがなんだかとても悲しいのです。しかも移植した記憶は二日もすれば消えてしまうというのが上手い設定で、心を通わせたはずの娘の名前さえも思い出せなくなる、というのが実にせつない。だから「ずっとビリーでいれればよかった」には泣きますよ。そんな記憶が薄れゆくなか、さらわれた親子を追ってジェリコが走り出すのは、確かに感じた思いが胸に残っているからなのでしょう。それはビリーのものではない、新たに得たジェリコ自身の記憶です。だからこそ「放っておけねえ!」の台詞が最高に熱いのです。ラストに台詞ではなく「鼻の頭をかくサイン」だけで全てを表すのもスマート。そしてトミー・リー・ジョーンズの「解放するのか」に対し「いや、雇う」でようやく良いところを見せるゲイリー・オールドマン。いやあ良かった、大好きです。

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