2017
02.28

パンク・イズ・ノット・デッド!『グリーンルーム』感想。

greenroom
Green Room / 2015年 アメリカ / 監督:ジェレミー・ソルニエ

あらすじ
無人島バンド、何にする?



売れないパンクバンドが出演の決まったライブハウスは実はネオナチの根城だった!しかもメンバーのパットはそこで殺人の現場を目撃してしまい、メンバー共々命を狙われることに。閉じ込められた彼らはどうなる!というサバイバル・スリラー。監督は『ブルー・リベンジ』のジェレミー・ソルニエ。

売れないパンクバンド「エイント・ライツ」がバンドワゴンで辿り着いたのは、スキンヘッドがたむろする怪しげなライブハウス。そこは実はネオナチの拠点でもあり、パットたちメンバーは思いがけない恐怖に巻き込まれていくことになります。「グリーンルーム」は楽屋という意味らしいですが、文字通り楽屋に閉じ込められて出口のないなか、警察も頼れず、統制のとれた危険な奴等を相手にパットたちはどうやって危機を脱するのか。ワンシチュエーションの脱出劇に、不意に襲いくるしっかりしたゴア描写、そして行動の意外性で、バイオレンスなスリラーとして実に面白いです。

主人公パット役は『スター・トレック BEYOND』のアントン・イェルチンで、同じくバンドマンを演じた『君が生きた証』よりかなりパンキッシュでいい存在感です。これが最後のスクリーン上映作とは本当に残念。アンバー役である『ニード・フォー・スピード』のイモージェン・プーツはワイルドな可愛さが良いですね。他にも『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』のアリア・ショウカットなど、バンドメンバーたちもなかなか個性的でイイ。驚くべきはパトリック・スチュワートで、まさか『X-MEN:フューチャー&パスト』のプロフェッサーXが「ファッキン」と言うゲス野郎のネオナチ・リーダーになろうとは……最高だな!スキンヘッド軍団の長としても申し分なしです(特に髪型が)。

どこか退廃的な美しさがあり、軽やかなのに重厚さも感じるテイストがあり、そして現実を土足で踏みにじる非現実があります。パンクバンドのアナーキーさは無政府状態に勝てるのか、という視点にも取れるのが面白い。ロードムービーの終点の話でもあるでしょうね。絶体絶命の危機に楽器は役に立たない!勇気と工夫とペイントで立ち向かえ!

↓以下、ネタバレ含む。








ベースのパットは人当たりのよいいじられ役、ボーカルのタイガーは機転が効き、ギターのサムは跳ねっ返りと思いきや意外と女の子、ドラムのリースは短期で腕っぷしが強い、と各メンバー徐々に個性を見せてきます。タイガーが地下室を見つけることで話が拡がったりとか、リースが見張りの男をどうしようもなくて絞め殺してしまう時の辛そうな表情とか、せっかく銃を手にしたサムがよろけて地面に撃っちゃったりとか印象に残ります。序盤のパットとサムが自転車二人乗りでガソリン盗みに行くシーンや、モヒカンの家でパットが顔にイタズラ書きされたりするのには、ベタベタしてないけどバンドとしていい雰囲気だなと思うんですよね。ライブシーンではいかにもネオナチっぽいスキンヘッドたちを前に、1曲目で「ナチ、ファックオフ!」と歌うのがパンク魂溢れてます(直前でパットはビビるけどありゃしょうがない)。無人島に一つバンドを連れて行くなら、という問いに最初は名だたるバンド名を挙げていたのに、死の恐怖の前では「サイモン&ガーファンクル」だの「プリンス」だの本音を言っちゃうのが最高。アンバーが小さく「マドンナ」と言うのも笑います。

それだけに彼らがあっさり死んでいくのはちょっと拍子抜けではあります。というか結構サクサク死にますね。テンポがいいのでグロいショットもわりとすぐ切り替わり、それが却ってインパクトが残るんですよ。頭に刺さった凶器で死体を引っ張ったり、パットが腕を引き戻したらナイフでズタズタにされてたり、いきなり男の腹をサクッと裂いたり、犬に喉を食いちぎられたり、頭を吹っ飛ばされたりと、死にっぷりのバリエーションも豊富。怖いのは殺され方より、建物のどこからどう襲ってくるかわからないというスリルと、何度トライしても結局楽屋に戻ってしまうという閉塞感です。加えて、彼らが売れないバンドであるため「自分たちが消えて誰か気付くか?」という追い詰められ感があり、しかもその自問自体が悲しい。楽屋から抜け出せないという構図が、バンドの行き詰まり感をも感じさせるんですね。

パトリック・スチュワートの演じるダーシーは完全に割り切った行動をしていくし、そこに躊躇がなく、かつ何やらテロのような計画があって、トラブルの中でもそれを遂行することを忘れないというなかなかの傑物。ラストで銃を向けられてるのにスタスタ歩いて行っちゃうのも、人にペースを取られるのが許せないからじゃないですかね。そんなダーシーの率いるのが、ネオナチという思想の元で統率された部隊だというのが、目的のためには手段を選ばない怖さを増幅させます。手下に腹を刺させ、それを通報したのだと言って警察に引き渡すところなどは、単に間違え電話だと言って追い返すのに比べて絶望感が断然高いんですよ。

こういった細かいところを描くことで話としても面白くなります。腕を固定したり撃たれた足を止血したりと活躍するダクトテープの頼もしさとか、咄嗟にライフルの弾を持ち去って敵を狼狽えさせたりとか、マイクのハウリングが犬に効くというのがライブハウスならでというのも良いです。この犬の飼い主が、犬に人を襲わせるのが本意じゃないというのが伝わってくるんですよね。殺られるけど。最後に残った一匹が死んだ飼い主に頭を乗せるのが悲しい。そして絶体絶命というときに、何ということはないように思えるペイントボールの話から、パットとアンバーが顔にペイントして「戦神(オーディン)だ!」と覚醒するところには、ちょっと笑いつつもなるほどと思います。つまり意外性によって虚を突き、それが目眩ましになって敵をおびき寄せるんですね。アンバーが隠れたソファーからそっと出てくるところには「おお!」となりますよ。加えて顔のペイントは自らを鼓舞するためでもあるのでしょう。もはやパンクバンド関係ないですが、展開として最高なので問題ないです。

アンバーは被害者の友人という位置付けなんでしょうが、サムが相手を怯ませるためにしか使えなかった消火器を視界を塞ぐために使ったり、その隙に死体(元友人)で欺いて残弾を使わせるなどナイスな活躍。しかも徐々に撃つことにも抵抗がなくなってきます。パットは犯罪を消そうとし、アンバーは犯罪を上書きしようとする、というスタンスの違いが面白い。実はアンバーが最もパンクだったわけです。いや、でもパットがそれを超えるパンク野郎だという可能性もあるな。自分でもわからなかったという無人島バンドを最後に「やっとわかった」と言うじゃないですか、あそこできっと凄いのを言ってくれたと思うんですよ。……くそう、なんて言ったんだよー!キレ味も最高です。

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