2017
02.20

愛ゆえの決断。『マリアンヌ』感想。

Allied
Allied / 2016年 アメリカ / 監督:ロバート・ゼメキス

あらすじ
男は屋上で一晩過ごす(マジか)。



1942年のカサブランカで、秘密諜報員のマックスはレジスタンスのマリアンヌと共にあるミッションを果たし、それを機に恋に落ちる。やがてロンドンで暮らし始める二人だったが、そこにある疑惑が持ち上がる……。ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール共演のサスペンスなラブストーリー。

第二次世界大戦下のさなかに共同で作戦に挑むスパイとして出会ったマックスとマリアンヌ。軸はこの二人のラブストーリーながら、これはサスペンスフルなスパイ映画として観たい、スパイだからこそ成り立つ物語です。幸せな家庭を築きながらも、疑念に苛まれるマックスが取る行動はひたすら利己的で、しかしそれはマリアンヌを信じたいからこその衝動。戦時下のクラシックな雰囲気や、人生の劇的なシーンが全て轟音に包まれる激しさなどを入れ込みながら、「愛ゆえに」に帰結するドラマが泣かせます。どこか奇妙な味わいながら、その独特さが面白い。

マックス役はブラッド・ピットですが、何だか最近のブラピよりも若返って見えます。ブラピを見て『セブン』を思い起こすのは久し振り。実に男前でセクシーです。マリアンヌ役はマリオン・コティヤール、こちらも美しいのはもちろん、随分と若々しく撮られており、裏がありそうでなさそうな絶妙さが良いです。あと「あれ、この横顔は」と思ったらやっぱり『イノセント・ガーデン』マシュー・グードでした。凄まじい顔になってて分かりにくいですが。

特異な環境下で結ばれた二人が辿る道はこの時代ならではの展開ではありますが、根底にある普遍的な想いが世界規模の情勢に翻弄されてどうなるか、というのは見所。近年のゼメキスは『フライト』『ザ・ウォーク』と、追い込まれた男が必死さゆえに徹底して利己的、というのが共通点かもしれません。

↓以下、ネタバレ含む。








冒頭のパラシュートで降りてくるときのカメラアングルが独特ですが、こういうあまり見かけないようなちょっと不思議な映像が面白いです。装甲車へ手榴弾を投げ込むときのワンカットとか、そこからこっちに来るか!という飛行機墜落シーンなども何だか面白い。また車の中で二人が結ばれる際に外が見えないほどの砂嵐が吹き荒れたり、娘のアナが生まれるのが激しい空襲の轟音のなかだったり、マリアンヌに見せるためのメモを書いた後のベッドシーンで外では豪雨が打ち付けたりと、「愛情」に深く関わるシーンがとにかく激しさのなかにある、というのも特徴的です。あとパーティでのドイツ大使襲撃や、そこに乗り込むための面通しでの「カードをカットしろ」「化学式を書け」などはスパイ的なスリルですね。ブラピのカードさばき凄いな。

マリアンヌのスパイ容疑は、元から本当に二重スパイならマックスが結婚を申し込むかどうかは不確定要素だし、子供まで生んでるのにありうるだろうか、とも思いますが、スパイというのは人生偽ってでも任務遂行するものなので観てる方も確信が持てません。パーティーシーンの不穏な人物や、マリアンヌが「感情では嘘をつかないからバレにくい」と言うのも枷になってきます。マックスの焦りと疑念は徐々に膨らみ、職権とコネを最大限利用し、他者の犠牲も厭わず、自ら敵地に飛んでまで真実を知ろうとします。マックスはもう自分たちのことしか見ておらず、上からの命令も相手の心情も気にしてません。若い飛行士に「誰のことを想っている」と聞いて「母親」と答えたら「やめとけ、父親にしろ。きっと君を誇りに思う」と言うのは、一見何だかイイこと言ってるように思えますが、妻への疑念が表出した結果の言葉かも、と考えるとかなり追い詰められていると見れます。

マックスにとってはマリアンヌが国家を裏切るスパイかどうかはどうでもよく、彼女の愛が本物かどうか、その一点だけが重要なんですね。スパイという騙すことが仕事の男が、信じられる相手として選んだ女性に騙される、それさえも愛さえ真なら別にいいというフシが見えます。ピアノが弾けないと分かった瞬間にマリアンヌだった女性は得体の知れない何者かになり、それでも機密情報を流していたのは脅されていたからという言葉をまた信じて、敵エージェントを屠っていくマックス。「愛してるわ、カサブランカからずっと」という言葉でさえそれが真実かどうか判断するすべはありません。にも関わらずマリアンヌを連れて逃げる理由は、やはり「愛ゆえに」しかないのです。それこそマックスの利己的な希望であると言えるかもしれません。

しかしそれが幻想でないことの証明として、マリアンヌもまた「愛ゆえに」の決断をします。殺させないために自分が犠牲になるということを、お互いに実行した結果の悲劇。ラストの娘への手紙にはそりゃ泣くだろうというあざとさを感じつつも、窓の向こうに拡がる牧場を歩くマックスと娘の姿に、家族と共に夢見たマリアンヌの真実を見ることができます。

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