2017
02.19

求める剣は斬鉄の先。『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』感想。

lupin_the_3rd_chikemuri_goemon
2017年 日本 / 監督:小池健

あらすじ
未熟なり。



ヤクザ組織・鉄竜会の賭博船が襲われた。組の用心棒として組長に雇われていた石川五ェ門は、犯人の男を追い詰めるも逃してしまう。犯人はかつて「バミューダの亡霊」と呼ばれた恐ろしい男だった。雪辱に燃える五ェ門は男の行方を追うが……。『ルパン三世』の登場人物の一人、石川五ェ門に焦点を当てたハードボイルド・アクション。

不二子の過去を描いたテレビシリーズ『LUPIN the Third ~峰不二子という女』、次元大介を主人公とした『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』ときて、今度は石川五ェ門にスポットを当てたのが本作。『次元大介の墓標』に続き『REDLINE』の小池健が監督、作画監督からキャラクターデザインまでを務めているので、テイストとしては地続きです。つまりコミカルさを抑えたハードボイルド。そして仲間となる前の若かりし頃のルパンたちの物語ですね。

今作はルパン史上最も残虐で、最も壮絶。そして最も五ェ門という男の真髄に迫った、と言えます。カッコいいという領域を越えた、研ぎ澄まされた鋭さ。そんな描写に何度も震えが走ります。「斬る」という攻撃方法の恐ろしさを最凶の表現で臆することなく描く、その心意気が凄い。五ェ門を本気で描く上で、そこは避けては通れなかったのでしょう。レイティングをPG-12に上げてまでやりきってくれます。いやこれR-18でもおかしくないぞ。お茶の間では流せない、本来のルパン三世です。

剣の道に生きる男の、ストイックさを超えた境地。こんな五ェ門を見たかった、という以上のものを見せつけられてしまい、凄まじい。それに対するルパンと次元の対応がまた良いです。あと不二子ちゃんのボディラインが殺人的にエロい。沢城みゆきの声もエロい。とっつぁんがシブい。アルプスのターミネーターがエグい。ジェイムス下地の音楽もイイ。とにかく1時間とは思えない濃密さ。最高です。

↓以下、ネタバレ含む。








五ェ門はセリフが少なく、基本的に動きで見せるキャラであるため、メインにすると結構難しいと思うんですが、それを踏まえての数々の演出には唸ります。序盤の賭博船で出番がないかと思われた矢先、背面飛びで銃弾を斬っての敵押さえ込み、という流れに剣技としては既に究極のものを持っていることが描かれます。賭博船のシーンでは組員たちの凶悪な強さを見せておくことが後の一対多の危機感にも繋がりますね。そして五ェ門の前に立ちはだかるホークという化け物。全てをねじ伏せる圧倒的パワーを配することで、五ェ門の乗り越えねばならない壁が現れるわけです。

かつて二千人殺したという元兵士、通称「バミューダの亡霊」ことホーク。こいつが凄まじくて、パワー、スピード、スタミナ、技のキレ、全てが桁違い。アルプスのおんじのような風貌ながらやってることはターミネーターだし、笑うと歯が金属とか「伐採する」というキメ文句とか、"絶対殺す度"が凄すぎます。全く弱点が見つからず、唯一睡魔には勝てずに寝ちゃうというのがむしろ絶対王者の貫禄。武器が手斧の二刀流というのもヤバいですね。斧は「斬る」に加え、力を乗せて「叩く」、厚さにより銃弾を「弾く」と戦闘力が高く、重量という弱点もホークのパワーなら問題なし。またホークの現在の背景は詳しく語られず、冒頭の雇い主や少女との関係も謎めいています。五ェ門に対してはこれだけのインパクトのある、そして弱点のない敵役が必要ということでもあるんでしょうね。

弱点がない強敵にどう立ち向かうか。五ェ門は五感を閉じてでも居合の精度を上げるという修行を行います。巨大サメ(デカすぎ)、巨大な炎柱(デカすぎ)、滝行での巨木(デカすぎ)と自分を追い込む修行は、もはや技を磨くというより悟りを開くための精神的な領域。それほどソリッドな感覚を必要とするほど力量差があるということでしょう。前半で五ェ門がホークの斧を受け止めたときに「あれ?」と感じる違和感、それは刀に鍔が付いているからなんですが、壊れた鍔を取り除くというのも、余計なものをそぎ落とすという行為に繋がると見れます。そうして覚醒した際の、にじらせた足から体へ駆ける信号という表現で、感覚的な鋭さが強さに結びついたことを分からせてくれます。しかし「何かを見つけたな」と言うルパンが「何を」と問う次元に「さあな」と答えるように、その実態が何なのかは体得した五ェ門にしか分からないのです。

ルパンと次元は敵のターゲットではあるものの、今回はほぼ傍観者です。しかし五ェ門が何かは分からないけど何かを追い求めていることを理解し、手を出さず口を挟まずただ見ている、というのが大事なんですね。見届けようとしている、と言った方が正しいかも。不二子に「男ってバカね」と言われながら「男なんて皆そうさ」とうそぶくルパン。男とは、女とは、という価値観を無理やりひっくり返そうとせず、それを突き通すのが逆にカッコいいです。だから五ェ門の世界とは真逆にエロさを見せつける不二子ちゃんは正しい。マッサージされての悶え声とかもうね!あとこのシリーズの銭形はひたすらデキる男なのが最高です。まだインターポールではなく公安の刑事ですが、上層部の不正にまで睨みを利かせ、納得いかない命令には従わないという気概まで見せてくれます。ホークがルパンたちのアジトに来たり五ェ門までそこを嗅ぎつけたりというのはちょっと都合がイイし、いくら五ェ門の名を呼んだからって組員が組長をあっさり見捨てるのはどうかとも思いますが、そこはまあ些末なことなのでいいでしょう。

覚醒した五ェ門は、何十人もの鉄竜会の手練れを相手に、雨のなか音も立てず声も上げず滑るように斬りまくってその手を吹っ飛ばし、組長息子に耳を銃で撃たれながらも微動だにしません。前編にはなかった残虐さを伴うビジュアルと共に「斬る」ことの鋭さが示され、剣士としての化け物じみた強さを得た五ェ門を見せつけられます。これらはホークとの決戦でさらに段階を上げ、手足が飛ぶではすまされません。縦に切り裂かれ骨まで持っていかれる。刃物が皮膚に入り捲れ上がって腕を切り裂く。凄惨にして壮絶。肉を切らせて骨まで切らせて結果を予測させるという、常人には理解不能の戦い。ホークもまた化け物であるがゆえに、化け物となった五ェ門との戦いの結末が見えたのでしょう。

これでもう仲間だ、みたいな甘い展開で終わらず、「借りはここで返す」と言ってルパンたちと別れる五ェ門。しかし最後まで見届けたルパンと次元に対し五ェ門が何かを感じ入ったことは確かであり、これがルパン・ファミリーの第一歩であることは間違いないでしょう。満身創痍(包帯巻いたくらいで済む状態じゃないぞ)ながら、触れれば切れる鋭さで「死ぬ気でこい」と言う五エ門に、「ナメるなよ」と一歩も引かない銭形。そんな最後の応酬に至るまで貫かれる"カッコよさ"。シビれます。

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